内容をかいつまんでいうとこんな感じ。
ランニング愛好家の著者はなぜランニングをするとすぐ故障してしまうか考える。著者自身がかなりの大柄なのでそのせいかと思っていたが、体重の増減・競技歴の長短に関わらず一定の割合で故障は起きている。色々と調べていく内に過度に保護されたランニングシューズが原因だという結論に達する。厳密に言うと、ヒールの厚いシューズで踵から着地する「フォアフット・ランニング」が良くないことに気付く。
人は裸足で歩いたり、走ったりするときに踵から着地することはしない。つまり本来すべきでないことをすることによって故障しているというわけだ。実際、現在引き起こされているランニングによる膝の故障はランニングシューズ登場以前には見あたらなかったというデータすらある。
そこで素足で走ることの有用性を確かめようと調べていくと、現存する最強の長距離走民族タラウマラ族の存在に辿り着く。彼らは最低限保護された独自の靴で山々を駆け巡る幻の民族だ。しかも彼らはランニング障害には無縁で、若者も老人も等しく駆け巡ることが出来る。
著者はその秘密を探ろうと幻のタラウマラ族に接触すべく旅に出る……
と、まぁこんな感じで物語は始まる。この本がきっかけでビブラムのファイブフィンガーシューズを始めとするベアフット・ランニング・ブームが起きているのはご承知の通りだ。
実際、この本にはいかにランニング・シューズが膝に悪く、ベアフットランニングが良いかを説いている。ランニングシューズの祖ナイキに対しては悪とまで言い切っているほどだ。
しかし、だ。この本の神髄はそんなところにはない。この本は21世紀に現存する長距離走に特化したタラウマラ族と、その民族に認められたよそ者のカバーヨ・ブランコ。さらにそのタラウマラ族に強いシンパシーを感じ共に走ることを願う現役最強トレイルランナースコット・ジュレク。その他大勢の登場人物が絡み合って、まるで一大叙事詩のような壮大な物語を作り上げているのだ。この英雄譚はあまりに出来すぎていて作り話にさえ思えてくるくらいだ。
そして何より大事なのは、この本を読み終わった後に、無性に走りたくなっているということだ。これこそがこの本の素晴らしいところだとオレは考える。作中に「人類は長距離走に特化すべく進化してきた」という説が展開されるが、その真偽云々は問題ではなく、そう信じ込ませることによって人々に走る活力を与えているところがスゴイ。文章でも映像でも何でもそうだが、優れた媒体というのはそれを経験することによって何かをやってやろうと思わせるものだと考えている。全てがそうだとはいわないが、そういった一面は存在するとオレは信じている。
そんなわけでランニング愛好者、もしくはランニングに少しでも興味を持っている人はこの本を一読することオススメする。もちろん好き嫌いはあるだろうが、読んでみる価値があるってことを保証するよって話(・∀・)
BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族” クリストファー・マクドゥーガル 近藤 隆文 日本放送出版協会 2010-02-23 売り上げランキング : 2146 Amazonで詳しく見る |