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Retro-gaming and so on

タワーリングインフェルノ

さて。
コロナ禍で観るオススメの(暇つぶし)映画とは。

オススメの映画、ってのも難しいのよ。前書いたけど。
ジャンルに分けて代表作はこれ、ってのは言えるけど、なるたけ包括的に「オススメ」となるとこれが難しい。
ただ、個人的なオールタイム・ベストを挙げよ、って言われたら「この1作」ってのは挙げられる。
それがここで紹介するタワーリングインフェルノ(1974)である。

この映画、色々な事が言える。
まず、3時間近い超大作である事。出てくる俳優陣がオールスターキャスト的な豪華な顔ぶれであること(逆に、こんな豪華な映画は80年代以降は観られなくなった)。以前も書いたけど、特殊撮影と言うのは元々、コストカットの為の技術なんだけど、70年代に入ってその特殊撮影に金をかけると映像効果が凄いと言う事が分かり、その萌芽がこの映画では潤沢に使われてると言う事。シナリオが超優秀だと言う事。職能賛美である事。ご都合主義ではない事。等色々と書ける事があるのである。

さて、この映画のタイトルにある「インフェルノ」と聞いて、「怖いホラー映画じゃないの?」って思うかもしれない。
全然違う。いや、ある意味怖い、と言うのは正しいが、これは欧米で言うトコのディザスタームービー(災害映画)の傑作である。日本ではパニック映画、って呼んでたな。
通常、パニック映画には色々とあって、例えば地震が起こるとか、津波が起こるとか、火山が超爆発を起こすとか、巨大なサメが海水浴場を徘徊するとか、怪獣がやってくるとか、虫が大発生するとか、ピラニアが空を飛ぶとか、スライムが宇宙から落ちてくるとか、とネタに事欠かない。これらの事件と遭遇してどうなるのか、あるいは人類(ないしは主人公)がどう対処していくのか、と言うのが大体のこのテの映画のストーリーの大まかな流れである。
そして通常のプロットでは、「小さな人間の手には負えない」天災的な何かが起きて、人々がパニックに陥るわけだが。
この「タワーリングインフェルノ」が優秀なのは、これは人災だ、と言う事であって、原因は自然災害とか動物の巨大化とか宇宙から何かが飛来するから、ではない。それも金に目がくらんだ人間のせいで起きる人災への対処の話である。
その辺のプロットがまず、タワーリングインフェルノが類するジャンルの映画よりアタマ一つ抜けてるトコなのだ。
そしてその「人災」の内容。平たく言うとビル火災である。しかも超高層ビルで起きた火災。そして出火場所より上の、屋上に近い階で300人もの人間がビルの落成パーティに参加していた。火事は広がり、この300人は逃げ場が無い。さぁ、どうする、と言ったような話である。まさしく「タワーリングインフェルノ」(訳すれば「そびえ立つ地獄」であろうか)である。
面白そうだろ(笑)?そう、メチャクチャ面白いのだ。

主演はこの映画の場合、ダブル主演で、超高層ビルの設計者である建築士をポール・ニューマン、ビル火災に対する消火活動を行う消防士のチーフをスティーヴ・マックィーンが演じている。二人共亡くなって久しいが、伝説的な名優である。若い人は知らんだろうが(笑)。


また、この映画は音楽も素晴らしく、後にジョーズやスターウォーズで知名度を上げるジョン・ウィリアムズが担当している。
監督は、日本ではあまり名前は知られてないが、「キングコング」(1976年版)やアガサクリスティ作の「ナイル殺人事件」を担当したイギリス人監督、ジョン・ギラーミンであり、手堅く演出している。

ストーリー。
サンフランシスコに138階建てと言う(現実に存在したら、ドバイの206階建てのビルに次いで世界第2位の階数になる)超高層ビル、グラスタワーが完成した。
その設計に従事した建築士、ダグ・ロバーツ(ポール・ニューマン)はこの仕事を最後に会社から退職しようと計画している。彼は引退前のヴァカンスから完成したグラスタワーへと戻る。
しかしいざグラスタワーに戻ってみると電気関係の具合がおかしい。調べてみるとダグが設計した時の要求仕様より遥かに劣る配線が使われている。そして電気関係の異常の為、誰も知らないうちに81階の物置室の配電盤から出火してしまうのだ。


ダグは社長に仕様通りに建設されてない事を詰め寄るが、社長は全責任は娘婿であるビル建設担当者のロジャー・シモンズにあると言う。急遽ロジャーの家へ向かい、そこに帰ってきたロジャーを問い詰める。ロジャーはどうやら建設費用を安くする為、と差額からバックマージンを取る為に安物の部品へと変更したらしい。

(悪い奴・笑)

ロジャーはなかなかしたたかで、結局ダグは明日、ロジャーを問い詰める事にするのだが、明日では既に遅かったのだ・・・・・・。

さて、その夜、グラスタワーの落成式の為に人々が詰めかける。



そして300人の招待客は138階での落成記念パーティに参加する。
一方、ダグはその間、電気関係の異常をチェックする為にビルの中を駆けずり回っていた。そしてとうとう81階で「火災」が起きてる事を発見する(手抜き工事のせいで、そもそも火災警報システムもマトモに機能してなかったが、この辺でやっと81階の火災が引っかかる)。

(いわゆるバックドラフト)

火災警報によりサンフランシスコ消防署のマイケル・オハラハン(スティーヴ・マックィーン)率いる消防隊が到着する。そして彼らは、消防車の放水射程を遥かに超える超高層ビルの火災に対し、決死の消火活動に挑むのである・・・・・・。


と言うのが開始から50分くらいまでのアラスジである。
が、この後、2時間近い時間、大スペクタルとスリルの嵐である。非常に見応えのある映画である。

一つ、この映画の特徴として、一種の群像劇の側面がある。グラスタワーに集った人たちには当然それぞれの人生があるわけだが。その辺のドラマを織り交ぜながら、なおかつ火災で死んでいく人たち。
この映画が「ご都合主義ではない」と言うのは、例えば善人にせよ、運が悪くて命を落とす、と言う事をシビアに描いている。昨今の漫画やラノベとかは、読者の人気が高いキャラは「死なない」と言うようなご都合主義にあふれているが、この映画ではそんな事は無い。どんな良い人でも死ぬ時はアッサリ死ぬ、と言う辺りをシビアに描いている。だからこその良脚本なのだ。

特撮のレベルは今観るとちゃちい、って思うかもしれない。まぁ、さすがに40年以上前の映画だからしょーがないトコもある。


ただ、かなり本気の火事現場の撮影セットを組んでおり、さすがに二社合同製作(20世紀フォックスとワーナー・ブラザーズ)、って言うくらい豪華である。


また、後年撮影されたダイ・ハードばりのビルの配管エリア渡歩きとか、エレベーターシャフト内移動等も撮影されている。と言うか、映像的な意味で言うと、恐らくダイ・ハードの方がタワーリングインフェルノを参考にした、って言った方が正しいのではないだろうか。


いずれにせよ、これこそ豪華キャストによる娯楽大作である。
一体この地獄絵図のような火事は消火出来るのか?
手に汗握りながら観て、コロナ禍の暇つぶしを乗り切ってもらいたい。
超オススメ、である。
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