鈴木茂さんのアルバム「コーション」について、以前このブログで取り上げたことがある。
それはちょうど鈴木さんのボックスセットが出た時だった・・と思う。
今回とりあげる曲は、鈴木さんのセカンドソロアルバム「Lagoon」に入ってた「8分音符の詩」という曲である。
この曲には、いつ聴いてもセンチな気分にさせられ、ジーンときてしまう。
歌詞も、メロディも、サウンドも、どれも。
おそらく、私にとっては、鈴木さんの曲の中で最も好きな曲だろう。
ホント、この曲は大好きだし、実際に私は影響を受けた。
正直言うと、私にとっては・・・誰にも明かさずに、密かに愛していきたい・・そんな系統の曲だ。
よく、無名の美味しい店を、誰にも教えずに密かに愛す人がいるが、私にとって「8分音符の詩」はその楽曲バージョンみたいなものだ。
これはLagoon」のラストに入っていた、珠玉のバラード。
それも、お涙ちょうだい系でもなく、かといって圧倒的な歌唱力で歌いあげて「どうだ!」と言わんばかりに迫ってくるというタイプの曲ではない。
派手なアレンジのバラードが世には溢れているが、そういう曲に比べたら、この曲のアレンジはけっこう地味めかもしれない。
でもそれだけ、聴きこむほどに味わい深く、心の中に染み込んでくる・・・そんな曲。
この曲に出会った頃、私はこの曲からインスピレーションを貰い、当時私が作ったいくつもの曲の中に、この曲から受けた影響があった。
それほど、私にとってこの曲は、自作曲を作る時に、血となり、肉となった。
この歌の主人公はミュージシャンだろう。ミュージシャンが、去っていった友人にあてて歌った曲・・そんな感じだ。
私はプロミュージシャンではないが、この歌の歌詞に近い思いを友人に対して思ったことは・・何度かある。
それだけに、この曲には共感したし、切なかった。
友人と、バンドなり、グループなり、一緒に音楽をやったことがある人は、この歌で歌われているような状況や思いになったことがある人は・・・少なくないのではないだろうか。
そして、自分なりに思いだせることが、あれこれあるのではないだろうか。私と同様に・・。
冒頭、いきなりイントロなしでボーカルが入り、昔のジャズオーケストラ風のアレンジで曲が始まる。
リズムはゆったりとしたテンポで、歌声もテンポも少しけだるい。
だが、そのけだるさが、リスナーにリラックス感を与えてくれる。
全体的にのどかで、ノスタルジックでもあり、なおかつオシャレなサウンド。
親しみやすいメロディ。
吟味した数少ない言葉ゆえに、行間に色々なものが込められている歌詞。
「もし君に逢えなかったら 今頃背広を着てたはずさ」という歌詞など、特に。
私はけっきょく普通の会社員になったが、友人には普通の会社員にはならなかった奴もけっこういる。
中にはもう亡くなった奴もいるし、生きてるはずなのに消息不明の奴もいる。
この部分の歌詞を
「もし君に逢えなかったら 今頃僕は何をしていただろう」
という歌詞に直してみると、まったく自分の心境そのままになる。
また、「ギターの弦に 錆ついてる時が しゃがみこむ」
という心境も表現も、よく分かる。
ケースにいれて、押し入れなどにしまいこんである古いギターを引っ張り出してきて眺めたら、おそらくまったく同様の思いを私は持つことだろう。
特に、一頃トレードマークのように愛用してたギターであればあるほど。
この曲は、ドームのような大きな会場ではなく、小ぶりのライブハウスなどで、ステージのすぐ近くの席に座って、しみじみ聴いてみたくなるような曲だ。
少しけだるくも、リラックスして。そして古い友人を思い浮かべながら。
その古い友人が古い音楽仲間で、しかも今では中々会えなくなってしまった奴であればあるほど、この曲は染みるに違いない。
私の印象では、この曲は、案外ウクレレ一本で歌ってもサマになるような気がする。
冒頭の方でも書いたが、この曲は、できればあまり大々的に広めたくない。まあ、こうしてブログで取り上げておいて書くのもナンだが(笑)。
密かに、愛していきたい、大好きな名曲。
http://www.youtube.com/watch?v=Z0EdS_XJIe4
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