社長様、かく語り記

東北のとある社長の名言・行動から、人としてあるべき姿を探していきたいと思います。

代替フロン

2012-12-14 16:29:51 | 日記
代替フロン(HCFC-141b-MS)などなど


基板業界では、半田付けの際に生じるフラックス(ヤニ)の洗浄に、代替フロンの液体を使っておりました。

これが猛烈なる「温室効果ガス」と化することは、使っている者としては すでにして当たり前田クラッカー状態の一般常識となっていた時期の話となります。

当初「特定フロン」に比較してオゾン層破壊係数が低い為に「代替フロン」とされてきた物質なのですが、1987年にはモントリオール議定書において、オゾン層破壊物質として認定されております。

2001年には日本国内においても、

「フロン回収破壊法」

が執行され、使用後の回収が義務付けられております。


社長様が行動を起こしましたのは、取引先から環境対応調査が入りました2007年に入ってのことであります。

客先が指定した「使用規制対象品目」に「HCFCー代替フロン」も含まれておりまして、下請け企業においても何の物質をどの用途に使用しているか調査報告が命ぜられた訳です。

ようやく重い腰を上げた社長様、わたくしに新しい洗浄液を探すよう命ぜられました。

わたくしは早速インターネットでの調査及び問屋さんに代替品の調査を依頼して探し出してもらい、価格も含めて4点の候補の中から実際にサンプル洗浄を行なって2点に絞り込み、実際の作業へと導入致しました。
(フラックス洗浄能力と揮発性の観点からすると、代替フロンよりもかなり見劣りしたので作業方法の見直しが必要となりました。)

さて、困りましたのは使用済みの代替フロンが入っている缶の処理です。
(これ、どうなるんだろう…と、まぁ勝手に個人的に困っただけなんですけどね…)

1缶当たり20㎏以上の代替フロンの液体が入っている缶が、まだ工場内には10缶以上残っていたのです。


さてさて今回呆れ果てますのは、この後の処置についてです。

代替フロン液、揮発性が高く机にこぼしても直ぐに気化して消えていきます。

その気化した物質が空中に存在すると、温室効果及びオゾン層破壊効果をもたらす事となる訳です。


社長様が、いかがなる方法を用いましたかと申しますと…



真夏の暑い日に、工場とは別棟にある資材置き場へ これからの作業に使用する部材を探しに行きました。

そこで目にしたものは、入り口に積み重ねておいた使用済みの代替フロン液の缶の蓋が全て外されていた光景でございました…

別棟にはエアコンなどもなく、暑い日が数日続いていましたので、連日 室温は軽く40℃を越えています…
代替フロン液はドンドンと気化して大気へと解放されておりました…

本当に胸が焼け付くような思いが致しました…


社長様の

「どうせ俺が生きている間には、天気なんざ大して変わらねぇだろっ!」

と云う声が聞こえてくるようでした。


さて、その後 数日経ちましても一向に蓋が閉められる様子はありません。
(ぶちまければすぐに気化しますが、缶の口が小さいせいか、なかなか蒸発しないモノでした)


お優しい社長様は、全ての代替フロンを大気に解放して差し上げようとの思い遣りのお心から、このまま全てが気化してしまうのをお待ちなのでしょう。


そこで意を決し、無知なる社長様に教えて差し上げる事と致しました。

「社長様、取扱上の注意点」
※大概の場合、社長様のような才能溢るるお方は、他人から言われたことをそのまま実行することは、プライドが許しません。

例え自分が間違っていると気付いたとしてもです。

下手をすると言われた逆のことをやり
「これでいいんだ!」
と、なりかねませんので注意が必要ですね~。
(まったくお子ちゃまね~

こういう類いのプライドだけが高く、思考よりも口先が達者なるお方を導いて差し上げるには、

「自分で気付いたぜぇっ!
オレっちすんげぇ~!

と、思わせて差し上げるのが肝要となります。

その為には堅固なレールを敷設して差し上げる手間が生じますので、重々ご承知おき下さいませ。
(満州鉄道の経営に近い苦労がございます。)


そこで…

社内の従業員は、これまで使用してきた洗浄液が「代替フロン」である事を認識していないハズでありました。

何故ならば社長様は、そのような指導は全く致しませんのですから。
愚民には余計なことは知らしむべからず、でございます。


わたくしの場合は、たまたま「HCFC」による健康被害が無いのか?をインターネットで調べていて、環境に対する影響に気付いたので社内的には誰も知らないこととなっています。
(初めて知った時は、これまでの自分の行動を振り返り…冷や汗を流したものでした。)

工場内にある洗浄液は代替フロン液しかありませんでしたので、それまでの何年かは手当たり次第に基板の汚れ目がけて代替フロン液をオイラーでプシューっとかけて、汚れ共々エアガンでブワッ~っと飛ばしてしまう…と云う作業を繰り返してきました…

結果的に温室効果ガスを大気に向かって気化させてきたのですから…

知らないと言うことは…
罪作りですねぇ…


わたくしは この東北の地でも体感出来るようになってきた地球温暖化を利用し、当時の異常気象と絡めて代替フロンガスの恐ろしさを朝礼当番の時間を使い、従業員の皆様に説明させて頂きました。

勿論、社長様とは視線など合わせはしません。

数日後、別棟の代替フロンの缶を見ましたら、ようやく蓋が閉められていたのです。


しかぁ~し…

この出来事は5年ほど前の事になりますが、今日現在も社長様の工場内には、

「代替フロン」

の缶が存在し、今もまだ大気に向けて廃棄される危険性が無くなった訳ではないのです…

行政が所持する者には罰則を与えますよ~なんて話が社長様の耳に入れば…

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