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Retro-gaming and so on

トロン

教えて!gooに次のような質問が投げられていた。



う〜ん。うむ。
そもそも陣取り合戦っつーのがピンと来なかった。
「陣取りをするゲーム」と言えば圧倒的に思いつくのは「囲碁」って事になるが。
それよりなるほど、「トロンゲーム」ってのは確かにイミフだろう。
そして言っちゃえば、そんなジャンルはない
とは言え、ある世代にはピンと来るモノがある。
僕もたまたまその世代に属してただけ、だ。

まず大前提から。トロン、とはゲームの名前じゃない。1982年公開のディズニーの映画の名前だ。
通常、ディズニーの映画、って言えばこんなカンジをイメージする。


ところがトロンはこうだ。


そう、ディズニーには珍しく実写映画なんだ。
しかも1982年公開のこの映画、全編の90%が世界初のCG(コンピュータ・グラフィックス)で作られた映画だ、と宣伝された。・・・いや、実はそれ、宣伝のウソなんだけど(笑)。実際は1時間36分と言う映画の長さに対して、フルCG部分は15分程度だ。つまり、16%程度に過ぎない。
とは言っても16%でも凄いし、「それまでに観れなかった」CGと言う映像に度肝を抜かれた。まさしく一般公開された分では「世界初の映像」だったんだ(※1)。
うん、今ではCGは「当たり前」になったけど、この映画公開時ではまさに「驚きの映像美」だったんだよ。・・・・・・「映像」はな(笑)。

いや、今回、念の為に「ふくの映画ブログ」のアーカイブを調べてみたんだよ。gonfuku923氏がなんか言及してんじゃねぇか、と。
結論から言うと全く無かった(爆
まぁ、当然だよな。っつーか、ストーリー的には特に見るべきトコがねぇんだ(笑)。僕も劇場公開時に観に行ったんだけど、細かいトコはサッパリ忘れている。
ストーリーは、単純に、ソフトウェア会社の不正を調べてたらコンピュータ世界に転送され、悪のソフトウェアと戦う、と言う話(※2)。こんなの現在、「小説家になろう」に発表したら袋叩きに合うコンセプトだろう(笑)。まぁ、単純な勧善懲悪、なんでディズニーらしい、って言えばディズニーらしいが。
これ、多分、「CGを使う」ってのがむしろ中心コンセプトで、「CGを使う」から、ストーリーをこう作りました、って言う主客転倒の典型的な映画のパターンなんだよな。つまりむしろストーリーが「おまけ」なんだわ(笑・※3)。

さて、トロン。そこで描かれる電脳世界では「擬人化された」プログラムがコロセウム的な、つまりゲーム世界で殺し合いを行う。
そういうシーンで圧倒的に人気があったのが「ライトサイクル」と呼ばれるゲームのシーンだ。




ライトサイクル、は後方に「壁」を生成しながら高速で走る。そして敵機がそこにぶつかれば相手は殺されて「勝ち」になる。そういうゲームだ。
このシーンは見た目に美しく楽しく、当時のガキ共はみな「すげぇ!」と感動してた。
恐らく件の質問の「トロンゲーム」とはこれを指してるんだろう。「相手を囲むように」していく、って意味では確かに「陣取り」とは言えると思う。
ただ、これは「陣取り合戦」と言うジャンルではない。英語ではSnake Game、日本語ではそのまま「ヘビゲーム」と言われるジャンルだ。なるほど、ライトサイクル自体を「アタマ」と考えると、「長い尻尾を生やしてプレイする」ように見える。だから「ヘビゲーム」だ。
この種のゲームは数が少ない。そしてこのトロンの映画が祖、ってわけでもない。
実際は、1976年発表のアメリカのアーケードゲーム、「Blockade」ってのが先にあって、むしろそれにインスパイアされて作られた映像が、トロンの「ライトサイクル」なわけ。

Blockade

1980年代前半辺りだと、そこそここのBlockadeは人気があったらしく、パソコンにもクローン作品がチラホラあった模様だ。それらを総称して「スネークゲーム」と呼んでるわけだな。



MS-DOSでのスネークゲームの代表作、その名も「SNAKE!」。1980年代前半ではこのような「Blockade」を祖としたゲームが数種類作成・販売されている。
なお、この「SNAKE!」は実は構造的には端末を使った「CLI」のゲームだ。

一方、このテの「ヘビゲーム」はファミコンを初めとしたレトロコンソールゲームでは全く、って言う程無い。
恐らく、唯一と言って良い程、のスネークゲームはゲームボーイ用にナグザットが1990年にリリースした「かこむん蛇」くらいしかないんじゃないか。



つまり、ファミコンが発売された1983年末から1990年にかけると「スネークゲーム」と言うのは一種空白地帯だったんだ。
映画「トロン」は当時は爆発的なヒットで、スネークゲームをヒントとした「ライトサイクル」は一般認知度を誇った。それで1982年時点だとアーケードゲームやら色々出たんだよ。日本だとTOMYが作ったハンドヘルドのLSIゲームが有名だった。




