ナッシング トゥ イット by スターバック。
スターバック・・・といっても、コーヒーショップのことではない。
ここにとりあげるのは、アメリカのロックバンド、スターバックのことだ。
スターバックは1974年にアメリカのアトランタで結成されたバンドで、1983年まで活動していた。
鍵盤とボーカル、さらにプロデュースを担当したブルース・ブラックマン、そしてマリンバを担当したボー・ワグナーがオリジナルメンバー。
ジャンルはロックではあるが、ソフトなロックであった。
当時もてはやされていた「AOR」というジャンルでくくられていたかもしれない。
聴きやすく、聴いてて心地よい音楽性だった。
おそらく、一番有名なヒット曲は「Moonlight Feels Right(邦題は「恋のムーンライト」)」で、全米3位にまで上り、年間チャートでも34位になった。
聞けば「ああ、この曲か」と思う方もいらっしゃるであろう。
このバンドのサウンド的な特徴はマリンバだったと言われており、そのせいか楽曲を聴いてても、鍵盤サウンドが目立ち、普通のロックバンドのようなギターへの依存はさほど感じなかった。
そのせいか、とてもソフトなサウンドであった。
今回取りあげる「ナッシング・トゥ・イット」は、彼らの出世作「恋のムーンライト」に入っていたのではなく、「Searching for a thrill(邦題「スリルは恋の合言葉」)」というアルバムのB面に入っていた曲である。1978年に発表されたサードアルバムだったようだ。なんでも、結局はこのアルバムが彼らの最後のアルバムになってしまったそうな・・。
この曲、収録された位置からいっても、決して彼らの代表曲というほどではなかったろうし、曲自体ちょっと地味な印象もある。
だが、私の大のお気に入り曲で、聴けば聴くほど好きになった覚えがある。
その証拠(?)に、当時私が作っていたオリジナルベストヒットカセットテープには、この曲を混ぜていた覚えがある。
アルバム自体非常に聴きやすく親しみやすく、メローな出来あがりだったのだが、この曲はアルバムの中に非常にうまく溶け合っていた。
決してキャッチーで派手な起伏のあるメロディラインというわけではない。また、インパクトのあるアレンジというわけでもない。
でも、・・なんていうか・・アルバムの中に何気なく収録されて、しかもアルバムの質を上げている・・そんな印象を受けた曲がこれであった。
スターバックは鍵盤がサウンドの特徴だったが、バッキングはサウンドを効果的にいろどっていたと思う。
オブリガートや間奏など、歌心のあるフレーズだった。歌ってしまうくらい。
ボーカルメロディは割と平たんだが、口ずさみやすかった。そのため、無意識のうちに私はこの曲を口ずさんでいた。
出だしの部分で、ボーカルと伴奏がかけあいのようになっており、フレーズは凝ったフレーズではなく、ある意味「合いの手」のようなフレーズなのだが、ボーカルとの相乗効果が良い。
また、サビのボーカルとサウンドとのマッチングは、キラキラ光っているようにきれいで素敵だった。
このアルバム「スリルは恋の合言葉」は全体的にトロピカルなムードを個人的に感じて、まるで夢の中におだやかに出てくるような心地よさがあった。そのムードは、この「ナッシング・トゥ・イット」とラスト曲の「A Piece Of My Life」が大きかったと個人的には思っている。このアルバムで私は特にその2曲が大好きだった。
「A Piece Of My Life」もまた、当時の私が作っていた「オリジナルベストヒットカセット」には選曲していた覚えがある。
当時よく聴いてたお気に入りのアルバムだったのだが、このアルバムが彼らのラストアルバムになってしまうとは・・・・とほほ。
このアルバムからもアルバムタイトル曲「Searching for a thrill」などはシングルとして全米58位まではあがったというのに。
オープニング曲「「It feels so good」も中々ヒット性のある曲だったし。
なのに、アルバムの売れ行きは、あまり芳しくなかったのだろうか。
まあ、少なくても日本ではこのアルバムはあまり売れなかったのかもしれない。
なので、スターバックというと、「Moonlight Feels Right」という曲の「一発屋」みたいに捉えられてしまったのかもしれない。
個人的には、このアルバム「Searching for a thrill」の邦題を「スリルは恋の合言葉」にしてしまったことも・・・影響してるんじゃないかなあ・・。
だって、皆さん・・・「スリルは恋の合言葉」という邦題・・・どう思います??
なんか、チープな感じがしません?
せっかく良い曲がいくつも入っているし、中には私の心に染み込んだ「Nothing to it」や「A Piece Of My Life」も入っているのに・・邦題で、バンドやこのアルバムごとチープに見られて誤解されてしまったんじゃないかな・・。
だとしたら、もったいないとしか言えない。
でも、「Nothing to it」と「A Piece Of My Life」は今後も私の心の奥底に「忘れられない曲」として残っていくのは確かではある。
これらの曲を聴くと・・リアルタイム当時、自分の部屋でこの曲を聴いては、夢想するかのようにトロピカルなムードに包まれていたことを思い出す。
それはたいがい昼過ぎから夕方にかけての時間帯だった。
部屋の窓からは密接する隣家の壁や、家が密集する光景が見えたけど、頭の中は・・トロピカルだった。
この心地よく穏やかな曲のおかげで。
日本であまり知られていなくて「手垢」がついていないことを活かして、日本でどこかのCMのBGMで使ってくれないかなあ。
https://www.youtube.com/watch?v=a2JAYnyK6jY
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「鍵盤楽器がサウンドの要」と聞きまして、想像したのは、「ロックンロール創成期の1人」リトル・リチャードです。
しかし、YouTubeで実際にスターバックの楽曲を聴いてみると、全く違いますね。
リトル・リチャードは「ハード」ですが、彼らは「ソフト」です。
創作された70年代の中で、このまろやかなサウンドは、「80年代洋楽ポップス」の先駆けのように感じられました。
日本でも、もっと高く評価されるべきミュージシャンですね。
すでに解散したロックバンドとなると、「今現在の彼ら」が、とても気がかりです。
このバンドはその路線にも思えました。
キーボードメインで、心地よいサウンドでした。
けっこう好きなサウンドだったのに、このアルバムがラストだったなんて、ちょっと寂しいです。
ちなみにルックスは、けっこうオッサンでした。