見出し画像

Retro-gaming and so on

iPhoneとPCエンジンGTの相性

ちょっと気になったんでテスト。

ところで、かつてPCエンジンGTと言う携帯ゲーム機はあったが、一方、PCエンジンGT用ゲーム、と言うモノは存在せんかった。
これにはちと説明が必要だろう。
ハドソンとNECが開発したゲーム機、PCエンジンはコア構想、と言う良く分からん企画をぶち上げて、様々な周辺機器をPCエンジンを中心に発展させていく、なんて事を言っておもちゃ屋を困らせていた(笑)。ぶっちゃけ、PCショップではないおもちゃ屋にとっては、在庫管理が極めて七面倒臭い商品企画と展開だったわけだ。
一方、任天堂が1989年に発売したゲームボーイに対抗出来る企画はコア構想にはなかったんだ。任天堂が新しく切り開いた「携帯ゲーム市場」のようなビジネス発想をNECもハドソンも持ち得なかった。
しかしながら、ハドソン + NECはここで面白い案を思いつく。「別種のハードウェアを立ち上げてもサポートするのが大変だ」と言う事を既にCD-ROMを作ってたPCエンジン陣営は良く分かっていた。要はここで「携帯ゲーム機の新規開発」してもそのゲームを作り続けるような余力は任天堂と違って、ない。
そこでやったのは、据え置き機であるPCエンジンのゲームをそのままプレイ出来る携帯ゲーム機の開発、だった。それがPCエンジンGTと言うゲーム機だ。
これは良いアイディアではあるんだ。アイディアだけ、はな(笑)。
いや、21世紀の今だったらまず間違いなく良いアイディアだったろう。ただし、PCエンジンGTが発売された1990年だとかなり早すぎたアイディアだったんだ。要は単に技術が追っついてなかった。
そして技術が追っついてない、って事は価格にモロに反映される。お値段なんと44,800円・・・・・・。PCエンジン本体よか遥かに高額なハードウェアにそうそう大枚叩けるヤツはいない・・・・・・。

そう、この携帯ゲーム機、技術的に明らかにネックだったのはカラー液晶だったんだよ。
ところで、実の事を言うと、カラー液晶は今じゃフツーだが、歴史自体は結構長いんだ。1982年にはカラー液晶と言う技術が実用化されてはいる。



実は時間軸だけ考えてみればカラー液晶、ってのは40年以上の歴史がある技術ではあるんだ。
ところが、一般家庭を考えてみると、今やフツーになった「カラー液晶を用いたテレビ」が普及したのは、無理矢理我々がブラウン管からテレビを買い換えざるを得なくなった2011年以降、だ。割に最近だよな。まだ十数年の歴史しかなく、「実用化」してから随分と経っている、事を良く考えてみると驚きの短さ、なんだ。
もちろんこの前にPCのモニタなんかの方が先にカラー液晶化してる。特にラップトップPCとかガラケーなんかは早かった印象なんだけど、でも良く良く考えてみると、ラップトップもガラケーも登場当時は白黒の液晶だった。覚えてない(笑)?


例えば、最初のラップトップPCではないんだけど、Appleがかつて販売したMacintosh Portable。7.2kgも重量があって「どこがポータブルやねん?」と言うような製品だが、重量はさておき、1989年に発売されたこのマシン、見たら分かるが採用してるのは白黒液晶だ。
もちろん、旧Macの印象は「白黒だ」って人も多いかもしれないけど、1987年にはカラー版Macintosh、Macintosh IIが発売されている。そして、Appleって基本的には「新技術」があれば導入したがる会社なんだよ。そんなAppleが1982年に登場してるカラー液晶を採用するのを見送っている。
要は、「携帯機に採用するには」カラー液晶には大きなデメリットがあった、と言う事に他ならない。
そして、Appleの場合は、その後に出すPowerbook(1991年)でも暫く白黒が基本だったんだ。



他にも、PC-9801を持ち運び出来るようにした98Note(1989年)なんつー製品もあったが、これも白黒だったと覚えてるだろう。

当時、PC-9801向けに出てたゲームの中では、98Noteで動かす事も念頭に入れて、「98Noteモード」として白黒グラフィックを選択可能なモノがあった事を覚えてる人もいることだろう。

