「南京の真実」(ラーベ著:講談社)より
2月22日
羅福祥氏は空軍将校だ。本名を汪漢萬といい、軍官道徳修養教会の汪上校とは兄弟だ。汪氏は韓の力添えで上海行きの旅券を手に入れることができたので、私の使用人だといってビー号に乗せるつもりだ。南京陥落以来、わが家に隠れていたが、これでやっと安泰だ。日本機を何機も撃ち落したが、南京が日本軍に占領された時は体の具合を悪くしていた。
もはや揚子江を渡ることができず、逃げられなかった。支流を泳いでいくとき、友人を一人失い、やっとのことで城壁をよじ登って安全区に入ることができたのだ。
午前中、私は荷造りにかかりきりだった。「老百姓」たちはあれからまたいくども板を運んできてくれた。きっとどこからかくすねてきたのだろう。建設現場から直接持ってきたのもあり、セメントがついていた。日本大使館から、万通号で荷物を上海へ送る許可がでた。あとは積み込むだけだ。これは韓やアメリカ人の友人たちに頼まなければならない。万通号が南京につく頃には、私がもういないからだ。
13時
ローゼン宅で昼食、ミルズ、ベイツ、ヴォートリン、マギー、フォースター、ヒュルター、シャルフェンベルグが同席。
20時
ローゼンと水入らずの夕食。ユダヤ人の血を引いているための悩みをいろいろ打ち明けられた。
夜10時のラジオニュース。ドイツは満州国を承認した。したがって、トラウトマン大使は国民政府に対して難しい立場に立たされることになった。ラジオではまだそれについて何も言っていなかったが、大使が辞任するのではないかと心配だ。(注・事実トラウトマンはその後しばらくして解任された)。ここにいて本国の事情をうかがい知るのはとても難しい。だが、正しかろうが、間違っていようが、祖国は祖国だ!
「南京事件の日々」(ヴォートリン著:大月書店)より
2月22日 火曜日
ワシントンの誕生日だが、今日はアメリカ大使館でのレセプションはなかった。
午前いっぱいと午後の数時間をかけて、上海の教授たちに送る図書を捜し、それらを梱包して大使館へ持って行った。明日イギリス砲艦クリケットが出航する。まさしく倦むことなく、見たところ愚痴を言うこともなく、大使館は、私たちのために幾包みもの図書や食料や郵便物を送ってくれる。事実、ふねが出ると聞くたびに避難民たちはたくさんの手紙を持ってくる。いつになったら中国人が上海へ行けるようになるのか私たちにはわからない。大勢の人が南京からの脱出を切望している。脱出したのはわずか2名だけで、それも大変な額の費用を使ってーある金持ちは1500ドルを支払ってー脱出したと聞いている。
ローゼン博士宅でのラーベ氏の送別昼食会に出席した。再び正常の生活に戻りつつあるのは何と嬉しいことだろう。ローゼン博士はまさしく忌憚なく日本の役人をー武官であれ文官であれー非難しているが、にもかかわらず、全くおおっぴらに日本製商品を買っている。日本製商品の不買が私の数少ない抗議方法の一つであり、今後も私は買わないだろう。市内にはたくさんの日本人商店が開店しているが、しかし、それらは中国人のための店ではなく、日本人だけのための店だそうだ。
「Imagine9」【合同出版】より
おたがいに戦争しないと
約束した世界
「相手が攻めてくるから、準備しなければならない」
軍隊は、いつもそう言って大きくなってきました。でも、こちらが準備することで、相手はもっと不安に感じ、さらに軍備を増やしていきます。その結果、安全になるどころか、互いに危険がどんどん増えていきます。
このような競争や衝突を避けるため、国々は「お互いに攻めない」という約束を結ぶ事ができます。
とくに、地域の中でこのような取り決めを行っているところは多く、ヨーロッパには「欧州安全保障・協力機構(OSCE)」が、東南アジアには「東南アジア諸国連合(ASEAN)」が、アフリカには「アフリカ聯合(AU)」が地域の平和のための枠組みとして存在します。
日本を取り囲む東北アジア地域には、このような枠組みはありません。朝鮮半島は南と北に分断されており、中国と台湾は軍事的ににらみ合っています。日本では多くの人が「北朝鮮が怖い」と感じていますが、逆に朝鮮半島や中国の人たちの間では「日本の軍事化が怖い」という感情が高まっています。
NGOは、「東北アジア地域に平和メカニズムをつくろう」と提案しています。
その一つのアイデアは、東北アジアに「非核地帯」をつくることです。
日本や韓国、北朝鮮は核を持たないことを誓い、一方でアメリカ、中国、ロシアなどの核保有国はこれらの国に「核による攻撃や脅しをしない」という法的義務を負うような条約をつくるのです。すでにこのような非核地帯条約は南半球のほとんどにできており、最近では中央アジアにもできました。
また、日本とロシアの間で争いになっている「北方領土」周辺に平和地帯をつくるとか、中国と台湾それぞれが軍備を減らし平和交流を増やすといった提案がなされています。
第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。