仏領ニューカレドニアで暴動が発生し、マクロン大統領が独立派と話し合うために同島を訪問した(「フランスのマクロン大統領、ニューカレドニア独立派らと会談」 2024/5/23 日本経済新聞電子版)。背景にはニューカレドニアに長期滞在するフランス人に地方参政権を拡大する憲法改革に対する独立派の反発がある。仏内相はアゼルバイジャンの干渉があると発言しているが(『「ニューカレドニアに干渉」 フランスがアゼルバイジャン批判』 2024/5/17 日本経済新聞電子版)、最近フランスが西アフリカから叩き出されたことを考えれば、外国の干渉などなくても、このような事件は起きるだろう。
「ベトナム戦争 誤算と誤解の戦場」(松岡完著 中公新書 p58)には、ホー・チ・ミンが第一次世界大戦の時、『ベトナム人に同情的だった仏共産党員ですら、開戦となるや帝国主義戦争を熱狂的に支えたことにホーは痛く失望した。(中略)ことにフランスは戦後復興のためこれまで以上に植民地から利益を吸い上げ、独立運動を弾圧しようとした。第一次世界大戦の経験は、共産党員であろうとなかろうと、しょせん彼らはフランス人なのだという事実をホーに教えた。彼は第二次世界大戦直後の一九四六年にも同じ経験を味わっている。ベトナム民主共和国との独立をめぐる交渉の行き詰まりに苛立ち、いまこそ「大砲にものをいわせる」べきだと主張し、実際に軍事行動を是認したのは、仏共産党書記長(当時副首相)モーリス・トレーズだった』という。これが、第一次インドシナ戦争(抗仏救国戦争)勃発の原因だろう。
「安倍晋三回顧録」(安倍晋三著 橋本五郎(聞き手)、尾山宏(聞き手・構成)、北村滋(監修) 中央公論新社 p322)では、「フランスの売りは何かと言えば、文化と核保有という点に加えて、圧倒的な大国意識を持っていることでしょう。大国意識だけで大きな顔をしている国は、世界中にいっぱいあるのです。世界第3位の経済力を誇る日本が、ちまっとしている必要はない。」と言っている。しかし、その大国意識がベトナムやアフリカをフランスから離反させ、今、ニューカレドニアが離反に向かう原因になっているのではないのか?実力もないのに大国意識だけをひけらかせば、足元をすくわれることになるだろう。