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Retro-gaming and so on

人喰いアメーバの恐怖 2

ファミコン以前のおもちゃの話をしようか。

当時のおもちゃ屋ってのは実は主力商品って言う程の主力商品が無かったんだよな。
いや、もちろんミニカーとか、超合金とか、プラレールとか、「販売の中心となる」商品はあったよ。
でもそれらって1970年代に出てきた比較的新しい商品だったの。そしてファミコンみたいに「おもちゃ屋の主力商品」にはならなかったんだ、ぶっちゃけ。
だから当時のおもちゃ屋は・・・まぁ、今でもそうなんだろうけど、「多種多様な商品」を取り揃えておかないと商売にならんかったんだよ。
大体、ガキの行動って予測がしづらく、「何がいきなり売れるか」分からんのだ。ガキの行動は意味不明だからいきなりなんかが売れてそしてパタッと売り上げが止む、なんつーのは珍しくなかったんだよな。
小売店的な立場からでも何が売れるか読みづらい。在庫のリスクも高い。
だからおもちゃ屋の立場から言うと、「子供の98%は欲しがる」ファミコン、とか出てきた時、ものすげぇ魅力的な商品に映ったのは事実でしょ。だって「安定して大売れする」初めての商品、っつって良かったわけだから。

ファミコン以前って、ガキはホント意味不明なものを欲しがって買いたがるわけね。
ファミコンとか「ゲームばっかして」とか叩かれたけど、それでも「ゲームを解く」って目標があるわけじゃん。目標に向かって邁進する、っつーのは大きく見ると教育的効果はそこそこあるわけだよ。
ところがファミコン以前ってマジに「何それ?」って商品を、突発的にガキが欲しがり売れるわけ。意味不明なモノが売れる。
僕が記憶してるのにもこういう商品があった。


スライムだ。小さいゴミバケツに入って売られていた。
機能性ゼロ。ただネバネバしててデロデロしててひゃっこいだけ。なんじゃこりゃ、って製品である。
うん、実は僕も買った。しかもなんで欲しがったんだか、今となってはサッパリ分からん(笑)。多分流行ってたんだよ。流行ってたから「いいな」っつーんで買ったのだ。
これ、多分結構売れたんだよな。何故なら同業他社からも類似品が作られて売られるくらいだったんだ。
正当商品はここで見せた緑色のスライム、だと思うんだけど、類似商品だと赤いゴミバケツに入った赤いネバネバデロデロを売ってて、そいつはアメーバって商品名で売られてたと思う。
結構おもちゃ業界って何でもアリで、一つヒットすると類似商品で追随する、なんつーのも、良くあった事なんだ。

なんだろね。なんでこんなにスライムとかアメーバがおもちゃとしてヒットしたんだろ。良く分からん。
一つ思いつくのが、当時の水曜ロードショーだと思うんだけど。何かと言えば人喰いアメーバの恐怖2って映画が良く流されてたんだよなぁ・・・・・・。
うん。
それ見たガキどもが「スライムすげぇ!」とか「アメーバすげぇ!」って買ったのかしらん。
うん、良く分からん(苦笑)。

うちはボンビーな上に親が煩かったんだよな。だからガキの頃は「8時に寝なさい」生活を送らされていて、ゴールデン洋画劇場は週末の土曜日だから観れたけど水曜ロードショーはあんま観れなかったんだ。
それでクラスメートのガキどもは「アメーバ」の話をしてて、そういう映画があることは知ってたんだけど、実は全く観たことがなかったのね。どういう映画だか全く知らん。
後に、ビデオデッキを入手した時、これの前作、つまりスティーブ・マックイーンのデビュー作であるTHE BLOB(邦題: マックイーンの絶対の危機※1)は観たんだけど、あの「水曜ロードショーで良く流れていて」「クラスメートが話していた」コッチの方はサッパリ観なかったわけ。
んで、積年の恨みを晴らすために・・・・・・っつーか、何故にそんなに「スライム」とか「アメーバ」に皆が魅力を感じてたのか、その謎に迫ろうと今回初めて鑑賞してみた。

