私が子供の時に住んでた家は、トイレまでの廊下が長かった。
いや、今思えばそんなたいした長さではないのだが、当時は長く感じた。
特に夜は、若者と呼ばれる年代になっても、長く感じた。
しかも、木造の家だったから、歩くたびにミシッミシッと音がした。
しかも、廊下は電球の明かりが届かなかったし、廊下そのものには電球がなかったので、廊下は暗かった。
昼なお暗い・・という状況。
夜などは、その廊下を歩いている途中、背後に何者かがいるような気がして、ちょくちょく後ろを振り返りながら廊下を歩いた覚えがある。
長さ5~6メートルの廊下を歩き、やっと(?)の思いでトイレについてみれば、今度はトイレがくみ取り式ときたもんだ(笑)。
なので、トイレに無事に着いても安心できないでいた。
背面にある壁からは何者かがガバッと這い出して、背中から寄りかかってきそうな気がしたし、大用の時には、くみ取り式のトイレの中に何者かがいて、私の足をつかんで下に引きずり込もうとされたらどうしよう・・・とか、ともかく恐怖のシチュエーションをよく想像したものだった。
それでも
そんな怖い「夜のトイレ」ではあったのだが、その怖さを別のシチュエーションと比較して「これぐらいは、まだマシだ」と自分を納得させてもいた。
その「別のシチュエーション」とは、地方によくあった「トイレが家の外にある状況」であった。
地方には、トイレが母屋とは別に、外にある場合もあったからね。
友達の田舎に遊びに行った時にも、トイレは家の外にあったし。
いくらトイレに行くのが怖いとはいっても、同じ室内であればまだマシなのだ・・・と思っていたのだった。
実際、友達の田舎の家に泊まった時などは、夜中にトイレに行くのは怖かった。
なんてったって、トイレに行くには一度外に出なくてはいけなかったし、あたりは真っ暗だし、闇の中に何者かが潜んでいそうな気がしたし、しかもその何者かは複数いるように感じた(古来から伝わる妖怪たちというのは、そういう状況で、人の想像から生み出されていった妖怪も多かったはず)。
それに比べたら、家が都心で、しかもトイレが同じ建物の中にある状況は、たとえトイレへの道のりが多少長くても、暗くても、外にあるよりはマシだと思えた。
それにしても、夜中にトイレに行くのは、なぜ怖かったのだろう。
もちろん、廊下が長いとか、廊下が昼なお暗いとか、そういう要因もあるが、周りの人・・・例えば親・・・がすでに寝てしまっていたり、夜だと家の中の電気が消されていたりしたから・・というのも大きいだろう。
また、そんな状況の中で、1人で密室(トイレのこと)にこもらなければいけない・・というのもあっただろう。
人間は本能的に闇を恐れる。
正体の分からない存在を恐れる。
自分のいる環境がよく見えない状況には不安を覚える。
その時、1人だとなおさらだ。
夜トイレに行くというのは、それらの要素を含んでいる。
子供の時怖かったが・・・実は今でも、・・・例えば山奥などの古い宿に泊まって、トイレが部屋になくて、長い廊下を歩いて行く共同トイレだったりすると、・・・夜は怖いことがある。
たいがい、そういう状況での長い廊下は、薄暗い。
廊下の隅っこのほうに、ほのかな闇が転がっていたりする。
昔の人が想像したように、その闇の中には、人間には理解できない異形の存在がいても、おかしくない・・そんなふうにも思ってしまう。
怖さの核心は・・・・やはり「闇」なのだろう。
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