Bokutoh ICU Blog

墨東病院集中治療科の日々の活動を広めていきます

ローテーターの声 #10

2024-01-05 18:23:45 | 日記

飯塚です。

年始勤務はバタバタしつつも、あっという間に三連休に突入となりました。

新年どうにか良いスタートを切りたいものですね。

さて、今日も先月のローテーターからの声をお届けします。

今回は呼吸器内科からローテしてくれた北野先生です!


内科S3の北野です。

11-12月の2ヶ月間お世話になりました。ICUの先生方が常駐され、セミクローズド型の運用が始まってから重症患者のタッチが減ってしまったことに危機感を覚え、また最近の集中治療のトレンドなどを知りたく、希望してローテートさせていただきました。

 

私は初期研修医のころから在籍しておりますが、墨東は代々教えられるより見て覚える、屋根瓦式で歳の近い先生から教えてもらうというような教育文化があると思います(私の認識が違っていたらすみません)。

ICUはただいるだけでもインプットが非常に多く、従来の墨東にはない教育体制で斬新でした。

 

①ICU入室中の患者全員のベッドサイドでby systemに基づいたteachingが行われます。レジデントはプレゼンを行い、方針を決定します。レジデントはアセスメントを行い意見を述べ、合議の結果、自分の意見が採用される場合もありやりがいを感じる瞬間でしょう。基礎的なことから答えがないものまで様々な質問が飛び、レジデントは解答しなければなりません。質疑応答が気付きとなり学びに繋がります。また、ただその場にいるだけでも勉強になります。

②毎週水曜日にコアレクチャーと呼ばれる、テーマ毎のレクチャーが用意されています。過去のコアレクチャーも閲覧することができるため集中治療を体型的に学べます。

③ゲリラ的に専門の先生からレクチャーを受けられます。時間があるから〇〇のことについてレクチャーするわ、というように気軽に始まります。私は経肺圧、ECMO、透析など教えてもらいました。

④スタッフラインで論文や資料の共有や日々の疑問について活発に議論されています。こんな活発な業務ラインなかなか無いと思います笑。

 

このようにインプットの機会は豊富にあり、また学んだことをすぐに目の前の患者さんにアウトプットできる環境もあります。とても充実した学びの環境を提供していただき感謝しております。

さらにどの先生も目の前の患者に対していかにベストを尽くすかと常々考えておられる事がひしひしと伝わり、professionalismを感じました。そのような先生方の下で学べたのも幸いでした。

 

呼内の外来も並行してしていたこともあり、多々ご迷惑をおかけしました。申し訳ございません。まだ院内におりますので、ICUには今後もお世話になります。引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。


北野先生は博士のような雰囲気があり、第一印象は同年代かあるいは年長者かと思わせる落ち着いた物腰でした。

その後に話してみると大学の後輩ということが発覚し、急に親近感を覚えたのが懐かしいです。

呼吸器内科の圧倒的な知識のもと、逆に僕らに気胸のpitfallや管理、レントゲン読影、BAL、肺癌のclinical courseや治療戦略など勉強になる内容を教えてくれました。

こちらが還元できたものが充足しているのか心配になるくらい、色々な話をしてくれましたね。

まだまだお世話になろうと思いますので、こちらこそ今後ともよろしくお願いします。

北野先生、2ヶ月間お疲れ様でした!


