以前、我が家や私によくなついていた野良猫のことを、このブログで綴ってた頃があった。
それは我が家の前の敷地がお気に入りだった、野良の黒猫に関するネタだった。
私はその野良猫を、クロと呼んでいた。
クロは私の家の近所の人たちからもクロと呼ばれていた。
その猫は、もうかなり前‥‥数年前から我が家の玄関前の敷地内に出没していた。我が家の玄関前の敷地がお気に入りだったらしく、毎日のように我が家の前でくつろいでいた。
私は元々猫は好きだったので、猫を追い払うようなことはしなかった。
私とこの猫はよく目が合った。ただ、猫とあまり長く見つめあうと、それは猫にとって敵対を意味するらしいので、すぐに私は目をそらすようにしたけど。
クロは警戒心が強かったので、少しでも私か近づこうとすると、すぐに離れていった。なので私は当初はあえて近づこうとはしなかった。そんな時期は長く続いた。
やがては互いに顔馴染みになった。すると私と目が合うと、その猫はたまに挨拶がてら(?)一声泣くようになった。小さい声でニャ~と。
こうなるとこの猫が私は可愛くなってきた。
いつも我が家の前にいるのが当たり前になってくると、いないと寂しい気分になってきた。
とはいえ気まぐれな猫ではあるので、しばらく姿を見せない時期もあるようになった。
どこに行ったんだろうと思って近所を歩いてると、我が家から少し離れた地域にテリトリーを変えてた時期があったらしく、別の家の前に居着いて、その家からエサを貰ってる光景を見つけてたりした。
すると、私としては、浮気をされてるような気にさせられた。
でも、また少し月日が経過すると、ひょっこり我が家の前に戻ってきたりした。
こんなサイクルはしばらく続いた。
姿を消しても、また月日が経過すれば、また我が家の前に戻ってくるだろうと私は思うようになった。
で、戻ってくれば、「おかえり」などと思うようになった。
やがて私は1歩2歩、クロに近づく素振りをするようになった。すると、以前なら1歩でも近づく素振りをするとすぐにその場から素早く遠のいていたのに、逃げようとはしなくなった。
だんだんクロは私を警戒しなくなってくれてるのを実感した。
しまいにはクロを撫でられるほど至近距離に近づいても逃げなくなった。
やがて私の足元にいて、真下を見る私の目と、足元にいるクロの目が合い、そのまま動かないでいて、見つめあうようになった。
野良猫とはなるべく目を合わさないようにするのか本来ならベターらしい。
猫が相手と目を合わす時は敵対する時だという情報は私は知ってたから。
でも私とクロはそんな関係ではなかったし、見つめられるとカワイイし、ついつい見つめあうのが、こそばゆいような愛しいような気分。
そんな関係になっていったある時、家にあった煮干しを2匹あげてみた。
するとクロはフーッと怒ったような声を出した。
「せっかく餌をあげたのに怒るって、どういうこと?」と思った私だったが、あとになってその理由がわかった。
クロは「たったこれだけ?足りないニャ!」と思ったようだった。
それに気づいた私は、以後は煮干しはそれなりの量を与えるようになった。
するともう怒ることはなく、一心不乱に煮干しを食べるように。
そんなある日。私は思い切って、煮干しを食べてるクロの頭を軽く指1本で触れてみた。だがその瞬間、クロは食べるのをやめ、条件反射のように、素早く私から距離をとって離れた。
「だいぶ打ち解けたと思ったのに、まだ私を警戒するのか…?」そう思うと悲しかった。 このクロは相当人間に対する警戒心が強かったのだろう。
生粋の野良猫として、ここまで生きてきたのだろう。人間には慣れてないのだろう。人間に飼われたことはなかったのだろう。
そう思うと無性に寂しかった。だが、もっと慣れてきたら、また少し触ってみよう、それまで我慢。そう思うことにした。
そして、そんな状態が更にしばらく続いたある日。私はまた恐る恐るクロの頭を軽く触ってみた。すると…今度は逃げなかった!
