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Retro-gaming and so on

ドワーフって女にも髭が生えてるの?

素振りブログ。の方で面白い記事が上がっていた。

WIZなんかじゃさ、ドワーフって女でも髭が生える種族ってことになってて。

うーん、そうだったっけ?
と言うか、Wizだと元々性別がない。だから女ドワーフだろうとそうじゃないだろうと、プレイヤーが自由に想像して良いわけだ。
少なくともWizのマニュアルにはドワーフに関する説明に「女に髭が生える」と言う記述は無かったと思う。


Wizardry: 狂王の試練場のマニュアルより。ドワーフがどういった性質でどういう装備を好むか、に対しての記述はあるが、性別に対しての言及は特にない。
あと、後のファミコン版と違い、Wizardryで言う「種族」は単にキャラ作成時の初期条件の違い、しかないのだ。
また、マニュアルには次のような事も書かれている


いわゆる注釈だが、マニュアル的には冒険者は男性であると仮定してると書かれている。英語は性差別主義的言語だが、Wizardryは必ずしもそうではない、と言う言い訳と共に(笑)。
いや、ハッキリ言うと、実はこのゲーム、冒険者は男性だ、と言う暗喩で作られているのである。

じゃあ、D&Dはどうなのか?と言うと、やっぱり少なくとも、オリジナルのD&Dのルールブックの記述には「女ドワーフには髭がある」と言うモノはない。

上の記述を見れば分かるが、やっぱりドワーフの性質、例えばレベル上限である、とか得意な武器とか(ボーナスが付く)、ある種のモンスターが用いる言語の理解能力がある、とか、そのテの定義はされているが、一方「女ドワーフ」なるものがどういう容姿なのか、その記述は全くないのだ。
ハッキリ言ってしまおう。女ドワーフに髭(とは言ってもアゴヒゲ)がある、と言うのはあくまでトールキンのドワーフに於いて、である。そしてそれが正統、ってワケでもない。何故ならトールキンの作品では色んなモノが改変されてるから、である。
トールキンは結局、日本の漫画家で言うと水木しげるのようなモンで(笑)、水木しげるは妖怪を描いた漫画家としては有名だが、かと言って彼が描いた妖怪の全てが民間伝承である妖怪を正しく伝えているのか、と言うとそれは違う。当然改変が行われているのだ。トールキンも同様である。
しかもトールキンは「神話」を一から作ろうとしてたわけで、結果、それは明らかに元々のヨーロッパの民間伝承から乖離してるのである。
もちろん、D&Dはトールキンの作品に影響を強く受けている。
しかし上で見たら分かる通り、(白箱と呼ばれる)オリジナルのD&Dでは「女ドワーフにはアゴヒゲがある」と言う記述が元々ない。だから今でも「女ドワーフにはアゴヒゲがある」派と「ない」派で揉めてるらしい(笑)。
そして「アゴヒゲがある派」もまた二分されてて、「女ドワーフは男ドワーフと見分けがつかない」派と「女ドワーフは女ドワーフ派」に分かれている。
そして女ドワーフ髭あるナシ派閥中間派は

「女ドワーフにはアゴヒゲがある。でも剃ってるんだ。」

と言ってるらしい(笑)。なんだそれ(笑)。
そもそも、民間伝承のドワーフでは、ドワーフ自身が「石から生まれる」のでメスがいない、と言う話もあるくらい、実は女ドワーフのイメージは元々ブレているのだ(※1)。


アゴヒゲがある女ドワーフのイメージイラストの例

さてトコロ変わって日本。
TRPGの世界では割に新しいが、「昨今の女ドワーフのイメージを決定付けた」のは、恐らくグループSNEのソード・ワールド2.0だろう。素振りブログ。の言ってる通りのイメージだな。

いつからかなー?

ドワーフの女が「小柄&怪力」って扱いになったのは。

多分ソード・ワールド2.0の立ち上げと合わせて発売されたリプレイ、「たのだん」が最初なんじゃないか(※2)。



そしてソード・ワールド2.0での種族設定では、確かに女ドワーフは「合法ロリ」になっている。

女性にひげはなく、成人しても人間の少女に似た姿のままです。


元々のソードワールドではここまであからさまではなかった。
例えばソードワールドPCで女ドワーフのキャラを作ると次のようなグラフィックである。


どこの民族ブスなんだ、と(笑)。


まぁ酷い(笑)。
エルフなんかとは違い、この時代のソードワールドの「ドワーフ」は、美醜で言うとぶっちゃけ醜側なんだよな、造形的には。
これどうなんだろ。確かに

人間ではない種族をプレイするのだから、そこも含めてのゲームだろうと。

自キャラ可愛くないと嫌だとか、あるんかねぇ?


と言われりゃその通りではあるんだけど、こうも造形的に醜だとさすがに個人的には気が滅入ってくる。結構そういう人も多いんじゃないかしらん。
個人的には2.0の「合法ロリ」である女ドワーフの「割り切り方」の方が好きかもしんない。


ソードワールドSFC2での女ドワーフの例。
やはりグラフィック的にはダサさが滲み出ている。


一方で、PC-9801版のロードス島戦記IIより。このゲーム、遊んでるヤツは滅多にキャラ作成しないだろうが(小説版のイメージが強すぎる為)一応Wiz的にキャラ作成が可能で、女ドワーフを作成してもポートレイトは2種類から選ぶ事が出来る。
後続のソードワールドPCに比べると、出渕裕デザインによる女ドワーフの容姿は悪くない。


最後に参考例としてラノベでは女ドワーフがどういう扱いになってるのか。見てみよう。
「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」からミア。多分「女傑」と言う意味ではいわゆる女ドワーフのイメージにピッタリである。
ただし、比率見てみれば分かるだろうが、彼女は大柄である。こうなるとドワーフの「小人」的なイメージは何だったんだ、となる(まるで、ピーター・ユスティノフが演じたエルキュール・ポワロ的である・謎)。
この様に、実はファンタジーではエルフは愛されていてイメージもまぁまぁ世界各国で共有してる(耳のカタチ問題、と言うのがあるにせよ)。女エルフなら尚更だ。
一方、女ドワーフと言うのは極めて難しい問題でイメージが共有されてない、ってのが分かるだろう。非常にややこしい存在なのが女ドワーフなのだ。


※1: ちなみに、この辺まで読んだ人で鋭い人は気づいたかもしれない。そもそもWizでもD&Dでも、女ドワーフ以前に男性のドワーフでさえ「髭がある」と言う容姿に対しての説明は一切ないのだ(一方、身長が小さい、と言う事は書かれてるし、OD&Dの英語の説明を読むとその利点さえ書かれている)。
つまり、TRPG的なマニュアルをそのまま読むと、ドワーフの「機能面」の説明はされてるけど、外見的云々は元々書かれていなくて、だからこそ欧米のTRPGファンの間で「女ドワーフ」の見た目に関して意見が分かれているわけだ。
プログラミング用語的に言うと、「ドワーフの髭」と言うのは元々仕様の範疇外なのだ。ということは、トールキン原理主義者はトールキンの作風に縛られるし、民間伝承原理主義者はそもそも女ドワーフを認めないだろうし、それらの原理主義者じゃないモノは「自由なドワーフ像で良い」って立場になるだろう。TRPG的には、マニュアルに従う以上、むしろ「解釈の幅」があるのである。
※2: 一説には韓国製MMORPGであるリネージュIIの女ドワーフが「合法ロリ型」の原点だ、と言う話がある。リネージュIIの公開は2003年に遡るので、ソードワールド2.0よりも5年は早い、と言うのは確かである。


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