見出し画像

Retro-gaming and so on

ソードワールドPC

やっと紹介する気になった。
ハッキリ言って、国産RPGの最高傑作である。
それが1992年にT&Eソフトからリリースされた「ソードワールドPC」である。

まずは前提から。
ソードワールドRPG自体はグループSNEからかつて出されていたテーブルトップRPGである。


現在2.5版が出版されているが、ソードワールドPCはそれ以前の初版(って言えば良いのか?)を元にして組み立てられている。
このゲームは、SSIのAD&Dシリーズと同じように、TRPGを如何にコンピュータゲームに落とし込むか、に注力して作られている。

ところで。
どうして個人的にTRPGのCRPG化したゲームの評価が高いのか?
平たく言うと、CRPGに絡んでくる「経験値稼ぎによるレベルアップ」がメンドクサイからだ。
多分、どの人もそうなんだけど、最初CRPGを始めた時、経験値を稼いでレベルアップをして、キャラが強くなっていくのが楽しくてしゃーない。
しかし、である。
ある程度CRPGを遊んでいくと、今度は経験値稼ぎがメンド臭くなってこないか?
RPGを買って遊ぼうとしてもその後の経験値稼ぎを考えると億劫になってくる。メンド臭くてメンド臭くてしゃーない。
そしてそもそも、CRPGの元ネタであるTRPGには「経験値稼ぎ」と言う概念が存在しないのだ。
ウソ?って思うかもしれないけど実はそう。CRPGの「経験値稼ぎによるレベルアップ」って手法は、誤解を畏れずに言うとWizardryで導入されたミスリーディングである。Wizardryで「RPGはキャラに経験値稼ぎをさせてキャラを強くするゲーム」と言う勘違いが広まってしまった。

TRPGのキャラはレベルを1上げるのに経験値を1,000も2,000も必要とする。一方、敵を倒しても貰える経験値なんぞ10×いくら、くらいで微々たるモノだ。
そんなんでキャラを1レベル上げるのは地獄の所業である。
じゃあどういうシステムになってるのか?
実は、TRPGはあくまで「シナリオをプレイヤー同士で楽しむ」ゲームなので、シナリオを一つクリアすると経験値が1,000 とか1,500とか、シナリオの難易度に従ってバーンと貰えるシステムなのだ。だから「経験値稼ぎ」が必要ない。
こういうのを、CRPGで言うと「ミッションクリア方式」と言うらしいが、残念ながらミッションクリア方式のCRPGの数はあまりにも少ない。
しかし、数少ないながら、TRPGの完全移植を目指したCRPGだとこういうシステムになっている確率が高い。
ソードワールドPCはそういう数少ない「ミッションクリア方式の」CRPGなのだ。
そしてだからこそ、シナリオを楽しむのに注力出来るわけだ。


ゲームはまず、キャラクタ作成から始まる。
AD&DやWizardryとは違い、ここではキャラは一人しか作れない。そのキャラは他でもない、貴方の分身となる。
選べる種族は人間、エルフ、ドワーフ、グラスランナー(いわゆるホビット)、ハーフエルフの5種族。


そして(内部的には)サイコロを転がしながらキャラクタのステータスを決める。
このゲームで特徴的なのは「生まれ」。生まれによって初期技能(っつーか、基本的にはクラス≒職業)が決まる。
  • 蛮族: ファイターLv.1 レンジャーLv.1
  • 魔法使い: ソーサラーLv.1
  • 悪党: シーフLv.1
  • 旅人: バードLv.1
  • 狩人: レンジャーLv.1
  • 一般市民: なし
  • 商人/学者: セージLv.1
  • 傭兵: ファイターLv.1
  • 司祭: プリーストLv.1
  • 呪い師: シャーマンLv.1
  • 騎士・貴族: ファイターLv.1 セージLv.1
各「生まれ」は平等ではない。つまり、これらは一様分布ではない、と言う事だ。ここで言うと、例えば貴族は一般市民に比べると「出づらい」目になっている。この辺はルーンクエストの影響かな。

