先日、プログレロックをダウンロードで購入する場合の値段を調べてて、思ったことがあった。
なぜプログレロックのダウンロードの値段を調べていたかというと、そこには単純な疑問があったからだった。
ご存知のように、プログレロックは、1曲あたりの時間が長い場合が多い。
中には、アルバム片面が、たった1曲で占められている場合もある。
例えば、マイク・オールドフィールドの初期の作品(「チューブラーベルズ」から「呪文」まで)がそうだったし、ピンク・フロイドの「おせっかい」というアルバムに入っている「エコーズ」という曲なども。
それらの曲は、LP時代に片面まるまるを占めていたぐらいだから、1曲の長さは長い。
15分~20分ぐらいある。
もしもダウンロードが1曲単位で売られるのだとしたら、その値段に、曲の長さは反映されているのかどうかが知りたかった。
私は音楽をダウンロードで入手したことがほとんどないので(本当にほしい曲はCDで買っていた)、そのへんの事情や相場が分からなかった。
なので、調べてみようと思ったのだった。実は以前から興味があったことだった。
で、あれこれ調べていて少し分かった「現状」がある。
それは例えば、ビートルズの「アビーロード」を例にすると、分かりやすい。
「アビーロード」には1曲が7分ある「長め」の曲もあれば、いくつもの短い曲がメドレーで繋がっている個所もあるし、また20秒足らずしか尺がない「短い」曲もある。
メドレーの曲みたいに、曲が繋がっている場合は、その前後の曲の流れもまた1曲の一部に感じられたりするから、そのへんはどう扱われているのだろうか。
また、20秒たらずの短い曲は、どう扱われているのか。
ダウンロードの1曲単価を知るには、「アビーロード」は格好の題材だった。
で調べたら、「アビーロード」の各曲のダウンロードの値段は、均一だった。
7分ある曲も、20秒たらずの短い曲も。
そして、メドレーで繋がっている曲は、それぞれ1曲づつ切り離されて、均一料金。
少なくても私が調べた場所では、そうだった。
そう・・・なっているのか。
ついでなので、ピンクフロイドやマイク・オールドフィールドの「LPで片面1曲」だった曲の単価も調べてみたら、さすがにLP時代に片面1曲だった曲はバラ売りはされず、「アルバムのみ」ということだった。
つまり、それらの曲を入手するには、アルバムを買うしかないのだ。
また、さらなるついでに、他の曲も調べてみた。
例えばボブ・ディランの曲。ディランの曲にも長い曲は多い。
LP時代に片面で1曲しか入っていないこともあったし、10分近い曲もけっこうあるし、10分以上ある曲もけっこうあった。
それらのダウンロード単価を調べていたら、面白いことに気付いた。
それは・・
長さが10分以上ある曲は、「アルバムのみ」が多いが、中には短めの曲と同じ値段で購入できる曲もある・・そんな感じ。
10分以下の曲は、どれも均一の場合が多い。1分くらいの短い曲も、10分近い長い曲も。
どうやら、「10分」というのは、ある程度の境目のようだった。
そして、この基準で、他のアーティストの曲もいくつか調べてみたら、やはり10分以上の長さの曲は「アルバムのみ」が多く、10分以下の曲は均一が多かった。
もちろん、10分以上の曲でも、短い曲と同じ値段でのダウンロードが可能な曲もあったので、10分以上の曲は必ず「アルバムのみ」というわけでもないのだが。
ともあれ、その辺は、基準がある程度はっきりしていて、分かりやすいと言えば分かりやすい。
ただ・・10分近い曲も、1分以内の短い曲も同じというのは、今更のように驚いた。
また、メドレーの曲が、それぞれ前後の曲から切り離されて、ブツ切り(?)状態にされるほど事務的になっていたとは・・。
確かに、分かりやすいといえば分かりやすいのだが、アルバムを聴いて育ってきた私としては、どうも割り切れない思いは残った。
7分以上ある「ヘイジュード」も、20秒ちょいの「ハーマジェスティ」も同じ値段というのは・・・・。
もちろん、これは曲の優劣を言っているのではなく、曲の意味合いという点で。
このへん、ダウンロードというシステムのビジネスライクな点なのかもしれない。
ただ、アルバムの構成曲として発表された曲は曲によって色々な意味合いがあったりするので、バラ売りで1曲単価で均一料金で売るのは・・少々無理があるような。
昨今は、アルバムは売れず、もっぱらダウンロードでの購入というスタイルも、ある程度浸透している。
なら・・
例えば、CDアルバムの長さが仮に60分ちょいだとしてみよう(実際にはもっと長く収録できるが)。
極端な考え方で、そのアルバムの構成を、11分の曲を3曲、30秒の曲を54曲(笑)収録したアルバムだったら?