ところで、「白黒ラップトップPCの存在」は必ずしも「カラー液晶が高額だったから採用しなかった」を意味しない。
大体、工業製品なんつーモンは出荷台数が増えれば価格は下がっていく。
つまり、先に「カラー液晶を採用したくない」があって、注文が来ないから高額なままだった、って考えた方が正しいんだ。
実はこの「黎明期のラップトップPC」とPCエンジンGTが出た時期はほぼ一致してるし、かつ任天堂がゲームボーイを出した時期とも一致している。

携帯電話もそうだ。NTT docomoのi-modeが登場したのが1999年だったんだけど、この時期、つまりi-modeやDDI(現au)のez-webがブイブイ言ってた頃、でも携帯電話、と言えば液晶は白黒だったんだ。



1999年に同時に富士通がDocomo向けにカラー液晶端末も発売するが、「カラー液晶採用携帯」が普及するにもかなり時間がかかったように覚えてる。やっぱユーザー的には電池が持たないんじゃね?とイマイチカラー液晶携帯の信用度が低かったんだよな。圧倒的に白黒液晶機の方が人気が高かった、ってのがこの頃なんだ。

もう大体分かったと思う。1982年に実用化したカラー液晶、その最大のネックだったのは消費電力だ。要は携帯するにはカラー液晶はエネルギーバカ食いだった、って事なんだ。
と言う事は携帯向けじゃない、って判断なわけだが、NECは自社の98Noteで採用しなかったカラー液晶を、1990年時点でPCエンジンGTでは採用するわけだ。殆ど壮大な実験と言える(※1)。
結果、PCエンジンGTは目の付け所は良かったんだけど、電池の持ちが悪く、携帯できない携帯ゲーム機とならざるを得なかった。アルカリ乾電池6本で3時間しか持たない、って話なんで、携帯ゲーム機としては全く実用性はない。
なお、PCエンジンGTは世界で最も売れなかった携帯ゲーム機第6位となってるらしい(※2)。

とまぁ、表題にはPCエンジンGTとか書いたけど、実質的にはHu-Card採用のPCエンジンのゲームがiPhoneで映えるのかどうか、って話になる。
そこが気になったわけだ。
ちとスクショを並べてみよう。























ん〜〜。
いや、以前から気にはなってた、んだけど・・・・・・。
iPhoneで見てハッキリしたわ。PCエンジンって色味が汚い

上でも書いてきたけど、特にPCエンジンとPCエンジンGTのスペックの差はない。
んで、PCエンジンってパレットの数は512色。最大同時発色数は500に届かないけどそれに近い、っつー、一応スペック上はハイスペックなんだよ。同時期のゲーミングコンソールでは「同時発色数」では群を抜いてる。
一方、例えばライバル機のセガ・メガドライブ。パレット数はPCエンジンの512色と同じ。ただし、同時発色数は64色、とかなり落ちるわけ。
ところが、発色で比べてみるとメガドライブの方がキレイなんだよな。比べてみそ?随分前にKLAXってゲームの比較してたけど、一見、PCエンジンの方が明るいんだけど、色味自体はくすんでるんだよ。
以前から薄々感じてはいたんだけど、PCエンジンは発色が良くない。iPhoneで見てハッキリしたわ。
何だろね、ゲームデザイナーのセンスがアレなのか、元々ハードウェアがそうなのか・・・・・・。
いずれにせよ、iPhoneとPCエンジンの相性はさほど良くねぇよな、ってのが実験結果だ。
残念。

※1: そもそもPCエンジン用のCD-ROMはPC-8801/9801用以前に出してるわけで、そういう意味ではPCエンジンは明らかにNECにとっては実験的製品の側面がある。
ある意味PCエンジンで市場の動向を測ろうとしてたんだろう。

※2: 総出荷台数は全世界で150万台程度だったらしい。
なお、Neo Geo Pocketは第7位(200万台)、ゲームギアは第10位(1,100万台)との事。
データはこちらから。
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「PCエンジン」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事