「南京の真実」(ラーベ著:講談社)より
2月15日
昨晩、龍と周の2人がわが家を去った。今日発つという。どうやって家に帰るのかは知らない。計画は打ち明けられなかったし、ことらも聞かなかった。残念ながら我々の友情にはひびが入った。それはともかく、2人が無事に香港に戻れるよう祈る。けれどもまた会いたいとは思わない。
今せっせと荷造りしているところだ。骨が折れる。体の調子があまりよくないのだ。2時間しか眠っていない。多分糖尿病と何か関係があるのだろうが、ま、しかたない!どうにかなる。きっと万事うまくいくさ!
「緑豆問題」はいまだに解決していない。日本軍は無条件で豆を自治委員会に渡せといってきている。さもなければ持ち込んではいけないそうだ。緑豆は鼓楼病院に送られることになっている。ということは、日本は食料品を民間の機関に引き渡すのを阻止しようとしているということだ。アリソン氏がいま説得しようとしている。
たった今聞いたのだが、収容所の責任者たちが連名で上海のジーメンスに電報を打つという。私をここに残すよう頼もうというのだ。全く痛しかゆしだ。
実際の話、かなり神経が参っていて、休暇を取りたくてたまらない。それに、収容所の責任者たちの電報が私の差し金だと思われはしないかと気にかかる。むろん、そんなことはしていないのだが。
家具以外こまごましたものは残らず梱包した。家はがらんとして、殺風景もいいところだ。さしあたって大きな家具は韓に見張ってもらうことにしよう。荷造りしたものも。
委員会の報告には公開できないものがいくるかあるのだが、一番ショックを受けたのは、紅卍字会が埋葬していない死体があと3万もあるということだ。いままで毎日200人も埋葬してきたのに。そのほとんどは下関にある。この数は、下関に殺到したものの、船がなかったために揚子江を渡れなかった最後の中国軍部隊が全滅したということを物語っている。
食べ物が乏しい中で、アメリカ人の友人が次々と送別会を開いてくれるのに感激している。今ミニ・ヴォートリンさんが来て、別れの茶会に招待してくれた。南京が最悪の状態だった昨年12月、女性の難民を400人引き連れて、金陵女子文理学院に避難させた女性だ。あれを見て以来、私はこの人に深い敬意を抱いている。
イギリス大使館のジェフリー氏が今日、2月22日出航の太古公司の蒸気船万通号か、又は2日後のイギリスの砲艦エイフィスで上海に行けるよう、イギリス海軍に頼んでくれると言った。しかも、日本大使館が認めた使用人なら一緒に乗せてくれるというのだ。
「南京事件の日々」(ヴォートリン著:大月書店)より
2月15日 火曜日
春の小鳥たちがやってきた。私の部屋では「迎春花」が開花しかけている。
今朝は避難民たちに新聞や雑誌を図書館の屋根裏へ戻してもらっている。屋根裏をきれいに片付けると言うあの仕事はすべて無駄だったのだ。屋根裏を戻すのは、新聞や雑誌で前を塞がれている本箱を利用できるようにする必要があるからだ。後刻、李さんと私は、より有効な屎尿処理方法を考え出そうと、中央棟の裏手で一時間ほど過ごした。壕が屎尿で次々にいっぱいになっている。どこもかしこも屎尿だらけだ。それは、私たちを悩ます果てしのない問題となっているが、みなの話では、ここの収容所はほかの収容所よりもこの問題をうまく解決している、と言うのだ。すぐに石灰を手に入れなければ、私たちはみな、夏が終わるまでに病気であの世に行っているだろう。・・・・・・
南京防衛のためにどのくらいの数の中国軍将兵が犠牲になったか知りたいところだ。下関の周辺でおよそ3万人が殺されたと紅卍字会が見積もっているとの情報があり、また、今日の午後、燕子磯で「何万人もの兵士」が退路を塞がれてしまったー渡河しようにも船がなかったーと言う別の情報を聞いた。何とかわいそうに。
2,3週間前に書いたことだが、たくさんの露店や喫茶コーナーや飲食コーナーが、雨後のたけのこのようにほとんど一夜のうちに上海路の両側に出現した。今日それらは同じように姿を消そうとしている。というのも、それらは、夜までにたたまなければ取り壊されるとの命令が出たからだ。お人好しの連中は、店をたたんで持ち去ろうとしているところだ。幸福人茶館が消えていくのを目にした。これらの店で売られている品物はほとんどが盗品であり、私たちの中には、安全区内での盗品販売は許可すべきではなかったと考える人もいた。道路をきれいにするために1,2ヶ月の間市の衛生局長になり、十分な数の苦力を指揮下に置きたいものだ。
元南京郵便局長のリッチー氏が南京に戻っていて、郵便業務を復活しようとしているそうだ。私たちが外の世界とつながっているのは、砲艦を介してだけである。
メリーと私は、木曜日にラーベ氏の送別ティーパーティを催すつもりだ。私の居間には8人しか入らないので、客は5人しか呼べないし、また、出したいと思っている茶菓については、何にもまして必要な材料がないのだが。
「Imagine9」【合同出版】より
想像してごらん、
9条がゆきわたった世界を。
Imagine,
A world filled with
Article 9.
憲法9条は、日本という「国」のものではありません。
日本に住んでいる「人々」、つまりみなさん自身のものです。
そしてそれは、日本国民にとってだけではなく、すべての人類にとって重要なのです。
(アメリカ/男性)
第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
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