米国では富裕層も1ドルショップに通っていることが報じられた。「米国人約5万人を対象にモーニング・コンサルトが行っている日次調査によると、年収10万ドル以上の世帯のうち1ドルショップで買い物すると答えた割合は、昨年6月の39%から45%に上昇している」 2023/6/28 ダウ・ジョーンズ配信)という。この光景は数年前から見られたもので、やっと報じられたかという感じだ。米国では家賃負担など生活コストが上昇している。「米国でこうした家賃負担の重い世帯は21年に過去最高の2160万世帯となり、新型コロナウイルス禍前の19年に比べ120万世帯増えた。こうした世帯の割合は、以前は縮小していたが、コロナ禍の間に拡大に転じた。21年は49%と、グレートリセッション(大不況)のピークだった11年の51%に近づいている」(【「MW】米国で家賃の過重負担増える=ハーバード大報告書」 2023/6/26 ダウ・ジョーンズ配信)。ロサンゼルスでホームレス人口が急増しているが(「米LAのホームレス人口、10%増加 コロナ前の増加ペースに」 2023/6/30 ダウ・ジョーンズ配信)、家賃の上昇で支払えなくなる人が増えれば、ホームレスも増えるだろう。ホームレス用シェルター建設のための税負担が増えれば、ロサンゼルスから引っ越す富裕層や中間層も増えそうだ。
自動車の保険料も上昇中だ。「労働省のデータによると、自動車保険料は5月までの12カ月間で17%上昇し、全般的なインフレ率4%の4倍を超えている」(「米自動車保険料、急ピッチで上昇」 2023/6/26 ダウ・ジョーンズ配信)。ガソリン価格といい、自動車に乗るコストが上がったら、車社会の米国で人々は生活できるのだろうか?米国で即席麺の売れ行きが好調で、東洋水産の2023年3月期の当期純利益は過去最高となった。「米国やメキシコではインフレで食品が急速に値上がりし、節約志向の消費者に即席麺が選ばれた」(「東洋水産、23年3月期純利益最高 米国で即席麺が好調」 2023/5/12 日本経済新聞電子版)という。米国で即席麵は貧困層の食べ物とされる。中間層が零落し、貧困層の食べ物に手を出すほど家計が苦しくなったものと思われる。
米国の中規模銀行は金利に敏感でブローカー預金が預金不足を穴埋めしている状況で、逃げ足の早いブローカー預金の動向次第で流動性危機の再発も懸念されている(『「ホットマネー」、預金流出穴埋めか-米地銀の経営揺さぶる恐れ』 2023/6/30 Bloomberg)。
欧州でも生活苦が報じている。英国では、「英イングランド銀行(中央銀行)は29日、5月の家計による銀行と住宅金融組合の口座からの預金引き出し額が46億ポンド(足元のレートで約8400億円)と、1997年の統計開始以来で最高だったことを明らかにした。高インフレを背景に、消費者の生活が圧迫されている様子を示した」(「英銀行業界、家計の預金引き出し額が過去最高 5月」 2023/6/29 ダウ・ジョーンズ配信)。ドイツは消費者信頼感指数の悪化で、「ドイツ経済の見通しが冬の景気後退(リセッション)後もなお厳しい中、家計支出を巡り不透明感が強まっていることが示された」(「ドイツGfK消費者信頼感指数、7月はマイナス25.4に悪化」 2023/6/28 ダウ・ジョーンズ配信)。チェコの日刊紙「Parlamentní listy」は、ウクライナから欧州への農産物輸出で生産コストが上昇する中で価格低迷が続き、損失を被ることに対する東欧農家の懸念を報じている(”Ukrajinské obilí: Katastrofa se blíží. A ne jedna” 2023/6/27)。
米国政府は中・ロ側に行かないよう各国に働きかけているという。そんな中、ボリビアは中国とロシアの政府系企業と炭酸リチウム工場設置の協定を結んだ(「中・ロ企業、ボリビアにリチウム工場設置で合意 2075億円出資」 2023/6/30 (AFP=時事))。米国政府の説得など世界各国から相手にされなくなっている。欧米では人民の生活が厳しくなっているのに、政府は自分たちのメンツや勢力圏内の主導権争いに現を抜かしている。これでは欧米諸国の政府は外国からだけでなく自国民からも信用も失い、反政府活動が頻発してもまったく不思議なことではない。
追記:最終更新2023/7/5
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