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理想を追い求めても、
自分の力では、どうにもならないこともある。
ある程度のところで、頃合いをつけるのが実情。
けれど、本心は、納得がいっていない。
彼は、そんな性分。
ゆえに、
少しでも、理想へ近づきたいと、努力をしようとしてしまう。
割り切れば楽なのに。
さっきまで距離感があったかのような彼の声が、
変わった気がした。
耳元に直接語りかけてくる声は、とても穏やかで、優しい響きだった。
そして私に、隣に居るかのように感じさせる。
そういった努力は、誰かに正当に評価されなければ、きっと、失われる。
誰か一人でもいい。
それだけで、報われることもある。
世間が、その時の風潮で、向きを変えるのとは別に、
自分は、
公平な目でちゃんと物事を見て、判断する必要がある。
そうでないと、
世の中は、多数決で、多い方が正しくなる。
そんな感覚がある。
俺は、誰かに、過剰に評価されているけどね…。
そう言って彼は私をドキッとさせた。
確かに、昨日は、酔っていて、彼への想いを伝えすぎた。
それは、一旦、体に入れて、排出させるのだそう。
それも、彼なりのやり方。
自分に、おごることのないように。
評価を謙虚に受け止めて、
それでまた、自分を高めていく。
常に自分と闘う、そんな彼の姿が見える。
私は、彼に、
ひとときの休息を与えてあげたい。
そんな存在になれたらいいな。と思っていた。
夜の犬の散歩に出た時、
東の空に、一際明るい星が見えていた。
さっきより、少し高くなったなあと、電話を切ってから、眺めていた。