アニメになった、墓場鬼太郎

今、東京では木曜の深夜１２時４５分（事実上、金曜の早朝０時４５分からということになる）から毎週３０分「墓場鬼太郎」というアニメが放送されている。

これが楽しみで。

「ゲゲゲの鬼太郎」はこれまで何度もアニメ化されてきているが、「墓場鬼太郎」はアニメ化されたことがなかったから、水木ファンとしての嬉しさはひとしおだ。

メインの登場人物「鬼太郎」「目玉オヤジ」「ねずみ男」は「墓場鬼太郎」でも健在なのだが、その性格は相当違う。
というか、鬼太郎の性格が「ゲゲゲ」とはまったく違う。
正反対の性格といってもいい。

「ゲゲゲ」での鬼太郎は、今じゃすっかり「悪い妖怪をやっつけて、人間の味方をする、超能力を持った明るい正義の少年」だが、「墓場」の鬼太郎はどう考えても「正義」ではない。
むしろ「不良」の鬼太郎だ。
人間に対しては、必ずしも好意的ではない。かといって敵対するわけでもない。必要とあれば、利用する。
他人のために動くのではなく、ただ自分の都合のために動く。

好きな女の子のために動いたりもするのだが、それはその子に対して「好き」という感情があるので、自分の都合で動いてることでもある。
自分の面倒をみてくれてる男性がピンチに陥っても、「じゃ！」といってあっさり見捨てて立ち去ってゆく。
超能力・・不思議な力を持ってはいるのだが、それを悪者退治のための武器として使ってはいない。


初期の「墓場鬼太郎」を読んできてるファンとしては、アニメ化される「ゲゲゲ」に対して「最近あまりにも良い子になりすぎてきてるなあ」なんて感想を持ってたので、「墓場」での鬼太郎の言動には、なにやら痛快感を覚える。

それにしても、「墓場鬼太郎」をよくアニメ化してくれたもんだ。
アニメ化される日が来るとはねえ・・・なんて思うと、感慨深いものがある。
時代が「墓場鬼太郎」を許容できるようになってきてるのだろうか。

キャストは初代「ゲゲゲ」の声優さんが勢揃い。
これだけでも、オールドファンとして嬉しい。
野沢さんの「墓場鬼太郎」は、明らかに通常の鬼太郎とは演じ方を変えているのがわかる。
ちょっとすねていて、利己主義で、それでいてどこか純情さを併せ持った、得体が知れないながらも、どこか愛すべき不良の鬼太郎をうまく演じている。


主題歌は電気グルーブの「モノノケダンス」という、テクノっぽい曲なのだが、これがまた悪くない。
鬼太郎というと「ゲゲゲのうた」のイメージは強いし、安易に「新たな主題歌」を持ってくるのは大変だろう。
その中で、この「モノノケダンス」は健闘している思う。

全体的に、背景、キャラ、演じ方、ストーリー、どれも原作「墓場鬼太郎」を尊重している感じがして、よくできている。
「ゲゲゲ」はすっかり一般的だが「墓場」の鬼太郎はなにやらマニアっぽさが強い。
マニアってのは、とかくうるさい（笑）ものだ。
へたすれば「原作と違う！」などと言いだしかねない。マニアは、こだわり度が強いからね。
その意味では、このアニメ版「墓場鬼太郎」は丁寧に作られているし、よく頑張っている。


鬼太郎は、ゲゲゲ・シリーズとして何度もアニメ化されるにつれて、原点・鬼太郎の持ってた「毒」は、どんどん抜かれていった。
ゴールデンタイムで放送される以上、原作の「毒」はどんどん薄められ、最大公約数的な作品になっていくのは仕方ない。
それがゴールデンで放送される「原作つき作品」の宿命といってもいい。

だが、このアニメ版「墓場鬼太郎」は、貸本マンガ時代の鬼太郎の持ってた毒が、ある程度は残されている・・ってのが、ウレシイ。
厳密に言えば、原作通りの毒ではない。
でも、今のテレビを考えると、許容範囲だ。

漫画雑誌（貸本時代を含む）に初めて登場してきた時の鬼太郎は、けっこう醜悪な顔をしていた。
このアニメ版「墓場」でも、初回などはけっこう醜悪な顔つきはあった（まあ、でも、原作にくらべれば多少はソフトだったが）。でも、何回も見ていくうちに、醜悪さは影を潜めつつあり、それなりに可愛い顔にはなってきている。


今後、この「墓場の鬼太郎」はどんな作り方をされていくのだろう。どうなっていくのだろう。いや、ストーリーという意味ではなく、鬼太郎のキャラクターがどうなっていくのか・・ということだ。
性格も変わってゆくのだろうか。

とりあえず、私にとっては、今もっとも楽しみな番組であることは間違いない。

このアニメ版「墓場鬼太郎」をまだ御覧になってない方で、鬼太郎が好きな方は、ぜひ１度見てもらいたい気がする。
いつもと違う鬼太郎が、そこにいます。
墓場鬼太郎は、もしかしたら、あなたの知らない鬼太郎かも・・・？？？