投資家の目線

投資家の目線994(大阪万博)

 「官を生きる 鈴木俊一回顧録」(鈴木俊一著 都市出版 p250~298、p377~378)には、鈴木氏が事務総長を務めた大阪万国博覧会に関する記述がある。もともと万博は東京での開催が予定されていた。中止になったが日本政府と東京市は1940年にオリンピックと万博を両方やろうとしていた。千葉県選出の川島正次郎は、1964年のオリンピックで東京の西半分を開発したため、遅れていた東部地域の開発を行うべく東京と千葉の間での万博開催を企図していた。中止になった世界都市博はその流れで東京東部の臨海副都心での開催が予定されていたそうだし、2020年の東京オリンピック(1年延期)では江東区の施設なども使用された。

 

 1964年のオリンピックの頃、左藤義詮大阪府知事が大阪経済の地盤沈下を取り戻すために大阪での万博開催を池田勇人首相に要望を出し、池田首相から東龍太郎東京都知事(大阪出身)に相談があったという。今回も東京オリンピックの後、2025年に大阪万博が開催されることとなった。大阪での開催は東京一極集中に対する配慮というのもあるのだろう。なお、当時の蜷川虎三京都府知事は万博にもともとは熱心ではなかったが、現在の京都府は万博に協力的なように見える。また万博の催し物にイスラエルが参加するのであれば、アラブ諸国が脱退すると言ってきたため、イスラエルがそれに参加を取り止めるということもあった。現在の中東情勢が万博に影響を与える可能性がある。

 

 今回の万博は、大阪湾に面する大阪市此花区夢洲で開かれる。8月の宮崎沖の地震以来、南海トラフ地震への関心が高まっているが、平成25年10月算出の大阪府の想定によれば、夏12時の最悪のケース(早期退避率低)では、津波(合計)により7,939人の死者が発生すると推計されている。平成22年の此花区の昼間人口は78,925人(令和2年国勢調査〈大阪市の昼間人口〉)だったので、津波関連の死者は昼間人口の約1割に上るということになる。万博ともなれば、他所から土地に不案内な人が大勢訪れる。避難誘導はそれらも加味して計画されなければならない。

 

 「官を生きる」(p288~289)によれば、会期末には入場制限がかかるほど混雑し、帰れなくなって会場のお祭り広場で一泊した人が最大で4,000人もいたという。また、近畿6府県は児童生徒を万博に無料招待する事業を行う(『万博子ども招待「本音は、家族で行くようにしてほしい」…団体バス確保難、地下鉄に集中し混乱の恐れ』 2024/5/21 読売新聞オンライン)。東日本大震災では、児童の避難が遅れて犠牲になる例があった。少数の引率者だけでは子供たちの避難誘導は難しいのではないか?入場を予約制にするなど入場人数が一定数以下に収まるようにして、避難誘導に支障が出ないように配慮した方がよいと思われる。

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