ローテーターの声 #9

2024-01-04 23:23:45 | 日記

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願い申し上げます。

年末年始はずっと体調を崩しており、ろくに動けなかった飯塚です。

さて年も変わり当科の雰囲気も刷新されましたが、12月のローテーターからの声を届けさせて頂きます。

まずは1ヶ月ローテしてくれた久山先生からです。


J2久山です。集中治療科の先生方には、BTCCS(Bokutoh Critical Care Seminar)の際などにお世話になっていましたが、非常に教育的で、基礎的なことから最先端なことまで親切丁寧に教えてくれるという評判もあり、そんな先生方のもとで実際の診療を通して学びたいと思い、1ヶ月間選択させていただきました。

実際にローテーションしてみると、先生方の凄みを感じる毎日でした。挙げる鑑別疾患の多さ、その所見からなんでそこまでわかるんだというAssessmentの深さ、正解のない場面での状況を整理して少しでもよい方向性へ導く判断力。それでいてわからないことだらけの研修医にも教えようとしてくれる親切さ。“もっとこの科で学びたい”と感じることは他の科でも多かったですが、集中治療科ローテを終わった今はその思いが最も強いかもしれません。

労働環境の良さも感じました。職場の雰囲気としては、医師だけでなく看護師さんや薬剤師さんなど多職種の方々にもウェルカムな雰囲気があり、親切にご対応いただき、大変お世話になりました。労働時間の観点では、集中治療というハードな分野にも関わらず、時間外労働をほぼしなくてもまわるような勤務体制ができており、ホワイトな現場だと感じました。(そんな中で勝手に残って色々みたり質問したりしてすみません。。)

来年度は外科・救急シニアとして、また選択しようと考えております。集中治療をやっていく上で、1ヶ月は全然足りなかったので、もっともっともっともっと学ばせていただきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。


久山先生は将来acute care surgeonを目指しており、来年度より当院の救急&外科のコンバインプログラムに進む希望の星の1人です。

留学経験を活かした英語力も光り、スペックの高さをフェローたちに見せつけてくれました。

月末の症例発表では吸気努力に伴う肺障害(P-SILI)についてまとめてくれましたが、提供した論文を次々と簡単に咀嚼してしまうので指導医としても立場がありませんでした笑。

そんなハイスペックな彼の一番の良いところは、謙虚に学びの姿勢を崩さないところでしょう。

勤務後にも積極的に声をかけてくれて、働き方改革の推進に力を入れている当科フェローもつい雑談で帰りが遅くなることもありました。あくまで雑談です、勤務ではありません。

来年度は救急シニアとして再度ローテ予定とのことで、さらにパワーアップした姿で戻ってきてくれることが今から楽しみです。

久山先生、1ヶ月間お疲れ様でした!


多施設ジャーナルクラブ 2023年12月

2023-12-13 16:21:39 | 日記

毎週火曜日に全国30施設がウェブ上で最新の医学論文を批判的吟味する多施設ジャーナルクラブ、今週は当院集中治療フェローである上石医師が発表してくれました。

 

今回のお題は、ARDSの発症リスクがある外傷患者に対し“Sigh ventilationは臨床転帰を 改善するか”でした(The SiVent Randomized Clinical Trial  JAMA 2023;330(20):1982-90)。

 

読者のみなさまは、Sigh ventilationをご存じでしょうか?

 

“sigh”で調べたところため息という和訳が出てきたので、sigh ventilationは   さながらため息(人工)呼吸といった意味になるでしょうか?

 

ARDSの病態生理学では、不適切に低いPEEPで生じる無気肺から生じるAtelectraumaと肺胞の過膨張から生じるVolutraumaがその機序としてよく知られていますが、肺サーファクトの減少がその発症機序へ関与していることはあまり知られていません。

 

肺サーファクタントは、一定の換気量で人工呼吸を続けていると不活化されて肺胞が虚脱し無気肺(Atelectrauma)からARDSへ至るとされています。

 

Sigh ventilation(PEEPを増やす)を定期的に行うと、II型肺胞上皮細胞が刺激されて肺サーファクタントが増加し、Atelectraumaの予防が期待されています。

 

これまでの複数の先行研究では、ARDSに対する短期間のSigh ventilationが酸素化と肺コンプライアンスを改善し、その安全性も確認されました。

 