Tomytronics Tomy Tronics Tron the Mini Hand Held Arcade game

ところが、TOMYがこのゲームを作って販売した時期、ってのは、このテのハンドヘルド型のLSIゲーム、ってのがもう末期だったのね。ブームが終焉を迎えてて。「このLSIゲーム自体は良いゲーム」だったにも関わらず、映画「トロン」のブームとLSIゲームのブームがビッミョーにズレてたわけ。
そして「トロン」自体が先にも書いた通り、ストーリー的には大して面白くねぇんだわ(笑)。結果、「プレファミコン」時代に公開されたこの映画、ファミコンが発売された頃にはもう「急速に忘れ去られた後」だったんだ(笑)。
結果、映画「トロン」はファミコンに引っかからなく、足跡も残さなかったわけ。

いずれにせよ、家庭用コンソールで「トロン」も「スネークゲーム」も出なかったわけで、「トロンゲーム」って言われても「ファッ!?」って状況になるわけよ(笑)。言い換えると「家庭用で遊べるトロンは無かった」と。

とは言っても、「ライトサイクル」は特定の世代には刺さるワードだ。
ってぇんで、トロンのライトサイクルネタのオープンソースのフリーゲームがある。
これによって積年の恨みは張らせる筈だ(笑)。

2本もあり、両者共Linux、Mac、Windows版、と取り揃えられている。
ゲーム内容は両者とも同じで、映画「トロン」のライトサイクルをモチーフにしている。どっちがいいのか、ってのは単に好みの問題になるだろう。




是非ともダウンロードして遊んでみて欲しい。

※1: 当然、コンピュータ・グラフィックスというのは研究分野としては既に存在してたが、一般人が目にする事はなく、「一般人が初めて目にしたCGと言うモノ」と言う意味で、まさしく「世界初」だったんだ。

※2: あらすじはWikipediaを参照して欲しい。
とは言っても不可解なストーリーだ。
いや、単純に考えてみて欲しい。主人公はゲームを作ったけど、左遷された恨みでイリーガルなクラッキングを本社に対して行おうとするクズだ(笑)。しかもそれが成功すりゃしない。
一方、敵役のデリンジャーはOSさえ作っちゃう。OSだぞ?ゲーム作るよか難しいんだ。しかも、主人公がクラッキングしようとしても許さない程堅牢だ。つまりセキュリティ万全なOSなわけで、こんなOSを作れる、って事を考えてみても、実は凄腕のプログラマだ、って事が分かる。
っつー事はだぜ?社長に出世した、ってのは別に件のゲーム「だけ」が原因とは言えないだろ(笑)。単に凄腕のプログラマだから出世したんとちゃうんか。いわばデリンジャーにしてみれば逆恨みもいいとこである(笑)。
この映画、実は良く見てみると主人公はまるでいいとこがなく、クラッキングを仕掛けても失敗するし、電脳世界に放り込まれたあとは、「トロン」と言う友人が作ったプログラムと行動するが、そう、「友人が作ったプログラム」なんだ。別に主人公本人が作ったプログラムじゃない。そして「悪の」(笑)総大将に対峙するのは「トロン」であって本人じゃない(笑)。分かるだろ?プログラマとしても主人公としてもダメダメ過ぎるんだよ(笑)。
まぁ、シナリオ構成法のある種定番としては「主人公は視聴者目線にする」と言う手段はあるにはあるが、それにせよ「ダメダメな」主人公だ(笑)。そして「ヒーロー」はあくまで脇役の「トロン」と言う「友人が作ったプログラム」となる。
加えると、ビデオゲームってのは「アイディアが良ければそれで良い」ってモンじゃない。言っちゃえば「アイディアだけは良い」ビデオゲームなんざこの世に腐るほどあるだろ(セガのゲームとか・笑)。そうじゃなくって、UIとかその辺の「手触りの良さ」ってのを合わせた「総合力」がビデオゲームの良し悪しを決めるわけ。
そして、その辺修正していったら、トータルでの50%以上のソースコードを付け加える必要が出てくる。そうなると「作品」としては原案者のモノなのか、「修正した」人のモノなのか、厳密に言うと判断するのは難しいだろう。
言い換えると、「盗作された!」って主人公は思ってるが、「このままじゃ良いゲームにならん」とデリンジャーが判断して、結果、追加したコードが主人公が書いたモノ「以上」だったのかもしれないんだ。
任天堂の宮本茂氏なんかだとそういうエピソードが山ほどあるだろ?「カービィ」がHAL研から持ち込まれた際に「待った」をかけたのが宮本茂だ。「このまま出すより俺が直した方がより良いゲームになる」と。そうして、最終的に任天堂ブランドとして販売されたんだ。原作のゲームがどんなだったか知らんが、ブラッシュアップして「より面白くした」のはやっぱ宮本茂の仕事なんだよ。
そう考えると「悪役」設定されてるデリンジャーなんだけど、どう考えても単に、能力的には宮本茂氏と故・岩田聡元任天堂社長を足したようなスーパーハッカーなんだよな(笑)。2で割る必要さえない(笑)。
要は、「トロン」と言う映画のストーリーは、「スーパーハッカーに嫉妬した男の話」と読み替える事が出来・・・いや、どう考えてもシナリオは「ヘンテコリン」で「弱い」としか言いようがねぇわけだ(笑)。

※3: ちなみに、映画「トロン」で音楽をやってるのが、「シンセサイザー」と言う楽器の存在をこの世に広めた、「スイッチト・オン・バッハ」を作ったウォルター/ウェンディ・カルロスだ。いわば「富田勲以前に富田勲みてぇな事をやってた」電子音楽のエキスパートがこの映画の劇伴を担当している。

 
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