「南京事件」(笠原著:岩波新書)より
南京事件の全貌
犠牲者の数について3
【日本軍が虐殺した中国軍民の数】
日中戦争は、戦時国際法(戦争法)として国際慣習法が条文化されたハーグ陸戦条約に拘束されていた。同条約は、国家間の戦争を合法としながらも、国際人道法の理念からその惨禍をできるだけ軽減するために、直接の戦闘外におかれたものの苦痛や殺傷を防止しようとしたものだった(藤田久一『戦争犯罪とは何か』、同『新版・国際人道法』参照)。そのために、戦争の手段と方法が規制され、非戦闘員である文民および非軍事目標への攻撃を禁止し、さらに戦闘員を人道法的に保護するために、直接の戦闘外におかれた捕虜、投降兵、敗残兵などの殺傷も禁じられた。捕虜についてはその保護と待遇改善をいっそう明確化した「捕虜の待遇に関する条約」(ジュネーブ条約)が1929年に締結されて、戦時国際法として存在した(日本は調印したが、批准はしなかった。しかし、欧米に対しては「同条約の規定を準用する」と表明した)。
ハーグ陸戦条約は「第23条[害敵手段、攻囲及び砲撃の禁止事項] ロ、敵国または敵軍に属する者を背信の行為をもって殺傷すること ハ、兵器を捨てまたは自衛の手段尽きて降を乞える敵を殺傷すること 二、助命せざることを宣言すること」と、「害敵手段」を規制していた。これは、直接戦闘外におかれた兵士を保護するための規定である。12月13日早朝に南京城は陥落し、南京攻略戦の直接の戦闘は決着がつき、南京防衛軍も完全に崩壊してしまっていた。したがってその後の中国兵は、戦闘員を人道的に保護するために、投降を勧告し、捕虜として収容すべき存在だったのである。日本軍が徹底した殲滅戦(せんめつせん)を強行したために、投降兵、敗残兵を殺戮したのは、同条約に違反する不法行為であり、虐殺行為であった。また、日本軍は、武器を捨て軍服を脱いで民間服に着替えて難民区や居住区に潜伏した中国兵を「便衣兵」として連行、処刑したが、南京には本来の「便衣隊」「便衣兵」は存在しなかった。
「便衣兵」を処刑するにはそうと認定する軍事裁判の手続きが必要であったから、日本軍の「便衣兵狩り」による集団処刑は、交戦法規に違反した虐殺行為であったのである(吉田裕「15年戦争史研究と戦争責任問題」)。
現在公刊されている日本軍側の資料から、南京攻略戦に参加した各師団がどのくらい中国兵および中国兵と見なされた民間人を、捕虜・投降兵・敗残兵・「便衣兵」として殺戮・処刑したかの累計をこころみたのが表1である。(割愛させていただく)第9師団・第114師団・第6師団の各部隊の戦闘詳報や陣中日記の公開が特に遅れているが、もしも日本軍側の全連隊の戦闘詳報がそろえば、捕虜、敗残兵の被虐殺者数(ここには民間人の男子も含まれている)の総数がかなり明らかになることがわかるだろう。
もっとも、戦闘詳報の記録は一般に戦果を多く報告する傾向にあるから、この数字はあくまでも概数として扱うほかはない。それでも、( )をつけなかった虐殺者数は8万人以上になろう。可能性のあった捕虜のほぼ全員殺害を想定すれば、10万人以上になる。
私は、総数15万人の防衛軍のうち、約4万人が南京を脱出して再結集し、約2万人が戦闘中に死傷、約1万人が撤退中に逃亡ないし行方不明となり、残り8万余人が捕虜・投降兵・敗残兵の状態で虐殺されたと推定する(「南京防衛戦と中国軍」)。
「この事実を・・・・」(「南京大虐殺」生存者証言集:侵華日軍南京大遇難同胞紀念館/編
加藤 実/訳)
1、日本軍の狂暴な集団的虐殺
燕子磯、草鞋峡、煤炭港、幕府山一帯での集団虐殺
郭国強(男、68歳)の証言
1936年に、私は18歳で「中央軍」に加わり、88師で軍務についていました。そのころ日本軍が上海を攻めていて、我が師団は上海で抵抗していました。負けてから、江蘇の句容へ行って又日本軍と一戦を交え、それからは壊滅して軍をなさなくなりました。
1937年の12月に、私は2,3百人の「中央軍」と平服を着て、南京の燕子磯三台洞の近くまで逃げてきました。日本軍が燕子磯の長江沿いの浅瀬でやった大虐殺の情景を目撃しました。あの時日本軍は機銃掃射を一昼夜続け、2万人以上の既に武装解除していた「中央軍」の命を奪ったのです。私は三台洞に隠れていて、日本軍に発見されたのですが、山を切り崩している農民だと偽り、山を爆破する道具を持ち出してきて、やっとのことで死を免れたのでした。
それから、私は隙を見て逃げ出し八卦洲の下○村まで落ち延びて、そこに住み着くようになったのです。(潘可栄と趙金華が記録)
「Imagine9」【合同出版】より
想像してごらん、
武器を使わせない世界を。
Imagine,
A world that doesn’t
let weapons be used.
憲法9条はどんな軍隊より、どんな核兵器よりも大きな力をもっています。なぜなら、核兵器はけっして平和をもたらさないからです。
それはこれまでの歴史が証明しています。
核兵器はこれまでに何十万人もの人々の命を奪い、国を破壊してきましたが、世界はまだ暴力と戦争だらけです。(アメリカ/男性)
第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。