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Retro-gaming and so on

深夜アニメの仕組み

深夜アニメは本質的にはCMだ。「通販番組」と基本構造は変わらない。
そういう認識って割に当たり前だと思ってたんだけど、それこそ「教えて!goo」とか見てると、人気がある作品がアニメ化されていると思ってる人が多いように見受けられる。
1980年代くらいまでだったらそれは正しかっただろう。
でも現代は違う、と思っている。
僕は別にアニオタじゃないんだけど、見てたら分かるんだよ。
まぁ、所詮「個人の思い込み」だし、確証があるわけじゃない。ウラなんざ取ってねぇ、って事だ。
でも一応、アッチコッチに書いてた事を改めてここにまとめておこうか、と思った。

オリジナルアニメ作品はさておき、繰り返す。深夜アニメは出版社主導のCMだ。CMの本質は何か、と言うと売れてる作品を宣伝してるんじゃなくって売りたい作品を宣伝してるんだよ。
よって、往年のアニメや、ゴールデンで流れてるアニメのように、既に原作が人気があって売れてるからアニメにしました、ってワケじゃないんだ。
「バクマン。」で描かれてるようなこんなシーンは、現代では殆どないだろう。



バクマン。は2008〜2012年に連載された漫画だが、こんなアニメ製作会社が制作許諾を請ける為に企画書を出版社側に提出する、なんつー構図は1980年代までの構図だろう。
要はゴールデンタイムにアニメ枠がガンガンあって、アニメ制作会社が「製作委員会方式」ではなく、自ら元請けとなって制作する体制が当たり前だった時代の話だ。
バクマン。は21世紀に出た漫画にも関わらずここだけはどういうわけか20世紀的だ(笑)。まぁ、設定上、漫画がガンガン人気があり、アニメ化が目的の話なんでこういう設定にしたんだろうが(しかもジャンプだし)。

ところで、MANZOKUなんかの雑誌とか見たことある?



 
キャバクラとか、ソープランド、ファッションヘルスなんかのお店やそこの勤めてる、メチャクチャ可愛い女の子達が毎月、これでもか、って言う程写真付きで紹介されている。
ところが、だぜ?お店のNo.1ってのは絶対載らないんだ。
ある意味当然と言えば当然で、No.1は既に客を持ってる。わざわざ宣伝して客が過剰供給されても店側としては捌ききれなくなる。
そうじゃなくって、実はこのテの雑誌に載ってる女の子ってのは店側としては「売れてる」女の子じゃなくって「売りたい」女の子なんだわ。つまり、事実上、店に在籍してはいるんだけど、イマイチ売上的にはパッとしない女の子を宣伝したくて載せてるんだな。
何でんな事知ってんのか、っつーと、なめだるま親方みてぇになりながら、女の子達にインタビューして教えてもらったから、だ(笑)。どのようになめだるま親方みてぇになってたのか、っつーのは端折るが(笑)、そういう話を聞いて「なるほどね」とか思ったわけ。
素人的には「雑誌に載る」=>「人気がある」ってついつい勘違いするんだけど、実際は違うんだよ。「より売りたい」為に宣伝する、ってのは、考えてみれば当たり前の話なんだ。

深夜アニメの構造はこれと同じだ。言い換えると深夜アニメはアニメ版MANZOKUなんだ(笑)。

個人的にこれに気づいたのは10年以上前だ。当時、何かの弾みでコミックフラッパーっちゅうクソマイナー漫画雑誌を買ってた事があるんだ。

 
コミックフラッパー。知ってる?

  1. 聞いた事がない
  2. 聞いたことはあるけど読んだ事はない
  3. 読んだことはあるけど買った事はない
  4. 購読してます
大体このパターンで、この順で人口は「少なくなっていってる」だろう。殆どの人は「聞いたことがない」に投票する筈だ。
ところがだぜ?この雑誌買ってみて驚いたんだ。冒頭で「本誌掲載の✕✕がアニメ化!」とか書いてるわけ(笑)。

「何でこんなクソマイナー雑誌の誰も知らんような作品をアニメ化してんだろ?」

とビックリしてた(笑)。もうなんて漫画がアニメ化されてたのかさえ覚えてない。それくらい「残らない」「残ってない」んだ。
そんな作品が「アニメ化」だぞ?

