投資家の目線

投資家の目線993(解決に向かう中印国境問題)

 日本ではほとんど報道されていないが、7月25日、バーラト(印度)のジャイシャンカル外相と中華人民共和国(中国)の王毅外相のビエンチャンでの会談で、国境問題をできる限り早期に解決することで合意した(「中印、国境問題の早期解決で合意 外相会談」 2024/7/25 ロイター)。これでバーラトは中国への牽制として、枠組みだけで中身のないクアッドを利用する意義は著しく減少した。にもかかわらず日本経済新聞は報道機関としての分を忘れたかのように、日本とバーラトの2プラス2や(「日印2プラス2、安保協力の段階引き上げ 共同訓練拡充」 2024/8/20 日本経済新聞電子版)、米国とバーラトの防衛産業協力の方を報じるなど(「米国とインド、防衛産業の連携強化 国防相会談」 2024/8/24 日本経済新聞電子版)、あたかもバーラトが西側諸国と連携しているようなプロパガンダに熱心だ。モディ首相のウクライナ訪問を「親露」色払しょくのためのように書くが(『インド首相がウクライナ訪問 「親ロ」批判払拭狙う』 2024/8/23 日本経済新聞電子版)、軍事技術は西側を上回り経済も好調のロシアより、西側との関係重視をバーラトが選択する理由はない。防衛協力と言っても、ロシアと敵対する西側諸国から友好国のバーラトに資金が流れたり、西側諸国の軍事技術がいかほどのものか評価されたりするだけではないのか?その技術情報が他国との取引材料になる可能性も考えられる。

 

 最近、東南アジア近辺ではキナ臭い政争が起こっている。BRICSに加盟申請しているタイでは実務経験のほとんどない首相に交代し(『「保守派の好ましい結果に」 タイ新首相にペートンタン氏 タマサート大学キッティ教授』 2024/8/16 日本経済新聞電子版)、ミャンマーでは反政府勢力支配地域が拡大している(「ミャンマー、民族勢力が支配拡大 地域の安定に影 中国系やロヒンギャ迫害」 2024/8/12 日本経済新聞電子版)。バーラトとミャンマーにはさまれたバングラデシュでは、学生デモで追放されたハシナ首相が、この追放劇には同国領サン・マルタン島の支配を狙う米国が関与したと発言している(「バングラ政権崩壊、ホワイトハウスが米の関与巡る報道否定」 2024/8/12 ロイター)。一方、シンガポールのウォン首相は国を前進させるためには「大幅なリセットが必要」などと(『シンガポール首相、国民へ初の演説「リセットが必要」』 2024/8/19 日本経済新聞電子版)、「世界経済フォーラム」のようなことを訴えている。

 

 BRICS参加を見送り、NATOのパートナーとなることを表明していたアルゼンチンは6月、中国との間で数十億ドル規模の通貨スワップを更新した(「アルゼンチン大統領、対中関係で現実的なアプローチ」 2024/08/19 ダウ・ジョーンズ配信)。西側諸国に歩み寄ろうとするアルゼンチンも一筋縄ではいかないようだ。

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