投資家の目線

投資家の目線944(生活費高騰に喘ぐ米国市民)

 金融サービス企業がニューヨーク市から「サンベルト」へ脱出している。「企業にとっては、不動産、人件費、税金がニューヨーク市内と比べて格段に安い。(中略)雇用される側にとっても、テキサス州やフロリダ州のように気候が温暖で生活費が安く、人口が密集しておらず、個人に州所得税がかからない地域はたしかに魅力的だ」(「ウォール街を捨てる金融企業、NYから流出する資産は1兆ドル」 2023/8/29 Forbes JAPAN)という。同記事で移転先のフロリダ、ノースカロライナ、テネシー、テキサスのうち、ノースカロライナ以外は共和党知事の州である。移民に寛容で生活コストの高い民主党主導の「聖域都市」から保守的な地域に移転した人びとは、以前と同様に移民に寛容な政策を求めるのだろうか?移民が増えて生活コストが上昇すればまた他の州に転居すれば良いわでは、元からいた住民にとっては「食い散らかし」をする厄介者である。米国南部国境では、過激派組織イスラム国とつながりのある密航業者の支援で難民申請がなされるケーズも見つかった(「イスラム国と関連の密入国業者、米南部国境からの入国を支援か」 2023/8/30 ダウ・ジョーンズ配信)。安全上の観点から、人々はこのような状況を放置するのだろうか?

 

追記:2023/9/4

「【焦点】さらばバスタブ 小さくなる米住宅」(2023/8/25 ダウ・ジョーンズ配信)は、米国で新築住宅が狭くなっていることを報じている。ダイニングルームやバスタブなどをなくすなどして対応しているが、家を小さくしても価格は大きく下がらないという。連棟式住宅のタウンハウスの価格も40万~80万ドルと初めて住宅を購入する層には高根の花だとか。今のワシントンの政治体制には、自国民にアメリカン・ドリームをかなえさせることは不可能なようだ。

 

 米国では人手不足が深刻なようだ。人手不足と高インフレ圧力で、経営難の病院が増えている。『「医療の質・支払い改革センター(CHQPR)」によると、国内の地方病院のうち約30%にあたる600以上が閉鎖の危機にひんしている』(「米病院の経営難が深刻化、人手不足とインフレで」 2023/9/1 ダウ・ジョーンズ配信)という。米国の中小企業経営者のうち24%が、「労働の質」が経営上の最大の問題と答え、8%は「人件費」が最大の懸念事項と答えている(「【市場の声】米中小企業、最大懸念は労働の質と人件費=NFIB」 2023/9/1 ダウ・ジョーンズ配信)。さらにここにきて、ガソリン価格が再び高騰している。「燃料高騰のあおりで社員が離職したり、設備更新の先送りや雇用凍結、値上げに踏み切ったりした企業もある」(「【焦点】インフレ疲れの米、ガソリン再高騰」 2023/8/29 ダウ・ジョーンズ配信)。

 

 その一方で、低所得者の貧困は止まらない。「米プロペルが30日発表した8月の調査報告書によれば、新型コロナウイルス禍で強化された補助的栄養支援プログラム(SNAP)を利用する家計のうち、食費が足りずに食事を抜いたとの回答は42%、食べる量を減らしたとの回答は55%と、前年から2倍余り増えた。(中略)7月以降、電気・ガスなどが止められたり、前月分の光熱費や家賃が支払えない低所得者層が増えている」(「米国の低所得者層、食費捻出にも苦労-生活の苦境浮き彫り」 2023/8/31 Bloomberg)という。これでは、とても景気が上向くとは思えない。

 

 第2次世界大戦時、米国ではうすいジャガイモのスープで飢えをしのいだ人々がいたという。「台湾有事」などというが、現在でも人手不足で医療の現場が疲弊し、食事にもこと欠く人々がいるG7諸国が中ロとまともに戦えるのだろうか?

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