彼の手にかかると、
私はいつの間にか、鎧を剥がされて、
無防備になる。
結局、
思いとは裏腹に、
素直に白状しているから、やっぱり、敵わない。
春まで待つなんて、本当はできないし、自分に言い聞かせてるだけ。
期待してはいけないと、自分に言い聞かせてるけど、
期待ばかり。
きっと彼は、疲れているだろうから、女々しいことは言わないと決めたけど、
本音を伝えたら、素直で良いと言ってくれた。
全て、お見通しだったと知った時は、
力が抜けたのがわかった。
めんどくさいだけだったのね。
私は、真っ暗な散歩道を
彼と電話しながら歩いていた。
いつからか、
犬の散歩で、同じ時間を過ごせるって、
当たり前じゃないと思うようになった。
私からしてみれば、
私は、いつも決まった時間にここにいるけど、
あなたは、自分で決めて、自分で動く、自由な人。
だから余計にそう思う。
大昔の人間の姿は、
男は狩りに行って、
女は、家の周りで農耕しながら、
その帰りを待つ。
それに似た感覚がここにはある。
今も昔も、変わらない。
私には、
見送って、待つ人生が、ふさわしい。
私は、他の世界を何も知らない。
だから、
彼が見てきた事、してきた事、
感じた事、
それを聞くのが楽しい。