今回の研究では、P:人工呼吸管理を要する外傷患者を対象に、I: 通常の人工呼吸管理に加えてSigh ventilationを行った患者を介入群として、C:通常の人工呼吸管理のみを実施した患者を対照群として、O: Ventilator free daysを主要  アウトカムと設定されました。

 

本研究は、米国国防総省の資金提供の下、米国15施設の外傷センターで      2016年4月~2022年9月に行われた多施設非盲検無作為化試験です。

 

外傷で入院した患者のうちARDSの危険因子(①外傷性脳損傷、②1カ所以上の長管骨骨折、③ショック、④肺挫傷、⑤治療開始後24時間以内に血液製剤を6単位以上投与)のいずれかを認めた患者が対象となりました。

 

対象患者は、人工呼吸管理開始後24時間以内に介入が行われ、介入群ではSigh ventilationとして6分間に1回、5秒間のSigh volume(プラトー圧が35cmH2Oになる換気量)が呼吸療法士の監視下で行われました。

 

サンプルサイズは、先行研究結果から当初916名と設定しましたが、初回中間解析から544名に下方修正され、主要アウトカムであるVentilator free daysはWilcoxonの順位和検定で解析しました。

 

結果は、5753名の組み入れ患者のうち524名(介入群261名と対照群263名)が割付けられ、最終的に介入群259名と対照群261名が主要解析へ組み込まれました。

 

結果は、対象患者の背景に両群間の差はなく、平均年齢は44歳、75%が男性、リスク因子は60%が頭部外傷、41%が肺挫傷、36%が輸血、31%がショック、組み入れ時のP/Fは350、初回胸部CTで70%は異常所見なし、でした。

 

主要アウトカムであるVentilator free daysは介入群 vs 対照群で18.4 (IQR 7.0-25.2) vs 16.1 (IQR 1.1-24.4) [P=0.08]で両群間に有意差を認めませんでした。

 

副次アウトカムでは、介入群で28日死亡率が低い傾向 [介入群 vs 対照群: 11.6% vs 17.6%; OR: 0.61(95%CI, 0.37-1.00); P=0.05]だったものの、それ以外のICU free daysや死亡までの日数、合併症、死因、有害事象のアウトカムは両群間に有意差を認めず、サブグループ解析でも有意差を認めませんでした。

 

筆者らは、Discussionで主要アウトカムであるVentilator free daysに有意差が出なかった理由の一つとして統計学的解析で競合リスク法ではなく、従来のWilcoxon順位和検定を用いたことを挙げました。

 

また、Sigh ventilationのメリットとしてrecruit maneuverと比較し高い気道内圧の時間が少ないことで低血圧(や気胸などの肺損傷)を減らせることを指摘しました。

 

本研究の限界は、動脈血液ガスや画像検査の評価項目としていないこと、外傷患者に限定しておりARDS発症リスクも低い患者群であったこと、盲検化しておらず主要アウトカムの因子となる抜管タイミングは医療者に左右されること、などでした。

 

以上の結果から本研究の結論は、“ARDS 発症危険因子を有する人工呼吸を要する外傷患者においてSigh ventilation を追加しても VFDs は有意に増加しなかった副次アウトカムの結果からは忍容性が高く、臨床転帰を改善する可能性は示唆された”でした。

本研究の内的妥当性は、抜管を決定する医療者が非盲検化されているために情報バイアスがあること、研究資金の提供が途中で打ち切られて目標対象数へ達しなかったこと

、外的妥当性としては日本人を含むアジア人種が1%と少なく性別差も異なること、人工呼吸器が限られていること、などから内的にも外的にも妥当性に疑問が残る研究でした。

 

今回発表してくれた上石先生は、見た目の通り(?)ガッツのあるラガーマンで、ハキハキとした明るい性格と仕事へ熱心に取り組む姿から、スタッフにも愛されているフェローです。

 

今後も、One for all , All for oneの精神で若い力を存分に発揮し、ICUを盛り上げていってください!