そのまま私は頭を撫で撫でし続けた。
すると、腰を持ち上げてきた。どうやら腰を触ってほしかったようだった。
で、腰をなでなですると、暫く気持ちよさそうに止まっていた。
そんな日々が続くと、私がクロの背中や腰をなでなですると、クロは地面に突っ伏し、平たい体勢で、私の撫でるがままになった。
おまかせするから、いっぱい撫でてほしいニャ…とでも言われてる気分(笑)。
平たい体勢で地面にザブトンのようにベターッと寝ると、思ったよりクロは大きく見えた。
普段の体勢のときは割と小柄に見えたクロだが、全身の力をぬいて、「伸びた」体勢で突っ伏して寝ると、伸びた体の面積(?)は意外に平たい(笑)。
こんな様子を見ると、クロは私にはもう警戒心は持ってないのはよく伝わってきて、こうなるとますますカワイイ。
やがてクロは我が家の玄関前にしょっちゅういるようになった。まるで私が玄関から出てくるのを、いつも待ってるような感じ。
室内から玄関のドアを見ると、くもり硝子の向こうにクロのシルエットがしょっちゅう見えた。
まるで玄関のドアの向こうで待ち伏せされてる気分だった。
↑ご覧の通り、クロが玄関のドアの前にいるのがシルエットでわかる。曇りガラスぞいに室内を覗いていたのか、あるいは私がドアから出てくるのを待っていたのか。こんな光景は、しょっちゅうだった。もう、シルエットだけでカワイイ。
そして、玄関のドアをあけて私がクロの前に姿をあらわすと、ニャ~ニャ~鳴いて私の足元に寄ってくるようになった。
見れば私に近づいてくる時のクロは、シッポがピンと真っすぐに立っていた。
普通に私が外出するときは、玄関前で待ち伏せしてたクロは、ゆっくり私の後をついてきて、更に遠ざかる私を物陰に隠れてジーッと見送っていた。
その時のクロの気持ちとしては、「えー?かまってくれるんじゃないの?どこに行っちゃうの?」とでも思ってたような様子だった。
クロはたまに玄関前にいないこともあり、そんな時は、私が外出して家の近くの道を歩いていると、テリトリーパトロールのために近所の道を歩いているクロとバッタリ遭遇することもあった。そんな時は私の目を見つめてニャ~と挨拶してきた。
こうなると、依存されてる気分だった。でも、そんなクロが私は可愛くてしかたなかった。
こんなに野良猫になつかれたのは初めてだったから、可愛さも倍増。
ある時、クロに餌をあげたり撫でたりしようと玄関から出た時のこと。
相変わらずクロは玄関前で私を待ってたらしく、私が姿をあらわしたらいつものように私に寄ってきた。
私はしゃがんで撫で撫でを始めた。
すると!
しゃがんでいる私の股間に入りこんできて、あろうことか……私の急所に軽く頭突きをしてくるようになった。
あ、頭突きといっても、全く痛くはない。頭突きのような仕草で、私の急所に頭をスリスリしてきたのだ。何回も。
私は思わず苦笑し、「おいおい、クロ、なんちゅうところにスリスリしてるんだよ〜」と思ったが、もう愛しくてたまらなかった。
だが、こんな光景を、隣近所の人達に見られたら、私としてはさすがに恥ずかしい。
道ゆく近所の人達に見られないように、その体勢を保った状態で、しゃがみ歩きで、近くの車の影に移動した。こうすれば、車に隠されて私とクロの姿は他人からは死角になって見えない。
しまいには、玄関のドアを開けると、クロは玄関の中にゆっくりゆっくり頭を入れてくるようになった。
室内に入りたがっていたのは、よくわかった。
そこでとりあえず、玄関の中だけは室内に入れてあげた。
すると、ますます私の顔をジーッと見つめてきて、訴えかけてくるような顔つき。
飼ってほしいんだろう。その気持ちは、もうよくわかってた。
正直、飼ってあげたくなった。守ってあげたくなった。
室内で飼うなら、まずは近くの動物病院に連れてゆき、病気の検査をしたかったし、風呂にも入れたかった。
そうすれば、私も覚悟を決めただろう。室内に高いギターが何本もなければ。
だが、生まれてこのかた、人間に飼われたことがなかったであろうクロを病院に連れてゆくために一時的にカゴに入れたり、風呂とまではいかないまでも、洗おうとしたら、強烈に嫌がるであろうことは私にもわかっていた。
猫は濡れるのを本能的に嫌がるものだしね。
もともと、相当警戒心が強かった、生粋の野良猫なのだから、なおさら。
風呂に入れようとすると、かなり暴れるだろうし、噛みつかれたり引っ掻かれたりもするだろう。
でも、一時的に引っ掻かれたとしても、病院や風呂は実現したいとも思った。
で、室内飼いをしたら、クロが室内のどこをお気に入りの場所にしそうかは、充分に予想がついた。特に少し高い場所を好むだろう。そのためには高い場所から別の高い場所に移動する場合、立てかけてあるギターのヘッドをジャンプ台にしたり、時にはジャンプに失敗してギターを倒すことは十分に予想できた。
ギターをとるか、クロをとるか…。
こうしてひたすら迷う日々が続くことになった私。
迷ってるうちに日々は過ぎた。
そんなある日、その日はやってきた。
クロと私の、結果的に最後になってしまった、その日が…。
長くなってきたので、後編に続く。
なお、写真は実際のクロの写真。もっと撮っておけばよかった。
お久しぶりです。というか初めてのコメントかもですが・・・
思わず読みいってしまいました。
私もアイコンに描いたパンダ猫を飼ってた事があるので、結末は何となく予想できそうです。
後半を楽しみにしてます。
クロに関してはこれまでもこのブログで何度か書いてきてます。
一時的に我が家の前から姿を消してた時期はこれまで何度かありましたが、結局は我が家に戻ってきてました。
なので、帰還を待っていたのですが、今回はもう無理そうです。1年半も姿をまったく見かけないので…。
おそらくは…。
決して若い猫ではなさそうでしたから…。