投資家の目線

投資家の目線961(崩壊に向かう西側諸国)

 米西海岸のロサンゼルスのオフィスビルの価格が暴落している。「5年前の半値で売却も-LAオフィスビル、リモートワーク増加が圧迫」(2023/12/27 Bloomberg)、「米LAで3番目の高さ誇るオフィスタワー売却-14年を45%下回る価格」(2023/12/23(Bloomberg)と、数年前の約半分の価格で取引されている。サンフランシスコ市でも、「スピアストリート60やカリフォルニアストリート350などのオフィスビルが、コロナ前の数分の一の価格で売却された」(「【焦点】米オフィス市場の苦境、2024年は一層深刻に 」 2023/12/21 ダウ・ジョーンズ配信)という。オフィスビルの住宅への転換を進め街の賑わいを回復させようという取り組みは行われている。「ただ市場では、家賃下落が原因で住宅ローンがデフォルト(債務不履行)に陥る家主が着実に増えている。データ会社トレップによると、商業用不動産ローン担保証券の裏付けローンや銀行融資の延滞率は、現在6%を超えている。コロナ前は1%を下回っていた」(同記事)と、金融面にも悪影響が出てきている。来年はさらに苦境が予想されており、バブル崩壊後の日本のようだ。日本のマスメディアは中華人民共和国の不動産不況を盛んに報ずるが、治安が悪化している分だけ米国の聖域都市の方がよりひどいのではないだろうか?米国では、預金残高が減少する一方、消費者のクレジットカードの利用は増えている(「米消費者のクレジットカード利用増加、貯蓄は減少」 2023/12/25 ダウ・ジョーンズ配信)。個人の債務返済の支払いが滞り、金融不況に陥る可能性も考えられる。

 

 北大西洋条約機構はフィンランドとスウェーデン(予定)の加盟で数だけは増える。しかし、ポーランド政府のドイツへの戦時賠償請求や、かつてソビエト連邦と戦った戦士としてカナダ議会がウクライナ系の元ナチス親衛隊員を招待したとして内外から批判を受ける事件があり(『カナダ議会、ゼレンスキー氏演説時に元ナチス親衛隊員を招待 首相「知らなかった」』 2023/9/25 Sputnik 日本)、中身はガタガタだ。元隊員の所属した第14SS武装擲弾兵師団は、「ウクライナ民族主義者で構成されており、ソ連軍と戦っただけでなく、ユダヤ人、ポーランド人、ベラルーシ人、スロバキア人に対する残虐行為に加担したことで知られている」(前述のSputnikの記事)。ナチスドイツがウクライナの独立を認めずバンデラやステツコを逮捕したからウクライナ民族主義者はナチスではないという珍説は、国際的には通用しない。

 

 日本政府は迎撃ミサイルシステムPAC3(極超音速ミサイルに対してどれだけ役に立つかわからないが)を米国に供与する。欧州など第三国への移転を認めることも検討されており(「日本供与パトリオット、ウクライナに間接支援 米の要請」 2023/12/20 日本経済新聞電子版)、日本政府はロシアとの対決姿勢を強めている。リトアニアに5000人規模の旅団を駐留させるドイツは、急いで軍を改良するために2022年に1,000億ドル以上を費やすことを発表した。しかし、これらの投資はまだ実現しておらず、ドイツ地上軍は悲惨な状況にあるという。ドイツ地上軍司令官のマイス中将は書簡で、軍の約60%しか十分な装備が整っていない。さらに2027年までのリトアニア駐屯計画を進めるにつれて、状況は悪化するばかりと述べている(”German army ‘too thin’ on resources to make Lithuania brigade viable, leader says” By JOHN VANDIVER STARS AND STRIPES   December 27, 2023)。堕落したNATOの劣勢は明らかなのに、日本政府はなぜNATOにすり寄ろうとするのだろう?

 

 一方、バラート(インド)はロシアの主張する「多極化」を支持し(Sputnik 日本 on X: "ロシアは多極秩序の強力な支持者=インド外務省 🇮🇳#インド のジャイシャンカル外相がスプートニクからの質問に答えた中で、インドは #ロシア の多極的世界秩序への支持を高く評価していると述べた。 #スプートニクのビデオ… https://t.co/v5vndvH3T3" / X (twitter.com) 2023/12/27)、ロシアと兵器の共同生産などを話し合い(「ロシア・インド外相が会談、兵器共同生産など議論」 2023/12/27 日本経済新聞電子版)、来年にはモディ首相がロシアを訪問する意向だ(『インド外相「モディ首相が2024年にロシア訪問意向」 プーチン氏と会談』 2023/12/28 日本経済新聞電子版)。ロシアのシルアノフ財務相は、2023年の非石油・ガス部門からの収入が予想を上回ったため、戦争における軍の要求を満たしながらも、政府はインフラ、投資、社会サービスへの支出を削減しなかったと彼は述べている(”Russia has enough money to pay for its war in Ukraine, finance minister says” BLOOMBERG December 27, 2023)。西側諸国の思惑とは異なり、現状、ウクライナでの戦闘はロシア経済の足かせになってはいない。CIAでコリア任務センター副局長補を務めたイ・ヨンソク氏は、「米国の北朝鮮政策目標を非核化から軍備統制と縮小に転換するべきだ」と主張した(『「米国、北朝鮮の核保有を認めて統制すべき」…米専門家が提言』 2023/12/29 中央日報)。米国の姿勢にも変化が見え始めた。西側以外の世界は、西側諸国崩壊後を見据えて動き出している。

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