投資家の目線

投資家の目線956(次期アルゼンチン大統領による中央銀行の廃止)

 アルゼンチンの大統領選挙で、ハビエル・ミレイ氏が当選した。ミレイ氏は通貨のUSダラー化と中央銀行の廃止を主張していた。通貨のUSダラー化は、1991年から2002年まで実施された1アルゼンチンペソ=1USダラーで兌換するカレンシーボード制が貿易赤字と財政赤字の拡大のせいで崩壊したことから、ダウ・ジョーンズ配信記事でも実現が危ぶまれている(【コラム】アルゼンチンのドル化は的外れ、【コラム】アルゼンチンが地で行く「財政支配」 ともに2023/11/23)。1980年代に累積債務問題が発生した時、「イスラエル・パキスタン・アルゼンチンなどでは、国内取引に自分の国の通貨のほかに米ドルが用いられる。このため、政府は税収やマネーサプライの管理に苦慮している。」「国際金融からみた累積債務問題 債務危機の構造」(熊田浩著 マネジメント社 p100)(投資家の目線722(債務問題について考える) 参照)。通貨のUSダラー化はアルゼンチンの国家運営においてリスクだと思うが…。

 

 中央銀行の廃止は、米連邦下院議員だったロン・ポール氏も主張していた。著書「ロン・ポールの連邦準備銀行を廃止せよ」(佐藤研一朗訳、副島隆彦監訳)では、紙幣の無制限の発行を止め、政府による「お金の独占」を終わらせよと主張していた(p32)。また、レーガン大統領は金本位制を廃止して生き残った大国は一つもないと発言していたという(p111)。

 

 またポール氏は同書で、戦争がインフレなしに行われたことがないと主張する。戦費を即座に増税で支払わなければならないなら、他国の内政にちょっかいを出して、最終的には隣国との軍事対立を煽ることもなくなるとみている。予算がつかなければ、アメリカが勝てもしない、不必要な戦争に関与する可能性はずっと減るだろうとも…(p263)。ひどいインフレの中、ウクライナに関与し、多額の出費を迫られた米国政府にとっては耳の痛い言葉だ。

 

 なお、ミレイ氏は英国のスナク首相に外交手段によるマルビナス(フォークランド)諸島の主権を獲得する提案を断られている(”Why Argentina’s New Leader Pushed Claim to Falkland Islands: Q&A” 2023/11/23 Bloomberg)。このことも通貨のUSダラー化政策実現に関係してくるのではないだろうか?

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