仮に1曲がサービス値段で100円だとすると、54曲×100円は5400円。残り3曲は11分なので、「アルバムのみ」ということで1曲単位では買えない・・・という設定で。
そして、そのアルバムの値段が仮に3000円だとしたら。
仮に、30秒という長さの曲が1分だったとしても、27曲×100円で2700円。これに更に11分の曲が3曲加わるわけで、11分の曲が仮に1曲100円だとして、CDを買うのと金額的にはやっとトントンになる。
11分の曲が仮に200円だったとしたら、ダウンロードですべてを揃えようとすると、アルバム買うよりも赤字になる。しかも、ジャケットなどの「見る楽しみ」はないわけだ。
この例はダウンロード1曲を100円という廉価で計算してあるが、仮に1曲あたりが200円以上だったりすると、その赤字度は更に増す。
こりゃ、どう考えても、アルバムを買った方が得ということになる(笑)。
ダウンロードで買える曲を全部買うと、アルバム単価をはるかに超えてしまううえに、目玉ともいうべき11分の大作曲はダウンロードでは入手できないことが多くなるわけだ。
まあ、こんな「ダウンロードシステムに挑戦したような?」構成のアルバムが売れるかどうかはともかく(笑)。
また、そんな極端なアルバムが作られることもないだろうが(笑)←まあ、作られはしないだろうし、仮に作られても売れないだろうけど・・。
もっとも、ダウンロードだと、アルバムの中の、いわゆる「捨て曲」みたいに聴こえる曲や、各リスナーの好みに合わない曲は買わずにすむわけで、ダウンロードの強みは、その点だろう。
ダウンロードのその利点の強みで、アルバムはあまり売れなくなっていっているのだろう。
不必要な曲はいらない・・ということで。
場合によっては、アルバムは、数曲の良い曲と共に「抱き合わせ」で収められる「捨て曲」のパッケージみたいな辛辣な捉え方をされるようになっているのかもしれない・・。
だが、アルバムは、すべてがそうであるというわけでもないと、アルバムファンの私は思う。
大昔、まだアルバムというものは、シングルヒットの寄せ集め的な存在でしかなかった。
だが、その後、ビートルズなどを筆頭にする60年代のミュージシャンや、さらにそれを発展させた70年代以後のミュージシャンたちによって、ミュージシャンの表現媒体としての存在価値を高められたアルバムは、今は再びシングルヒットの寄せ集めみたいになっていっている動きが顕著。
ミュージシャンはアルバムという媒体があるからこそ、実験もできたし、次のステップに進むこともできただろうし、新生面を見せることもできた。
だが、ヒット曲以外のアルバム収録曲が「捨て曲」扱いになってしまうと、ヒット曲や名曲しかいらないということになってしまう。
正直、ソングライトをするミュージシャンが、ヒット曲ばかりを作り続けるのは至難の業。
中には、確かに駄曲もある。
でもそれがアルバムに収録されて「抱き合わせ」みたいに捉えられ、アルバムが敬遠されるのであれば、グレイテストヒットアルバムが増えるのもむべなるかな。
また、ソングライトをするミュージシャンが無理してオリジナル曲を入れるのを避け、カバー曲を多く取り上げるようになるのもむべなるかな。
カバーということであれば、名曲とされている「誰かのヒット曲」を取り上げることで、名曲やヒット曲ばかりでアルバムを埋めることもできる。
それは、カバーという方法を使った、収録曲だけを見ればベストヒットアルバムでもあるのだから。
ただ・・・そのままでいいのだろうか? ・・とも思えてならない。
ひとつ言えるのは、ソングライトをするミュージシャンは、ほとんどの人が、良い曲や、意義のある曲を作りたいと思っているだろう・・ということ。
それが結果的に駄曲になってしまったとしても、作ってる段階では、良い曲や意義のある曲になると思って作っているはず・・・私はそう信じている。
初めから駄曲を作ろうとして作っているソングライターなどいない・・・そう思いたい。
もちろん、シャレでくだらない曲を「遊び」で作ることはあっても。その場合は、また別の意味合いであろう。
もし、通常アルバム衰退が、良い曲と駄曲の差が激しくなってきたからなのだとしたら、それはミュージシャンやソングライターやプロデューサーなどが大きく反省しなきゃいけないことだとは思うけど。