いや、僕はアニオタじゃないし、当時はむしろアニメを見限ってて「嫌い」の方だったんだよ。
当然「深夜アニメ」なるものがやってる、っつーのは知ってたけど、全くその内情は知らんかった。
そして「誰も知らんようなドマイナー雑誌のドマイナー作品」をアニメ化してる、って事実に「ビックリ」した。
つまり、この時の僕のアタマの中はそれこそ1980年代的だったんだ。「漫画の人気作品がアニメ化されるんだ」と。だからこそ「ビックリした」ワケだよな。
ところが視点を変えてみると納得した。逆に「人気じゃない作品をアニメ化すれば知名度が上がって人気が出るのか」と。
この仕組みを作った深夜アニメってすげぇな、と思ったわけだ。

例えば一時期、アニメ「けいおん!」が人気だったわけじゃん?
でも「けいおん!」がアニメ化する前に「けいおん!」を知ってたヤツってどれくらいいるんだろ。
確かに「まんがタイムきらら」は「コミックフラッパー」よりメジャーだ、って事は認めよう。比較としてはその通りだよな。ある意味コンビニ御用達雑誌だし(笑)。
ただし、だ。購読してます、ってヤツはやっぱ殆どいないだろう。「雑誌の名前だけは知ってる」ってヤツが殆どじゃねぇか?
オタクは「俺が知ってる」「俺が買ってる」って事をさも「普遍的事実」として語りたがるけど、そんなことは客観的には殆どねぇ、んだよ。逆に「けいおん!」をアニメで知ったってヤツの割合の方が多いだろ。
つまり、芳文社が深夜帯のある時間枠を基本単枠で買って、「マイナー雑誌に載ってるマイナー漫画」だった「けいおん!」を自社出版物のCMとしてアニメ化して超人気作品に押し上げたわけだ。宣伝が性交成功した、と言う代表的な例だろう。
そして小学館・集英社・講談社と言う3大漫画出版社以外のアニメっつーのはこういう「自社出版物の宣伝」目的なんだ。つまり雑誌出版社としては小学館・集英社・講談社に知名度が遥かに劣る、と言う前提からこういう戦略を取らざるを得ないわけ。
分かる?

問題はそんな仕組みで「儲かる」のか否か、って事なんだけど。
儲かるか否か、と言う前に、ネットでテキトーに検索すると次のようなデータがあったりする。

  • 深夜枠30分の販売価格: 一ヶ月150万円〜200万円
  • ゴールデンタイムのCM価格: 一本50万円
これ、考え方にもよるけど、例えば「皆が観てる」ゴールデンタイムに「売れてない雑誌のTV広告を打つ」より、深夜である枠を買っちゃった方がある意味効果的なんだよ。
そして、ゴールデンタイムに枠を買って番組作ろう、なんつーのは値段を見るとフツーはムリゲーだ、って事が分かる。

  • ゴールデンタイムの「番組枠」購入価格: 月額約8500万円
1億近くかかる(笑)。
もちろん、一社提供でこんなコストは掛けられないから、スポンサーを募ってCMを打ってもらうわけだけど。
ちなみに、往年のサザエさんは「東芝一社提供」だったんだけど、家電屋、すげぇ資金力だったんだな、ってのが分かるだろう(笑)。スマスマの武田薬品なんてのもすげぇ資金力があるわけだ。
つまり、往年の「ゴールデンタイム」でアニメを「元請けとして制作出来た会社」もかなり資金力があったわけだよな。じゃないと作れないし、だからこそ視聴率を稼ぐ為に「良い企画」を自社で見つけてこなきゃなんなかったわけ。東映動画、東京ムービー新社、とかまずは「資金力があって」、そしてスポンサー付けて・・・でテレビ局と組んでアニメを作ってたんだよな。
さて、小学館・集英社・講談社みたいに「売れてる漫画雑誌を抱えていて」「人気作品がたくさんある」出版社なら、アニメ制作会社側の方から「すみません、アニメ作らせてください」というような、それこそバクマン。で描かれていたような状況はあり得るかもしんない。
でもそれ以外の漫画雑誌出版社は残念ながら言っちゃえば対象としてはクソなんだわ(笑)。いや、いい作品もあるだろうけど、やっぱ商売的には色々と難しいだろ。大体、アニメ制作会社が「アニメにさせてください」とか来る事もねぇだろうし。そういう「制作力がある」元請けになり得る会社は3大出版社にかかりっきりだろう。
一方、マイナー雑誌出版社側から言うと、上で見た通り、深夜帯ならまず、30分枠とか1時間枠押さえてもゴールデンでCM打つよか安いんだわ。そして「元請けにはなれないけど」アニメ制作出来る、要は「下請け」はたくさんあるんだよな。
うん、単純に言うとこれが深夜アニメの仕組みだ。マイナー出版社は資金力もコンテンツもゴールデンで張れるようなモノはない。代わりに深夜枠をある範囲で独占してそこで放送する番組を自社コンテンツの宣伝目的で作る。この時点で「製作委員会」方式でイケば資金力的に怪しいアニメ制作会社にも出資させられるし、下請けに使える。あとは音楽制作会社を巻き込めば完了、だ。
とにかく基本的には「番組枠を安く買える」と言うのがポイントだろう。通販会社でさえ出来るんだからマイナー雑誌出版社にも出来る、ってのは正しい(笑)。
そんなワケで深夜枠は角川とかスクエア・エニックスとかが占めるわけ。両者とも「会社のネームバリューはある」けど、漫画雑誌屋としては「う〜ん・・・?」だろ(笑)?結果として、三流漫画雑誌屋の深夜アニメ占有率が自然と多くなるわけだ。そして「まるで聞いたこともない」作品がアニメになる。

