「南京の真実」(ラーベ著:講談社)より
2月9日
昨日の午後、日本大使館から軍事演奏会に招待された。ローゼンはすげなく断ったが、我が委員会のメンバーは、いついかなる時もいやな顔は見せない!我々はプログラムを受け取った。
朝(あした)には日本軍に惨殺された中国人のもとに駆けつけ、夕べにはその同じ軍隊による音楽を楽しめというのは、思えば殺生な話だ。だが、東洋では、偽善が大手を振ってまかり通るこの世界では、いちいち目くじらを立てていても始まらない。面子(メンツ)なんかとっくの昔に棄てている。かくして、かの有名な東アジア式礼儀作法にのっとって、委員会のメンバーはほぼ全員がお目見えとなった!シャルフェンベルグにヒュルター、アリソン、ジェフェリーの駆けつけた。しかもジェフェリーとかわいらしいゲイシャを真ん中に、「ドウメイ」のために記念写真までとるサービスぶりだ。
福井氏から今朝日本大使館に来るよう言われた。上海まで往復する件だと言う。多分、上海に行っても日本の悪口を言わないでくれ、ともう一度念を押すつもりだろう。もし、私が反発すると思っているとしたら、とんだ見当違いだ。けれどもその心配はあるまい。彼は私という人間を知っている。日本人のようにこの私も、心にもないことを言って相手を喜ばせるだろうということも。あとで私がそれに責任を感じるかどうかはまた別の話だ。その辺も承知の上だろう。会社の命令を考えれば、もはや南京に戻ることはありえない。とはいえ、とりあえず戻る許可も取っておきたい。
いよいよ本格的に安全区が解体される!張は、私が休暇でドイツへ帰るので木箱がいると言うと、困ったように首を振った。
「木ですか?棺を作る木さえ満足にないんですよ」
それでもさがしてみるといってくれた。・・・・・・・
「南京事件の日々」(ヴォートリン著:大月書店)より
2月9日 水曜日
午前中、昨日キャンパスで発生した事件についてのアメリカ大使館宛報告書を作成した。午後、それを持って行ったが、それはともかく、その直前に老邵がやってきて、兵士たちが彼の家にやってきて、いつにもまして粗暴な振る舞いをしたことを報告した。彼は、また引っ越してきてもよいかどうかを知りたかったのだ。午前中、李(音訳)さんとフォースター氏がやってきて長時間いた。フォースター氏は、上海からの2月4日付けの郵便物と、それに加えて、私たちが何よりもありがたがる果物も持ってきてくれた。李さんは、収容所の所長として経験した苦労を私たちに語った。それらは、妙に身近なことのように思われた。
私たちはヘレン・ボートンのことで大変心を痛めているのだが、彼女についての新たな情報を大使館で得ることはできなかった。濾州についての情報は何も得られなかった。私は、あの内陸大平原の略奪ー家屋の略奪や焼き払い、広範囲に行われた男性の殺害、老若を問わない女性の強姦ーを想像することができる。何と、これが友情と協力を得るための戦争であるとは。
アメリカ砲艦パナイ号から回収した貴重品に初めて目を通した。品物はいささかみじめな外見を呈していたと言わざるを得ないが、何週間も長江の水に浸かっていたことを考えれば、おそらく予想よりもよい状態だった。紙幣、その他の書類はすっかり乾いていて、いまでも紙幣は使用が可能だ。アリソンは落胆している様子だった。というのも、南京では事態の改善が遅々として進まないように見えるからだ。
同盟通信社支局長の松本(重治)が数分間(の面会)を求めてきた。彼は飛行機で上海に行くつもりでいるので、長居はできなかったのだ。私としては、彼と知り合いになりたかったのだが。
午後5時ごろ大使館から帰宅する途中で2つの女性グループに出会った。最初のグループは、2人の娘を連れて戻ってきた母親だ。母親が言うには、彼女たちは2日前に帰宅したものの、耐えられなかったそうだ。兵士たちが頻繁にやってきては若い女性を物色したので、いつも隠れていなければならなかったそうだ。どのくらいの期間になるかはわからないが、当然のことながら、私たちとしては彼女たちを受け入れることになる。別の1人は私をひどく悲しませ、落胆させた。彼女は、南京のある大きな学校でかつて教師をしていた人の妻で、学者一家の出身だった。彼女たちは災難に見舞われないように農村に避難したものの、全財産を使い果たしてしまい、状況がどうであれ南京に戻るしかないと決断したのだ。帰りの旅は何と悲しい物語だったことか。14歳の娘と、同じく14歳の姪は、兵士を避けるために靴も靴下も脱いで原野を歩いた。だが、それにもかかわらず、城門を入ろうとした時に姪は3度、娘は1度強姦された。14歳の少女だというのに。時間の点に関しては母親の頭は混乱していた。それほど絶え間なく苦難が続いたのだ。母親は、キャンパスに入れてほしいとは言わなかった。自分は入ることができなくても構わないが、女の子2人が入ることを許可してほしいと懇願した。金陵女子学院の校門は再び開けられた。彼女たちのためにもっと役に立てればよいのだが。
「Imagine9」【合同出版】より
想像してごらん、
おたがいに戦争しないと
約束した世界を。
Imagine,
A world that promises
not to fight wars
with each other.
戦争して平和を取り戻すんだという意見があります。
でも、イラクを見てください。ブッシュ大統領はサダム・フセインを倒すといって実行しましたが、平和にすることはできませんでした。戦争が起きると、もっと多くの人が犠牲になるだけなのです。暴力や武力では平和はつくれないことを、今のイラクは証明しています。(ケニア/男性)
第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。