とりあえず、過去に「アルバム」として構成された曲すべてを、1曲ずつ抜き出して、時にはぶつ切りにして、ばら売りばかりになっていってしまうと、曲によっては「その曲の本来の良さ」を見失うことはあるとは思う。
もともとシングル用に作られた曲はともかく。
話を元に戻すが、アビーロードのメドレー曲などは、その曲の位置や、前後の曲との流れというものがあってこそ、その良さが出るとおもうし、ミュージシャン側も、その曲の位置や前後曲との流れを前提にした作り方をしてたはずだから。
いっそ、ダウンロードは、シングルヒットした曲だけにする・・・という提案をしたいが、きっと反対意見もあるんだろうなあ・・。
私が読んだ音楽ビジネス関係の本によると、アルバムの売り上げは悪くても、ライブでの収益は上がっているらしい。
なので、アルバムよりもツアーにシフトした音楽活動が中心になっているのが現状なのだろう。
さすがにライブは気軽に持ち運びはできないからね(笑)。
ちなみに・・・さっきビートルズの例をだしたついでに書けば、ビートルズの「ホワイトアルバム」を私がダウンロードで買うとしたら、たとえ全曲揃えたくても「レボリューションNO,9」だけは、買うかどうか迷いそう・・・。
そんなことに迷うくらいなら、やはりアルバムを買ってしまったほうが手っ取り早い気はする(笑)。←結局、そこに落ち着きそうではある。
先ず、ただの音だけ。
私は、ダウンロードされて、その個人の耳に入る「音楽」を「音楽」とさえ呼びたくありません。
次にアルバムやシングル・アルバムならではこその魅力の1つ、ジャケットを眺めることも出来ない。
そして何よりも、そのアルバムに対する解説、ミュージシャン作者による楽曲エピソード、歌詞ノートなどは、全く見えません!
だんぞうさん御自身も、自作アルバムを持っていらっしゃるから、よく判るでしょう。
「音さえ聴くことが出来れば、文字は不要」というのは、はっきり言って「軽薄な文化」です!
又、目当ての楽曲のみをダウンロードするということは、アルバム特有の、その他の収録曲が完全に無視されるということになります。
そのミュージシャンが、そのアルバムのみに収録した名曲もあるに違いないのに…。
又さらに、人によっては、いわゆる「捨て曲」「駄作」であっても、何度かは、そのアルバムに収録されている価値・意味は、味わうべきです。
そのミュージシャンが、その当時、なぜ、この楽曲を創作したのか?
そして、なぜ、収録したのか?
だんぞうさんも、例に出していらっしゃるビートルズ『ホワイト・アルバム』収録「レボリューションNo9」に対しても、私も何度も聴くような音楽?ではありませんが、「ジョン・レノンは、このような前衛的・革命的な音を作ったという事を知っただけでも感激した」思い出があります。
そして、アルバム全体の解説や収録楽曲エピソード、歌詞ノートを心行くまで楽しみました(確か高校1年生の頃でした)。
ダウンロードに頼るくらいなら、最初からお気に入り楽曲をアルバムから録音しますよ(笑)
ついでに私は、「電子書籍」にも徹底反対です。
その場合などは、当然ジャケットなんてなかったのですが、もしかしたらダウンロードはそれに近いのかもしれませんね。
でも、選びに選んで買う新作は、やはりアルバムで持っていたかったもんでした。
例えばディランのアルバムなんて、訳詞も読みたかったですから。
あと、プログレロックのアルバムは、ジャケットもぞうとう凝ってましたので、ジャケット買いをしたこども多数。
アルバムを持ってると、所有感もありました。
解説も楽しみでした。
手前味噌になりますが、私が自主製作アルバムを作った時は、ジャケットにもそれなりにこだわったつもりです。
見たり、読んだりする楽しみも加えたかったんです。
先人ミュージシャンが築き上げてきたアルバムという音楽文化が壊されていってるような気がして、心配です。
それは音楽の衰退にも繋がる気がして、、、。
考え過ぎであればいいのですが、、。
電子書籍にも、所有の実感はないですね。
本にも表紙の魅力はあると思いますし。
まあ、増えすぎて、保管場所に困る、、、という心配がないのは、便利だとは思います(笑)。