アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

「超現実主義宣言」

2015-11-14 07:30:36 | 画材、技法、芸術論、美術書全般、美術番組
超現実主義宣言 アンドレ・ブルトン著 生田耕作訳
                   中公文庫 定価629円+税

 昨日読み終わったんだけど、これって「宣言」なの? そこで「宣言」を国語辞典を引いてみる。すると「意見、方針、考えを広く世間に表明すること」とある。だからやっぱり違うよ、これ。「超現実主義宣言」ではなく、一言で言えば「超現実主義運動顛末記」。つまり、超現実主義およびその創始者アンドレ・ブルトンの周辺で起こった出来事について、アンドレ・ブルトン自身が書き残した本。だから自叙伝でもあり、回想録でもある。

 この本は3つの章から成り立っている。確かに最初の「超現実主義宣言(1924年)」は、持って回った言い方ではあるものの「宣言」と言えなくもないが、次の「超現実主義第二宣言(1930年)」は超現実主義運動中に自分の身に何が起こったのか書いており、最後の「超現実主義第三宣言か否かのための序論(1942)年」は超現実主義運動を振り返っている。

 この本全てが持って回った言い方で書かれており、はっきり言って読みにくい。訳文が悪いのではなく、原文がそうなのだと思う。これもアンドレ・ブルトン自身がわざとやったことに違いなく、あんまり理路整然と書くと、超現実主義的じゃないということかもしれない。

 まさに超現実主義運動の渦中にいる人が書いてあるだけに、ある意味生々しい。具体的な人名がどんどんでてきて、何が起きたのかが書いてある。西洋美術史における第一級の資料である。

 これを日本語でしかも安価な文庫で読めるありがたみは別として、正直あんまりお薦めできないなあ。私は一気に流して読んだ。斜め読みですね。そうでもしないと途中で投げ出してしまう。

 美術評論家や研究者、あるいは超現実主義絵画ファンならいざ知らず、超現実主義絵画に特に熱心でない、私のような西洋絵画好きは別に読まんでもいいという感じです。もちろん読まないよりは読んだ方がいい、教養として。でもそれだけ。そんな本です。


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