昭和の歌謡曲の中に「リズム歌謡」と呼ばれるジャンルがあった。
それは、エンタテインメント楽曲として、多くの人を楽しませ、一世を風靡したといってもいいのではないか。
美空ひばりさんなども「真っ赤な太陽」などで、そのジャンルでヒットを飛ばしており、さすが!という感じだが、なんといっても、リズム歌謡といえば、橋幸夫さんのイメージが個人的には強い。リズム歌謡の大御所という気さえする。
橋さんは数多くのリズム歌謡曲を歌われているが、その中でも代表的な曲が「恋のメキシカンロック」ではないか。
この曲は夏の歌という感じだが、この寒い冬に、こんな夏の歌を聴いて、気分だけでも少しでも寒さを忘れるのもまたオツなものかもしれない。
この曲、なぜ「メキシコ」なのさ? そして「メキシカンロック」って、どういうのさ?
・・・などというツッコミを後年考えるようにはなったが、幼少の頃は「きっと、メキシコにはこういうロックがあるのだろう」とか「メキシコのロックは、こういう感じなんだろう」とか漠然と思うだけで、それ以上はよく考えず、この曲の「独自の世界観」を楽しんでいた覚えがある。
実際のメキシコのロックがこういう感じなのかどうかは、きっとどうでもいいのだろう。
ともかく、エンタテインメント歌謡特有のフィクションとして、「楽しめるかどうか」が、こういう楽曲ではカギなのだろう。
少なくても私は、楽しんでいたのは確かだった。
この曲、私が幼少の頃、私の家の隣にあった「小さな町工場」から、よく流れてきていた。
その町工場は、朝から夕方まで(仕事終了まで)ラジオをつけっぱなしだった。
で、窓はいつも開いていた。なので、工場の中で大きめの音で鳴っていたラジオの音が、窓ごしに私の家まで届いていた。私の部屋は、その工場に一番近い位置にあったものだから、まさに私の耳に直撃であった。
この曲が流れてくるたび、私は浮き立つような気分を感じたものだった。
「あ、また流れている!」とか「よく流れるなあ。よほどヒットしてるんだな」などと思いながら、この曲が流れると、幼少だった私はひそかに耳をすました。
おかげで、この曲は私の幼心に深く浸透したのだろう。
普段私はこの曲のことを誰かに話すことはあまりなかったが、いつも心の奥深くにこの曲は居座り続けていた。
おかげで、オジサンになって、フォーク居酒屋みたいな店に行った時、フォークやロックや自作曲を歌わずに、この曲を歌ったりすることもあった。「場違い」な感はあったけど、この曲を歌いたいという気分を抑えきれないことがあったのだ。
まあ、それはさすがに頻繁ではなかったけど(笑)。歌ったのは2~3回くらいではあったが。
リズム歌謡というのは、リズムを強調した歌謡曲で、そのリズムというのは特定の種類のリズムを指すのではなかった。
マンボ、サンバ、ロック、など世界には様々なリズムがあり、その中のどれかを、1曲の中に取り入れて、しかもそのリズムをアレンジの中で強調した楽曲が、そのジャンルで呼ばれたようだ。
リズム歌謡の曲は、ノリが良くて、ひたすら楽しいのが多い。時に、能天気な曲も多く、そんな点も楽しかった。
この曲が流行った頃って、こんなに楽しい時代だったのかな?とか、ここまで能天気になれれば楽しいだろうなあ・・とか、今改めて聞くと思ってしまう。
当時の音源を聴くと、さすがにそのサウンドやアレンジなどに「古さ」は感じるものの、楽曲そのものが持つパワーや、それを歌ってた「レコード歌手」の歌声には、その若さもあって「勢い」やオーラは伝わってくる。
で、今の時代の楽曲が忘れてしまったり、封印してしまっているものが、躍動感を持ってそこで爆発しているのが分かる。
リズム歌謡というのは、エンタテインメント曲としては、1級品だったと思う。
そこに今のようなアーティスト自身の言葉にによる自己主張があるわけではない。
だが、それがどうした?と言って粉砕してしまいそうなパワーがある。
リズム歌謡は今では完全にすたれてしまった・・・というわけでもないとは思う。
個人的には「マツケンサンバ」などはリズム歌謡の流れをくむ曲だと私は思っているし。
しかも、「マツケンサンバ」は、J-ポップの時代にあってもかなりヒットしたし、そのジャンルの楽しさは、潜在的に一定の需要は今でもあるのだと思う。
というか、リズム歌謡は日本のヒットチャートに登ってくる「邦楽」の歴史の中で、血となり肉となってきた1要素だと思う。
きっと・・普段は声高にこういう曲の影響を受けたことを公言しない昭和生まれのソングライターの中にも、実はこういう曲に影響を受けた人は多いはずだと思う。
少なくても、無意識のうちにこういう曲からの影響が感性にしみ込んでいるケースは多いはず。
そんなリズム歌謡が、本家をまじえて、今のミュージシャンとコラボして、新たな命を吹き込むと、いかにその曲が魅力にあふれていたかを実感させられたりする。
スカポンタスが、御大・橋幸夫を迎えて「恋のメキシカンロック」を歌っているのだが、これがもう最高にグッド!
なんでも、橋さんがこの曲をリメークするにあたり、スカポンタスにオファーを出し、曲の良さにスカポンタスが快諾して実現したバージョンだそうな。
そのせいか、御大も楽しそうで、ノリノリ。
スカポンタスもノリノリで、実に楽しそうだ。
このバージョンでこの曲を聴くと、全く古さは感じない・・・どころか、現役感バリバリ。
底抜けに良い。
http://www.youtube.com/watch?v=1bqdZLIyA8I
これぞ、昭和エンタテインメント楽曲の大傑作の曲。
今聴いても楽しめるリズム歌謡、恐るべし。エンタテインメント歌謡曲、恐るべし。
そう思うと、リズム歌謡、エンタテインメント歌謡には、私は敬意を払わずにいられない。
ともあれ、「恋のメキシカンロック」。
私にとっては、今でもこの曲を聴くと、幼少の頃の私の家の隣にあった町工場の機械音と、そこで働いてた労働者の汗や笑い声などが蘇ってくる気がする。
当時の空気と共に。
こういう曲ばかりを集めた、生バンドによるショーアップしたコンサートなどがあったら、楽しいだろうなぁ。
♪ も一度言って~ 好きだと言って~
「霧氷」は、好い歌ですねぇ~。聴くき惚れてしまいます。
「恋のメキシカンロック」って歌がありましたネぇ~。♪
先日の「歌わない橋幸夫の講演会」は、雪の予報で「雪」を連想させましたが大丈夫でした。
「霧氷」は、好い歌ですねぇ~。聴くき惚れてしまいます。
時間の外にようこそ。
橋さんの講演会ですか。
どんなことをお話しされるのでしょうね。
きっと歌謡界のことや、介護などのことをお話しされるのではないかと思ってます。
恋のメキシカンロックは、その良い意味での能天気さや底抜けの明るさが好きです。
霧氷、、、む~ひょ~お~、、、って伸ばすあたりが印象的な曲でした。
講演会、雪が降らずによかったですね。