こんな教科書を使って、教育する。歴史の事実と反する内容でいいのか?横浜市の教科書採択!!
朝日新聞(09.8.4夕刊)の記事を転載します。
「つくる会」主導の歴史教科書、横浜市の8区で採択
2009年8月4日13時24分
横浜市教育委員会(今田忠彦委員長、6人)は4日、来春から市内全18区のうち8区の市立中学校で使う歴史教科書について、「新しい歴史教科書をつくる会」の主導で編集された自由社版を採択することを決めた。同市の公立中で「つくる会」主導の教科書が採択されるのは初めて。全145の市立中のうち計71校(在校生徒数約3万9千人)が対象になる。
「つくる会」主導の歴史教科書をめぐっては、路線対立などによる分裂により、当初からの扶桑社版と、今春検定に合格した自由社版という、ほぼ同じ内容の二つが並立する状態になっている。現在、「つくる会」主導の教科書を採択しているのは、東京都杉並区、東京都(都立校のみ)などの5教委で、いずれも扶桑社版。今回の横浜市8区はこれまでで最大の採択規模になる。
この日の教育委員会では、自由社版について委員から「中身が濃くて、読み物として楽しい」などの意見が出た。市教委の事務局案を踏まえて各委員が投票した結果、港南、旭、金沢、港北、緑、青葉、都筑、瀬谷の計8区で自由社版の歴史教科書が採択された。
今田委員長は「正しい歴史認識に基づく教科書を選びたい。自由社の教科書は内容に深みがあって、例えば日露戦争の記述では愛情を持った表現が多かった」などと評価した。
横浜市の前回05年の採択の際は、当時委員だった今田委員長が1人だけ、扶桑社版について「自国を愛し、繁栄と平和を図る上で効果的」と唱えた経緯がある。委員長を含む教育委員6人は、中田宏・横浜市長が市議会の同意を得て任命する。前回採択時の委員のうち、5人はその後の人事で退いたが、今田氏は残り、06年7月、教育委員長に選ばれた。
これに抗議する声明
【談話】横浜市教育委員会の自由社版歴史教科書採択に対して、断固として抗議し、採択の撤回、採択手続きのやり直しを要求する
俵 義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)
横浜市教育委員会は、本日8月4日、新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)編集の自由社版歴史教科書を市内18採択地区中8地区(港南・旭・金沢・港北・緑・青葉・都築・瀬谷、145校中71校)に採択した。私たちはこの暴挙に怒りを込めて抗議し、採択の撤回・やり直しを要求する。
自由社版歴史教科書は、極めて問題の多い扶桑社版教科書の「複写」教科書であり、ほとんど同じ内容の教科書である。したがって、自由社版は扶桑社版の問題点をそのまま引き継いでいる上、戦争の美化・正当化をいっそう色濃くしている。この教科書は、日本の歴史を天皇中心に描いている。また、日本の植民地支配や侵略戦争を正当化・美化し、日本の戦争の加害や被害をほとんど書いていない。戦争そのものを正当化し、日本国憲法を敵視し、平和や人権をないがしろにしている。歪曲した歴史を子どもたちに刷り込むことによって、子どもたちを「戦争をする国」の忠実な国民に育てることをねらいとするものである。
こんな教科書を使うことになる約13,000人の横浜の中学生は、国際都市横浜の子どもとしてふさわしくない歴史、歪曲した間違った歴史を学ばされ、アジアを蔑視する歴史観を身につけることになりかねない。
さらに自由社版教科書は、きわめて無責任でずさんな編集によってつくられたために、扶桑社版の間違いに加えて、新たな不適切な内容や誤字誤植がたくさある。しかも、文字が小さくルビなどはほとんど読めない、資料の図版などへの斜体文字の多様や色つきの紋様(地紋)の上から印刷するなど趣味的な編集のために読みづらく、教科書としての使用に堪えないものである。こうした内容以前の問題からみても、この教科書で学ばされることになる横浜の子どもたちの学習にとっては重大な問題だといえる。
横浜市教育委員会は、こうした多くの誤りのある教科書を今後さらに2年間、子どもたちに使わせることを決定したわけである。