んで前提。
実はこの映画、ホラーじゃない。どっちかっつーと「ブラックジョーク」の類の映画だ。
例えると、「マックイーンの絶対の危機」がナイト・オブ・ザ・リビングデッドだとすると、この映画はバタリアンである。
もう、冒頭から音楽が酷く(笑)・・・いや、単純にこの場合の「酷い」は作曲に難があるわけじゃなくって、要するに、ホラー映画のOPじゃなくって「笑わせよう」と狙いまくってる超コミカルなモノとなっている。
チープなシンセ音楽であり、もう、まさしく「低予算」でどーしよーもない映画ですよ、と最初から主張している。騙そうとする悪意は全くなく、最初っからしょーもなさが開けっぴろげなのだ。



OPは「人喰いアメーバ」の最初の犠牲者になる子猫しか写してなく

「一体どこの子猫物語なんだ?」

と肩透かしを喰らう。
そもそも最初の犠牲者を延々と可愛く撮り続ける、って事自体がブラックジョークであり、おバカである。

あらすじ。
上の子猫の飼い主の黒人夫婦、その旦那が冷凍保存のおかしなボトルを冷凍庫に保存していた。


旦那のチェスターはこれを自分が勤めてるトコの研究所に持っていかないとならないが、取り敢えず一時的に冷凍庫に入れてる、との事。



しかし、二人が目を離した隙に、ボトルの蓋が弾け飛んでしまう(随分と杜撰な管理だな、オイ・苦笑)。
そして、「溶けて」蝿をまずは捕食したアメーバはボトルから逃げ出してしまう。



そしてまず最初に子猫に襲いかかるアメーバ。


次に子猫が消えたことで、庭に探しに向かった嫁にアメーバが襲いかかる。



次にビールを飲んでテレビを観てる旦那のチェスターに襲いかかろうとするアメーバ。



ちなみに、この時、テレビで流れてるのは、「マックイーンの絶対の危機」である(笑)。
んで、この辺まででも結構無意味なシーケンスが多いのね。「人喰いアメーバの恐怖」と言うより、笑わせよう、ってのに努力を全フリしてる(笑)。
例えばこの旦那さんにはなかなかアメーバが喰い付かないんだ。アメーバはソファを覆って捕食に準備万端なんだけど、テレビの調子がおかしいのか、チェスターはなかなか椅子に座らない(苦笑)。


んでこの後、ボーイスカウトのクソガキ達のシーケンスとかも入るんだけど、あんま本編に関係ない。っつーか「満遍なくボケを散りばめたい」ってのがこの映画なんだよ。
やっとそれ絡みで主役カップルの女性側、リサが登場。彼女はチェスターの家に訪ねる予定だった模様だ。



彼女がここでアメーバに捕食されてるチェスターを目撃し、事件の真相を知る事になる「最初の証人」になるわけだ。



う〜ん、こうやって観ると単にいちごジャムに体包まれてるオッサンにしか見えん(笑)。
確かにこの絵面にしかならねぇんならギャグに極フリするのもしゃーねぇわな(苦笑)。
リサは叫びだし、乗ってきた車で現場から逃げ出す。



その途中で車を引っ掛けるんだけど、その車を放置して逃げまくるんだな。一種のパニック状態だ。


引っ掛けられたオッサンは大激怒。
実はこのオッサンは伏線、っつーか後で重要キャラになってんだけど、とにかくこの「激怒」のシーケンスもしつこくて長い(笑)。メインストーリーはホンマすぐ終わるようなモノなんだけど、異様にしつこく「肉付け」してるのがこの映画なのだ。
この後もちょいちょいこのオッサンが出て来て、ラストに話を繋げるんだけど、このオッサン絡みのシーケンスはどれもしつこいのだ(笑)。
リサは彼氏であるボビーの家に駆けつけ、チェスターの家に無理矢理連れて行く。が、そこには死体も何も無かった。

