空山不見人
但聞人語響
返景入深林
復照青苔上
鹿柴(ろくさい)
空山(くうざん)人を見ず
但(ただ)人語の響きを聞くのみ
返景(へんけい)深林に入り
復(ま)た青苔(せいたい)の上を照らす
木の葉が落ちつくしてひっそりと静まりかえった
山の中に人かげは見あたらない。
しかしどこからか、わずかに人の声が聞こえてくる。
夕日の照り返しが奥深い林の中へとさしこんで、
みどりの苔を照らし出している。
王維(701-761)
盛唐の大詩人。
南画の祖として山水画をよくした、
書家としても知られ、音楽にもすぐれていた。
熱心な仏教信者で「詩仏」と称せられた。
陶淵明の流れを受け継いで「自然詩」を完成した。
蘇軾は王維の詩と画とを評して
「詩中に画有り、画中に詩有り」と述べている。
古典解釈シリーズ 『漢詩』 旺文社 による