ゴーストバスターズの流れで、ダン・エイクロイドの主演作品であるコメディ映画を紹介しようと思う。
「あれ?この記事のタイトルがダン・"ア"イクロイドになってるよ?タイポ?」
とか思うかもしれないけど、違う。このビデオが日本で発売された時には「ダン・アイクロイド」として紹介されてたんだな。
しかもこの映画、原題は単にDoctor Detroitだったんだけど、どっちにせよ、日本では劇場未公開作品だ。よって「知る人ぞ知る」映画だろう。
多分、この映画を知ってる人はむしろ往年の洋楽ファンじゃないか、と思う。アメリカのテクノポップ/ニューウェーブバンドであるDEVOが主題歌を担当してた、ってぇんでその道の人「だけ」が知ってた確率が高い(※1)。
DEVO - Theme From Doctor Detroit
さて、1983年に公開された本作。かなり小粒な作品だが、良くまとまってる、シカゴを舞台とした一種の「ドタバタ劇」である。
ダン・エイクロイドが演じるのはモンロー大学(※2)で比較文学の教鞭を取ってるクソマジメな准教授、クリフォード・スキッドロー。彼は現在「アーサー王物語」で「騎士道」について教授してるが、その「概念」が彼を後に苦しめる(笑)。
ところで、シカゴ、と言えばマフィアを連想する人が多いだろう。この映画もそういうステロタイプを下敷きにしている。
クリフォードは毎朝、長距離をウォーキングでエクササイズしながら通勤しているクソマジメ男だ。
その「通勤風景」をとあるポン引き、スムース・ウォーカーに目撃された、と言うのがトラブルの始まりだった。
スムース・ウォーカーはシカゴの裏社会のボス、通称「マム」に80,000ドル(大体一千万円以上)借金している。
スムース・ウォーカーはリムジンに乗り、高級コールガールを四人抱え、高級ペントハウスに住む。しかし内情は火の車で、とてもじゃないけどマムに「耳を揃えて」借金を返済出来ない。
そこでスムース・ウォーカーは苦肉の策で
「デトロイトから来た極悪人、ドクターデトロイトに上がりを持っていかれている。彼には逆らえない。」
と言い訳をする。
そして彼はマムの追求の手を逃れる為に密かに高跳びを決意するのだ。
その夜、スムース・ウォーカー一行はインド料理店でクリフォードを見かける。
ここで、結論から言うと、スムース・ウォーカーはクリフォードを「ドクターデトロイト」に仕立て上げて、ポン引きビジネスを丸投げして高跳びする計画を立てる。
この夜、初めて会った(と少なくともクリフォードは認識している)クリフォードを徹底した夜遊びに誘い(含むマリファナ・笑)、歓待して「娯楽産業をやらないか?」とクリフォードを誘う(ここで言う「娯楽産業」は要するに「売春」だがクソマジメなクリフォードは全く気づかない・笑)。
酒とマリファナで人生で初めて楽しい夜を過ごしたクリフォード。朝帰りする結果になるが。
クリフォードは実は両親と3人暮らしなのだが、父親は(多分)モンロー大学の学長でお偉いさんだ。しかし、今、モンロー大学は経営の危機に瀕していてキャッシュがない。ハーモン・ローゾーンと言う富豪に寄付を貰えるかどうか、に大学の存続がかかっていた。そして、クリフォードは彼の接待を任されるのだ。
つまり、大学での仕事が忙しい最中にコールガール達からの呼び出しがかかる。スムース・ウォーカーはとっくに高跳びを成していた。
なんだかんだで「状況が良く分からんまま」スムース・ウォーカーのペントハウスで暗黒街のボス、マムと初邂逅するクリフォード。
スムース・ウォーカーの資産を差し押さえ、コールガール達を奪おうとするマム(ここでクリフォードは初めて女性たちが娼婦である事を理解する)。しかしコールガール達はマムを嫌っていて(と言うか権力はさておき、シカゴの暗黒街の連中は「強欲な」マムを嫌っていた)、コールガール達の状況に憐憫の情を感じたクリフォードは、何故か女性を護る、と言う「騎士道精神」を発揮しちまって(笑)、
「私がドクターデトロイトの部下だ。マムとドクターの会合をセッティングする。一旦引け。じゃないとカンフーを食らわせるぞ。」
とマムと駆け引きをし、一旦マムを退散させる事に性交成功する。
しかし、大学での接待の仕事を合わせて、ドクターデトロイトに化ける、キツすぎる数日間がここに幕を上げるのだ・・・・・・。
と言うのがあらすじだ。
くっだんねぇ設定でしょーもない話なんだが、面白い(笑)。大学の仕事がガンガン入ってくる上にコールガール達の面倒を見るために「ドクターデトロイトになる」と言う寝不足気味のハチャメチャなコメディ映画となる。
見どころは、ジェームス・ブラウンが出演してる(※4)、って事が挙げられるだろう。
なお、クリフォードのスタンスとしては「スムース・ウォーカー」が戻るまで、なんとかドクターデトロイトを演じきる、と言うつもりだったが、思ったよりマムの支配はシカゴの裏社会に嫌われていて、「新しいボス」のドクターデトロイトが好意的に迎えられた事が計算外だったわけだ(笑)。
果たしてクリフォードは平穏な(表の)生活を取り戻せるのか?そしてマムとの決着は?とそこそこ面白い話である。
なお、スムース・ウォーカーのリムジン運転手で、クリフォードを「ドクターデトロイト」として引っ張り回すディアヴォロを演じるT.K.カーターだが。
実はこの人、この映画の前年、遊星からの物体Xで南極観測隊の黒人コック(ノールス)を演じてる。
次の年にこのコメディへの出演なんだから、随分と差が激しい(笑)。
※1: DEVOはマザーズボー兄弟にキャサール兄弟、そしてドラマーを合わせた5人組として結成された。80年代のテクノポップブームを支えたバンドのうちの1つである。
なおオリジナルメンバーのうち、2人は既に亡くなっていて、現在はオリジナルメンバーは3人しか残っていない。
※2: モンロー大学と言う大学はニューヨークに実在する私立大学だが、映画の中のモンロー大学はシカゴにキャンパスを構える私立大学、と言う事になっていて、結局架空の大学だ。
※3: 地理的に言うと、シカゴがあるイリノイ州とデトロイトがあるミシガン州はお隣さんである。この話は要するに、五大湖周辺の話なんだ。
※4: 人呼んで「ファンクの帝王」。セックスマシーンと言う曲があまりにも有名。