このブログ読んで書いてみようかな、と。
実はこの監督、ダリオ・アルジェントは割に好きである。
「ホラーの帝王」と呼ばれてるが、多分彼の最高傑作の映画がこのProfondo Rossoである。日本語で「深紅」と言う意味である。
実は日本公開時、大ヒット作だった「サスペリア」(1977)の続編として公開されて、邦題は「サスペリアPART2」となったが実は関係がない(後にDVDで「サスペリアPART2/紅い深淵」と改題されている)。関係がないどころか、サスペリアはホラーだけどこのProfondo Rossoは実はミステリーである。
この辺はまぁ、映画ファンなら知ってる話だけどね。
この映画、一応ミステリーではあるが、狂ったような劇伴音楽とかギミックの凄さが特徴的な映画で、この辺のB級イタリアン・サスペンス映画を特にジャッロと呼ぶ。
余談だが、YMOの「君に、胸キュン。」と言う曲の歌詞で「イッタッリィア〜の〜映画で〜も〜見てるよ〜おお〜だ〜ね〜♪」ってのがあって、曲の雰囲気からイタリアの映画ってお洒落な映画ばっかりのような印象を受けるが、実際のトコ、マカロニウェスタンやら「最後のジョーズ」やら、このジャッロ等のB級映画の方がむしろ持て囃されてる、ってのがイタリア映画の実態である。わはははは(笑)。
この映画はある意味映画史に残る傑作映画で、と言うのも「映像を用いた」ミステリーとしては確かに最高級のアイディアではあるのだ。
Wikipediaの方でも書かれているが、「重要なものを見ているのにもかかわらず見過ごしている」と言うのがこのミステリー/サスペンスの肝ではあるのだ。しかし、それを主人公が思い出す事がなかなか出来ない。一体それは何だったのだろう、と言うのがこの映画の大きなプロットではあるのだ。
が、一方、ミステリーである筈なのに残虐な殺人シーンであるとか、観客を驚かせる意味不明なギミックにダリオ・アルジェントの手腕が光る。後に「ホラーの帝王」と呼ばれるようになる「映像演出」が光るのだ。と言うか、全般的にそればっかで、元々のコンセプトを無視してるんじゃねーの?と思わせるくらいのアンバランスさがダリオ・アルジェントの真骨頂なのである。
あらすじはWikipediaに譲るが、イタリアにやってきたアメリカ人が事件に巻き込まれる、と言うのは殆どのアルジェント作品に見られる共通のプロットである。
ワンパターンと言うなかれ。マカロニウェスタンに見られるように、実はイタリア映画と言うのは外貨獲得手段なのである。従って、インターナショナルに配給されるのをイタリア映画は重視する。それ故に、主役をアメリカ人/イギリス人俳優にし、また、どうやらイタリア人俳優/女優は要英語となってるらしい。あるいは吹き替えを積極的に行ってるのか(この映画のイタリア語版は明らかにイタリア語で「吹き替えられてる」ので原版は英語である)。
良く、「初めから英語でアニメを作れば?」と言う西洋人がいて、暴論と片付けられてるが、実は彼らの中ではこういう実写映画のパターンが良くある、って事を知ってるので、悪気は全然ないのである。自国で母国語で制作されてる作品ばっかじゃないのだな。特にこのようなエンターテイメント作品だと「英語で初めから作る」と言う作法が顕著ではあるのだ。だから彼らは「日本もそうすればもっと儲かるのに」と単純に思ってるわけだ。繰り返すが悪気は全くない。
マーカス・デリー(マーク): 主人公。アメリカ人ピアニスト。最初の殺人事件の目撃者。「何か重要なモノを見た筈だがそれが何か思い出せない」男。殺人事件の現場にあった筈の「消えた絵」がヒントな筈だがそれが何だか分からない。そして殺人者に狙われてしまう。演じてる俳優はイギリス人のデヴィッド・ヘミングス。
ジャンナ・ブレッチィ: 主人公の相棒を務める女新聞記者。演じてるのはイタリア人女優ダリア・ニコロディで、彼女は一時期、監督のダリオ・アルジェントの妻だった。
カルロ: 主人公の友人だが精神不安定でアル中でしかもホモである。ピアニスト。演者はイタリア人俳優のガブリエレ・ラヴィア。
ヘルガ・ウルマン: 第一の被害者。エスパー(テレパシスト)で、そのため、エスパーとしての講演会の会場に来ていた「犯人」の凶悪な精神を把握してしまい、そのため犯人に殺害されてしまう。設定的にはドイツ人だが、演者はフランス人女優であるマーシャ・メリル。アメリカ留学経験があるようで当然英語はペラペラ。そして非常に美人である(結婚したいくらい・謎)。最初の被害者が美人だ、と言うのがまた何とも良いカンジである。
マーサ: カルロの母ちゃん。息子はあんなんなのに結構明るい。演者はイタリア人女優クララ・カラマイ。
オルガ: 主人公に殺人犯に繋がるヒントを意図せず伝える事となった少女。演者はイタリア人女優(当時は子役)であるニコレッタ・エルミ。
あと、特筆すべきはやっぱり劇伴音楽を作曲・演奏したイタリアのプログレッシブロックバンド、ゴブリンである。ミニマルミュージックを基本とした音楽が本当に素晴らしい。彼らの音楽を味わうだけでもこの映画を観る価値はあると思う。オススメ。