「ブラッドマネー博士-」 意図された世界の物語

「ブラッドマネー博士」 “Dr. Bloodmoney” 1965年作品
阿部重夫・阿部啓子訳 サンリオSF文庫 1987年初版

「ドクター・ブラッドマネー -博士の血の贖い」
佐藤龍雄訳 創元SF文庫 2005年初版
2005年の創元SF文庫版の巻末解説でも
ディック作品にはめずらしい核戦争後の混乱を
幻惑的、幻想が跳梁する悪夢として描かずリアルに描いている
そういう点で異色と言える作品だと書いている
この世界では核実験の失敗による地球的規模の放射能汚染と
核戦争による滅亡の危機という二つの災厄に人類は見舞われる
もちろん後者による被害こそ甚大で
人々は一夜にしてローテクな世界で生き延びていかなければならなくなる
この非日常的な破壊を受けた世界で
しかし、人々は対処して生き延びようとしている
サンリオ版の巻末に載っているディックのこの作品の評価の中で
そうした地道に生きている人々への期待と共感を語っている
ただ、彼の存命中に最終核戦争は勃発せず
かれは「予言」がはずれたことを詫びている
超能力者、突然変異というプロットは
ディックの他の作品にも数多く使われているが
アトミックシンドロームの二つの側面
輝かしい未来のエネルギーと死の恐怖を運ぶ放射能源
その時代の「常識」的な反応、簡単に言って時代背景を率直に投影している
ディックの作品にしては「素直」に書かれているのかもしれない
サンリオ版は1987年発行で、その頃でも差別的用語などへの配慮は
かなり求められていたと思うのだが
サンリオ版を読むと障害者の状態に対する表現がかなり直接的で
今読み直すと、読者の方があたふたとしてしまう
ただ、書き直されていない言葉の方がディック原作どおりなのだと思う
こうした表現の問題は物語の迫真性をスポイルすることもあるだろう
邦訳作品は訳される時代によって作品全体の印象をも変えてしまうようなことがあるのだなと
原作でディックを読みこなす語学力があったらと思う
秀作とする評価も判るが、個人的な好みでは普通・・

「ブラッドマネー博士」 “Dr. Bloodmoney” 1965年作品
阿部重夫・阿部啓子訳 サンリオSF文庫 1987年初版

「ドクター・ブラッドマネー -博士の血の贖い」
佐藤龍雄訳 創元SF文庫 2005年初版
2005年の創元SF文庫版の巻末解説でも
ディック作品にはめずらしい核戦争後の混乱を
幻惑的、幻想が跳梁する悪夢として描かずリアルに描いている
そういう点で異色と言える作品だと書いている
この世界では核実験の失敗による地球的規模の放射能汚染と
核戦争による滅亡の危機という二つの災厄に人類は見舞われる
もちろん後者による被害こそ甚大で
人々は一夜にしてローテクな世界で生き延びていかなければならなくなる
この非日常的な破壊を受けた世界で
しかし、人々は対処して生き延びようとしている
サンリオ版の巻末に載っているディックのこの作品の評価の中で
そうした地道に生きている人々への期待と共感を語っている
ただ、彼の存命中に最終核戦争は勃発せず
かれは「予言」がはずれたことを詫びている
超能力者、突然変異というプロットは
ディックの他の作品にも数多く使われているが
アトミックシンドロームの二つの側面
輝かしい未来のエネルギーと死の恐怖を運ぶ放射能源
その時代の「常識」的な反応、簡単に言って時代背景を率直に投影している
ディックの作品にしては「素直」に書かれているのかもしれない
サンリオ版は1987年発行で、その頃でも差別的用語などへの配慮は
かなり求められていたと思うのだが
サンリオ版を読むと障害者の状態に対する表現がかなり直接的で
今読み直すと、読者の方があたふたとしてしまう
ただ、書き直されていない言葉の方がディック原作どおりなのだと思う
こうした表現の問題は物語の迫真性をスポイルすることもあるだろう
邦訳作品は訳される時代によって作品全体の印象をも変えてしまうようなことがあるのだなと
原作でディックを読みこなす語学力があったらと思う

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