ローテーターの声 #8

2023-12-04 22:58:48 | 日記

飯塚です。

今回は11月に1ヶ月間ローテしてくれた古城先生からです。


ジュニアレジデント2年目の古城と申します。1ヶ月間ICUをローテーションさせていただきました。

私は他院の所属なのですが、墨東病院のICUは非常に教育的で勉強になると前評判が良かったため、期待を膨らませて研修に臨みました。1ヶ月回ってみた感想は…期待以上でした!

私の拙いアセスメントにも一つ一つ丁寧にフィードバックいただき、間違えてるところはしっかり根拠を持って指導してくれて、同意してくれるところはいいねぇ!と持ち上げてくださいました。先生同士でも活発に議論を交わしていて、その様子を見ているローテーターも触発されてどんどんと学ぶ意欲が湧いてきて、非常に良い相乗効果を生んでいると感じました。

また、手技に関しても色々と経験させていただきました。苦手だったAラインは、先生方の指導のおかげで得意分野にまでなりました。その他、CV挿入や挿管、気切などなど普段なかなか経験できない手技もたった1ヶ月で沢山行うことができました。

ICUでのローテーションは私の研修生活の中でも大きく成長できた1ヶ月でした。諸先生方、ご指導いただき本当にありがとうござました。また、どこかでご一緒できることを切に願っております。


古城先生は漫画の主人公のような名前に、端整なルックスも相まってスタッフたちからも評判でした。

沖縄?とか思っていたら意外と埼玉県出身と言われて、急に親近感を抱いたのが懐かしいです笑

温厚で物静かな先生が多い血液内科志望ながらも、グイグイガツガツと症例や手技に貪欲な姿勢は、こちらも指導や教育をしたくなる模範的なローテーターの姿でした。

翌日から自分の病院に戻るにも関わらず最終日に遅くまで残ってカルテを書いていたのも、彼らしいエピソードだと思います。

何でも後期研修に進んでからも再度希望出して当科を改めてローテしてくれる予定とのこと・・・

実は今年も1人いたのですが、そう言って頂けるととても嬉しいですね。

1ヶ月だけでしたが手技もトークも飛躍的に伸びている古城先生の今後が楽しみで仕方ありません。

また来年度?もお待ちしています。

1ヶ月間、お疲れ様でした!


ローテーターの声 #7

2023-12-02 14:20:17 | 日記

飯塚です。

今回は1ヶ月間ローテしてくれた東野先生からのコメントです。


1ヶ月間ありがとうございました。

集中治療を学ぶチャンスは最後だと思い選択しましたが、カンファは呪文だし、考えるの苦手だし、手技はやりたいけど得意ではないし、と心配だらけでした。呪文は最後までなくなりはしなかったですが少し減り、考えるのは苦手で嫌いでしたが考えてみようと思わせてくださる先生方のご指導のおかげで今までで一番たくさん考えました。どんな質問でもわかりやすく、1をきいたら100くらい教えていただいて、日々嬉しかったです。

せっかく教えていただいたこと、特に学んだと自分では思っているvolume評価の考え方と肺保護換気などをきれいさっぱり忘れてしまわないように頑張ります。

1ヶ月間本当にありがとうございました。


東野先生はいつも熱心で細かな点に疑問を持ち、フェローに向かってよく質問してくれました。

最後に担当した症例でのプレゼンをお願いしましたが、「permissive hypercapnea管理後の高HCO3-血症への介入意義」という腰の入ったclinical questionを投げかけてくれました。

一緒に該当文献を調べましたが、彼女は自主的にreviewやcase reportを読み漁り、指導するこちらも学びが多かったです。

整形外科志望で利尿や血圧管理に興味があったとのことで、心拍出量や体血管抵抗の話は何度も何度も議論しましたね。

ぜひ今後の担当症例でも生かして頂ければと思います。

東野先生、1ヶ月間お疲れ様でした!