さて、そうやって「自社漫画雑誌の宣伝」をやる、って目的だと、そもそも「アニメが人気が出たから」と言って即決で二期、三期、と続けていって、物語の最後まで「完全にアニメ化する」のが難しい、ってのも分かると思う。っつーか、んな事むしろやりたくねぇんだよ(笑)。
これも当然で、自社出版コンテンツはどんどん出てくる。元々「人気作品をアニメ化してる」わけでもないし、自社の「漫画雑誌」を宣伝する前提なら、一極集中化するより別作品をアニメ化して、「こんなコンテンツもありますよ」と自社の漫画雑誌が「如何にも魅力的な作品に溢れてる」と宣伝していった方がマシなわけ。
そして、「アニメ化する」ってのも、恐らく、「面白さ」より、関わってる編集者同士の力関係で決まるだろうな。そんなこんなで、「キリのいいとこまで」アニメ化して、むしろ雑誌が売れるかアニメから原作を知った層が単行本買ってくれた方が出版社側としては嬉しい、って話になるわけだ。
二期、三期と作ってく、ってのはよっぽど珍しいケースだろう。繰り返すが、枠も限られてるし、どんどん新しい漫画が出てくる以上、その枠を効率的に使うなら「どんどん別作品の新作アニメを作っていった方がマシ」って判断になる。
言わば、深夜アニメは潜在的な読者層へのプロモーションフィルム的な意味合いしか持たない。尻切れトンボで終わっても、気になって原作買ってくれたり、掲載雑誌を購読してくれた方が、出版社側にとってはありがたいんだ。

余談だけど、「円盤が規程枚数以上売り上げれば続編のアニメが制作される」っつー話がある。
じゃあ、その最低ラインが何枚なのか、って話があって、一説だと500枚、って言われてる。
その話を聞いた時も驚いた。

「たった500枚?」

と。
モノが売れない時代だからだろうか。っつーかよ、コミケの人気エロ同人の方がもっと売れてるんじゃねーの(笑)?
500枚程度だったら全国のレンタルDVD店に行き渡ったらそれで終了、じゃなかろうか(笑)。
ダウンロード販売やアニメ視聴サイトの存在のせい、とか色々考えられる枚数の少なさ、なんだけど、恐らく、やっぱアニメの人気が出た、とかDVD/BDが売れる、とか言うのって続編をやる/やらないとは関係ねぇんだ、って考えた方がスジが通るだろ。
出版社側から言うと自社の出版物の宣伝が第一で、そこである程度結果が出れば満足なんだよ。だからCMだって言ってるだろうが。
極端な話、アニオタがどういう動きをするのか、とか特にカンケーねぇんだよな。

