投資家の目線

投資家の目線607(「日米合同委員会」の研究)

 『「日米合同委員会」の研究』(吉田敏浩著 創元社)は、在日米軍司令部副司令官を代表とする米軍の高級軍人および在日米大使館公使と、外務省北米局長を代表とする日本の高級官僚で構成される日米合同委員会を扱った本である。日米合同委員会の議事録等は原則として公開されておらず、外務省、法務省、最高裁の部外秘資料や米国政府の解禁秘密文書、在日米軍の内部文書など様々な資料をから探ったようだ。同書の中で著者は日米合同委員会を、「協議といってもアメリカ側の米軍人が強硬に主張したことは、日本側の官僚によって、ほぼすべて受け入れられているのが実態だからです」と評している。

 辺野古沖でコンクリート・ブロックの投下が始まったが、カート・キャンベル米国防次官補代理(当時)が、1998年3月の日米非公式協議で、日本政府の決定次第で普天間飛行場の県外移設が可能と日本側に伝えていた(『普天間移設非公式協議 98年3月当時、米「県外可能」を伝達』琉球新報 2009/11/15)。そのため、米国側としては沖縄にこだわることはないはずだ。しかも、鳩山首相の県外移設を断念させた、外務省官僚が示した「極秘文書」を外務省は存在を確認できないとし、そこに書かれていた「恒常的に訓練を行なうための拠点との間の距離に関する基準」に関する米軍のマニュアルも存在しないという(「最低でも県外」を魔ウせた外務省の「極秘文書」の存在に「虚偽」疑惑!官僚が総理をワナにはめた!? 岩上安身が鳩山由紀夫・元総理にインタビュー!真相に迫る! 2016.2.16)。外務官僚がこんな「怪文書」を持ち出すなんて、例えば、「日米合同委員会で決まったことだから」というような理由でもあるのだろうか?

 コンドリーザ・ライス元国務長官の「ライス回顧録」(福井昌子、波多野理彩子、宮崎真紀、三谷武司訳、集英社)に「太平洋軍司令官は昔から植民地総督のような存在で、ハワイの軍司令部を拠点とする四つ星の将軍が発する命令は最もましなときでも外交政策と軍事政策の境界線を曖昧にしてしまい、最悪の場合は両方の政策をぶち壊してしまう傾向があった」と記述されており、米軍と国務省は必ずしもうまくいっているわけではなさそうだ。1972年4月に駐日米大使館のスナイダー一等書記官がインガソル大使に日米合同委員会の米国側軍司令官と日本政府側の関係は韓国や台湾を除いて世界中どこにも見られない極めて異常なものと指摘しており、米国側でも問題視している人もいる。在日米軍偏重の対米外交はもうやめた方がいいのではないか?在日米軍の権益を守っても米国人民に日本をアピールできるわけでもなく、効率的な税金の使い方とも思えない。
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