加えて、「つくる会」は06年に分裂し、扶桑社版教科書の著作権をめぐって裁判で争うなどの醜い抗争をつづけている。子どもや教育そっちのけで争いを続けている無責任な団体が編集した教科書を採択したことは、子どもたちの教育を考えても重大な問題である。
東京都・滋賀県・愛媛県・杉並区・大田原市の教育委員会が、2005年に扶桑社版教科書を採択したことに対して、当該地域はもとより日本各地の市民や諸団体、韓国をはじめアジアの人びとや団体から、多くの抗議や批判が寄せられてきた。さらに、今回の採択にあたっても、横浜市民・神奈川県民をはじめ全国各地から、さらにはアジアから、多くの人びとや団体が、扶桑社版・自由社版を採択しないことを求める要請を多数寄せていた。しかし、横浜市教育委員会はこうした声を完全に無視して、扶桑社版・自由社版の採択を強行した。
今回の採択には不正の疑惑もある。今年3月頃から、横浜市教育委員会の今田忠彦委員長と藤岡信勝「つくる会」会長が何回も会い、今田氏が藤岡氏に自由社版教科書を採択するという内諾を与え、そのことを「市執行部や議会の一部幹部にも報告済み」「『つくる会』の限られた幹部も『今田さんと話が付いている』と話している」という内部情報があった。今回の採択を主導したと思われる今田委員長は、4年前にただ一人扶桑社版を絶賛し、扶桑社版の採択を強く主張していた。同じ「つくる会」教科書でも、扶桑社版ではなく自由社版を採択したというのは、この情報が事実であることを裏付けるものである。これが事実だとすれば、今回の採択は不公正であり、不正なものだといえる。何故なら、「つくる会」はこの教科書を編集しただけではなく、事実上の発行事業者であり、その責任者と事前に打ち合わせを行ったというのは、明らかな不正であり、不公正な採択だといえよう。
この教科書を採択した教育委員はすべて、「つくる会」教科書を支持してきた中田宏横浜市長が任命した委員である。その意味では中田市長の責任も問われかねないといえる。
横浜市の教育に責任を負う教育委員会が、子どもや教育のことを考慮しないで、政治的な判断のみで「つくる会」教科書を採択した“非教育的”で無責任な所業に対し、心からの怒りを禁じえない。私たちはこの暴挙に対し、断固として抗議するとともに、採択の撤回・やり直しを要求するものである。
以上。
子どもと教科書全国ネット21
代表委員:石田米子・尾山宏・小森陽一・高嶋伸欣・田港朝昭・
鶴田敦子・西野瑠美子・藤本義一・山田朗・渡辺和恵
〒102-0072 東京都千代田区飯田橋2-6-1 小宮山ビル201
℡:03-3265-7606 Fax:03-3239-8590
抗議先
とても残念な報告です。
横浜市教育委員会は本日「つくる会」の自由社版歴史教科書を、18地区中8地区で採択しました。
採択した地区は、港南、旭、金沢、港北、緑、青葉、都築、瀬谷です。
横浜の中学校は145校ですが、採択した地区内には71校があります。
採択冊数は、私の概算では約14,000冊くらいだと思います。
この採択を主導したと思われる今田教育委員長は、4年前にただ一人扶桑社版を絶賛し、
扶桑社版の採択を強行に主張していました。
扶桑社ではなく自由社を採択したというのは、2日前から流れた
、藤岡氏と今田氏が何回も会って、自由社版採択について相談し、
今田氏が藤岡氏に内諾を与えた、という情報が正しかったといえます。
本日の教育委員会の詳しい情報などは、傍聴された地元の人から流されるはずです。
この採択に対する抗議先は以下のとおりです。
郵便、FAXの送付先は、
【宛名】横浜市教育委員会委員長 または以下の教育委員
横浜市教育委員長 今田 忠彦
委員長職務代理 小濱 逸郎
教育委員 吉備 カヨ
〃 野木 秀子
〃 中里 順子
教育長 田村 幸久
【住所】〒231-0017横浜市中区港町1-1
【電話・FAX】
(教育委員あて) 教育委員会総務部総務課
電話 045-671-3240
FAX 045-663-5547
(教科書採択担当) 教育委員会小中学校教育課
電話 045-671-3265
FAX 045-664-5499
(公聴担当) 教育委員会教育政策課
電話 045-671-3243
FAX 045-663-3118