さて、ここまではマイナー漫画雑誌とその出版社と深夜アニメの関係に付いて書いてきた。
しかし、この10年ちょっと、って意味で増えてきてるのがラノベ原作の深夜アニメだ。いや、もうちょっと説明すると、隆盛を極めたのが体感的には2015年
辺りまで、でそれ以降はそれら原作の深夜アニメはそこそこ数は揃ってるけど、基本的には質が落ちてるような気がする。
これを漫画原作モノと比較してみる。簡単な話だ。
基本的には、ラノベは「単行本書き下ろし」と言う形式で出版される。で、2015年くらいまでだと「単行本2冊」で1クール分、で大体構成されてたんだな。
ところが、2016年くらいから「単行本4冊で1クール」というメチャクチャなアニメが出始めた(単純計算で、小説一冊を3話で消化せなアカン)。そうなると殆どダイジェストなんだよ。アニメがキチンと作れて無く、端折りに端折って、って作品が続出するようになる。
これが「異変」だったんだ。一体何が起こったのか。
繰り返すが、深夜アニメの本質は出版社の自社出版物の宣伝だ。漫画原作の場合、掲載雑誌がまずは必ず宣伝される。実は単行本の宣伝は二の次なんだわ。
そして漫画原作の場合、掲載雑誌を宣伝することによって宣伝効果は倍増する。「掲載雑誌宣伝」で掲載雑誌が売れれば、そこに載ってる別の漫画が注目される事もあるだろう。つまり、副次的効果で「アニメ化されてなくても気に入られた作品があってそれが売れるかもしれない」って事だ。要は、一本アニメ化しとけば連鎖的に別作品が売れる可能性が常にあるわけ。
ところがラノベはそうは行かない。上にも書いた通り、ラノベの出版形式は基本的には「書き下ろし」になる。何らかの「掲載雑誌」があるわけじゃないんだ。
仮に、「なろう」からピックアップしてきた、っつっても、「なろう」を宣伝しても意味がない。書籍版出版社側から言うと全く自社と関係ない媒体を宣伝しても旨味なんざ全くないから、だ。
もう分かっただろう。漫画原作と違ってラノベをアニメ化しても「宣伝効果の連鎖」が無いんだ。調子こいてラノベをアニメ化してはみたけど、結果その「アニメ化された作品」しか宣伝出来ない。仮に「✗✗文庫」って宣伝してもこんな抽象的なCMは「購買意欲」には繋がらない。つまり、2015年辺りでラノベ出版社は「ラノベをアニメ化しても自社出版物全体の波及的な宣伝にはならない」って気付いた、って事だろう。
そんなワケで2016年辺りから先に書いた通り「ダイジェストもの」が出てくる。枠に限りがあって、自社出版物としてラノベを次から次へと出版してる以上、「一作品を丁寧に」アニメ化なんかしてても間に合わない。ダイジェストでもいいからどんどん別の作品をアニメ化してはどんどん流さないと意味がない、って状況になったんだ。
結果、ラノベ原作では、アニメとしてはどーしよーもない作品がこの辺から増えてきたんだな。
当然こんなのは長くは続けられない。
こんな状態だと、展開は2つしかない。「自社宣伝枠を増やす」かあるいは「撤退を含めた縮小戦略を取る」か、だ。前者が角川、後者がソフトバンク、って言えると思う。
角川はクソみたいに宣伝枠を増やし、しょーもないエロ絡みの作品をアニメ化したり、と「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」戦略になっている。
ソフトバンクは何度か書いてるが、観測範囲から言うと「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」にリソースを集中して、全体的には深夜アニメから撤退を始めてる気がする。費用対効果がさほど高くない、と知った以上、ソフトバンクは行動が早い。少なくとも角川と違ってソフトバンクには「漫画雑誌がない」。スクエア・エニックスとある程度提携を結んでるようには見えるが、3大出版社に食い込めない以上、その辺はスクエニに比べると慎重だろう。ソフバンは「勝てない競争はやらない」。その辺は本業じゃないんでノウハウもねぇ、って自覚してるだろうし。
結局、ソフトバンクはここに来て「漫画雑誌を持たない」事が弱みになってきてる気がする(最近Web雑誌をはじめたっぽいが未知数だ)。人気コンテンツが無いわけじゃないんで、そこにリソースを集中して徐々に深夜アニメから手を引いていくんじゃないか、と予想してる。
この付近にはラノベ系の新興出版社もチラホラいるが、今のトコ角川を押しのけて「自社の確固たる宣伝枠」を入手出来る出版社もない。資金力と知名度から言うとまだまだ角川の足元にも及ばないから、だ。ただ、角川系の「乱発」を見てて、今後大丈夫か、と言うと正直危ういような気もしてる。既に角川は昔の「正常な」角川ではなく、自転車操業的な段階に入ってるんじゃないか。
少なくとも角川はレーベルを抱えすぎてるし、「ラノベ」と言うビジネスだと自社のグループ企業内でパイを奪い合ってる。ビジネス的にはあまり健全な状況には見えない。
今はまだブームが継続してるが、予想では、恐らく10年以内でラノベの深夜CMアニメは軒並み消えるんじゃないか。消えなくても、WOWOW/BSフジやキングレコードなんかの第三者で、「原作を見る目がある」製作者側の敷居をくぐり抜けた「良い作品」しかアニメ化されないかもしんない。
いずれにせよ、個人的には、ラノベ原作アニメに将来性はあまりない、と思ってる。

とまぁ、これが深夜アニメ、ってモンだと思う。
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