ずいぶん前、車で三陸を旅した事があった。なるべく海岸線を行こうと仙台から松島を越え北上した。いつものように行き先は決めていなかった。石巻、雄勝、志津川(現南三陸町)、歌津、本吉、気仙沼、陸前高田、大船渡、釜石、そして鵜住居という町で北上をやめた。最後の町鵜住居、ウノスマイと読む。何ともいい名前ではないか。深い湾、川があり海があり、海のそばにキャンプ場があった。ここを最終地点と決めた。しかし、あまりに小さい町で食材の調達にちょっと苦労した記憶がある。
海に沿って北上と言ったが、海岸線に沿って走るとすごい距離になるし、道がないところもある。海岸をトレースする事はすぐにあきらめ、国道を走ることにした。
昔、北欧を旅した事がある。1日走ってもフィヨルドの対岸にしか行けなかったが、このリアス式海岸もそれほど規模は大きくないがよく似ている。湾が奥まったところに集落があり風景としては美しいところだ。
なぜこんな旅に出たかというと、東北地方には下流部でヤマメが釣れるという川がある。つまり海のそばで渓流魚が釣れるという事だ。おまけに場所によっては汽水域で大好きなハゼが釣れるかもしれない。僕は肉より魚派。この条件を満たしてくれるのが東北三陸だった。
このときご飯を食べたり、飲み物を買ったり、ガソリンを入れたり、ホタテを買ったり、キャンプをしたり、数日間訪れた町が3月11日を境になくなってしまった。
あのとき、鵜住居の風景がまだ眼に焼き付いている。
(写真と記事の内容は関係ありません)