注: ソードワールドRPGと言うルールブックによると、この「生まれ」は2d判定、つまりサイコロ2個を使ってその出目により決まる。ここで、勘違いしてはならないのは、サイコロ2個での出目は一様分布にはならない。
例えば出目2と出目12はそれぞれ1/36の確率で出てくるが、出目3は{1, 2}と{2, 1}の組み合わせが考えられるので確率は2/36 = 1/18となる。出目4は{1, 3}、{2, 2}、{3, 1}の組み合わせが考えられるので3/36 = 1/12になる。
つまりサイコロ2個を使った分布は一様分布ではない、言い換えると、各目の出目の確率は違う、と言う事だ。
ちなみに、ヘナチョコなプログラマだと、この辺が分からずに、サイコロの出目を一様分布として乱数化したりする。

自分で自由に職業を選択したい場合は、ステータスに着目するだけ、で出自は一般市民で充分だろう。逆に、貴族になった場合は初期資金が他の出自より優遇されている。


ステータスを決定したら、初期経験値を使って技能(スキル、っつってるけど事実上はクラス=職業)を買う。この辺も好きにしたら良い。
キャラ作成が終了したら、いよいよ冒険の始まり、である。


冒険のスタートは、大都市オラン。
他にも街があるんだけど、ウルティマ/ドラクエ/ファイナルファンタジーのようにフィールドを移動する事はなく、「街を選択すれば」その街に移動する、ってのがシステム。
これは恐らく、1989年にリリースされたSSIのAD&D Curse of the Azure Bondsのシステムを真似た為だと思われる。

(AD&D Curse of the Azure Bonds)

各街にはいわゆる「冒険者ギルド」が存在する。そこで仲間をリクルートしてパーティを編成するわけだな。少なくともパーティメンバーが全員で4人はいないとクエストは受注出来ないようになっている。



これら「メンバー候補」は、パーティに参加してなくてもストーリーを進めるに従って全員経験値を入手していく。
よって、入れ替えが可能な以上、誰をメンバーにしても良い。肉弾戦が得意なメンツにしても良いし、女性だらけでムフフなメンバーにしても良いだろう。まあ、ステータスをチェックしながら好きなようにパーティを編成して構わない。



なお、1992年のゲームにしては絵やユーザーインターフェースがイマイチなのは事実である。
これは、元々、このゲームを開発してたのは夢幻の心臓を作ったクリスタルソフトだったんだけど、開発開始はそれこそ1989年に遡る。その時基準のグラフィックとUIなのだ。
ただし、このゲームの開発は難航し、そのうちクリスタルソフトは倒産の憂き目にあう。そこで、そのクリスタルソフトを会社ごと買収したのがT&Eソフトで、結果そこで開発はやっと終了し、発売にこぎつけたわけだ。その際グラフィックを手直ししなかったんだな。
結局、グラフィックの向上が見られたのは、後に発売されるスーパーファミコン版まで待たなくてはならなかったのだ。

さて、メンバーを決めたらオランの各施設を回ってみよう。冒険者ギルド的な施設(「古代王国への扉亭」や「麗しの我が家亭」)や各神殿、奇跡の店等で仕事を受注出来る。もしだったら遠征して遠征先の施設を訪ねてみても良い。その辺は全くの自由である。


各ダンジョンは実はオートマッピングも付いていて非常に攻略しやすい。



そして戦闘はSRPGでお馴染み、タクティカルコンバットである。


クエストを見事クリア出来たらお待ちかね、経験値と報酬を頂ける。


このゲームはこうやって進めていく。
そして何と、このゲーム、こういうクエストが全部で50も入っている。
毎日一つづつチマチマ進めていっても、1ヶ月以上も遊べる、と言う超大作なのである。
現在はProject Eggで購入可能である。
超オススメ。是非とも本格的なRPG、と言うモノを本作で遊んでいただきたい。

なお、本作はダウングレード版と言えるスーパーファミコン版と、続編(とは言っても、舞台は同じだが、ストーリー的には繋がりはない)と言える作品が同じくスーパーファミコンで出されている。
ただ、「ダウングレード版」と書いた通り、スーパーファミコン版はシナリオ数がかなり削られ、自由度はPC版と比べると著しく低くなっている。
出来たらPC版を遊んでもらいたい(ソードワールドRPG入門、って意味ではスーファミ版は悪くはないが)。





  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「PC-9801」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事