一方その頃。二人のヒッピーが下水の排水用の土管の中でラリってパーティをしていて、通報があったのか、警察官がやってくる。
この内一人の警察官は性格が悪いのか、二人のヒッピーに拳銃を向け、いたぶるのを楽しんでいたのだが、その背後には・・・・・・。


そしてその後、とある散髪屋で。
この辺のシーケンスも無意味に長く、散髪屋が「俺は職人と言うより芸術家なんだ」とか言い出したり、「代金は400ドルだ(っつーことは日本円で4万円を超えてる)」とかワケの分からんコントをやる(ホントに意味が分からん・笑)。



その時、洗髪台へ下水道からアメーバが這い出してくるのである。


気づかずアメーバ入りの洗髪台で客の頭をすすごうとする店主。
ついでに店主も食われてしまう。



この辺も全くのギャグテイストだ。

一方その頃、警官隊と例のオッサンを引き連れたシェリフがチェスター家にやってくるが、この辺のシーケンスもどうでもいい。
シェリフはやたらカッコつけたがるやつだし、オッサンは相変わらず煩い。
リサはチェスター夫婦が得体の知れないモノに襲われた、と主張するが、結果何も見つからなかった為、二人はそのまま解放されてしまう。


同じ頃、とある家でおっさんが愛犬と入浴を楽しんでいた。


ちなみに、この映画、全くお色気シーンがない。が誰得なおっさんの入浴シーンがある、と言うサービス(なのか?)だけはある(苦笑)。
今度は浴室の扉の下からアメーバがやってくる。


異常を感知したおっさんは、浴室の窓を割り、戸外へと逃げ出すのだが、これが酷い(苦笑)。


なんとマッパのストリーキング状態なのである(笑)。
美女ならまだしもおっさん・・・・・・。
結局、巡回中のパトカーに保護されるのである。
うん、この辺のエピソードもどうでもええな(苦笑)。

リサとボビーが家に帰ると、リサの心情はそれどころじゃないのに、ボビーに対する誕生日のサプライズパーティが行われていた。
うん、これも本編あんま関係ないんでどーでも良い。


ただ、一つだけ。
リサとボビーの共通の友人の女の子がいる。


この娘、どっかで見たことあるなぁ、と思ったら、キャロル・リンレイって女優さんだった。ポセイドン・アドベンチャーでブラコンのシンガー演じてた人だわ。
道理でどっかで見たことある筈だわ。同じ製作年(1972年)にポセイドン・アドベンチャーにも出てたわけだな・・・・・・マネージャー、仕事選んでやれよ(苦笑)。



ポセイドン・アドベンチャーの1シーン。美声を聞かせる(が実は歌は別人のアテレコ・笑)。

なお、彼女は2019年に亡くなっている。

さて、この後、ホントどーでも良いシーケンスが続く。
だから飛ばす。一々ギャグを文章で解説するのはさすがにイタいからだ。
次にアメーバに狙われるのは、ボビーの実家で働いてる3人の農夫達(ボビーは結構いいトコのお坊っちゃんらしい)と飼われてる鶏。
鶏と農夫3人は目出度くアメーバの餌になる。



リサは気分が優れない、と言うのでパーティーを辞した。
ボビーはリサを連れて実家の前に車を止める。
興奮状態のリサをなだめていちゃいちゃする二人。



そこで当然、車丸ごとにアメーバが襲いかかる。



車内に侵入しようとするアメーバ。
しかし、偶然冷房を点けてしまったら、何故かアメーバは退散していき、二人は九死に一生を得て脱出する。
 
次の犠牲者はパーティーを抜け出した二人を追いかけてきた、サプライズパーティの仕掛け人カップル。女の方がポセイドン・アドベンチャーな人だ。



リサとボビーは近場のボーリング場に駆け込む。「危険が迫ってるんだ!」と。
いや、何故にボーリング場(笑)?
いずれにせよ、そこに集ってた人には取り合ってもらえない。
しかもそのオーナーが、例の車を引っ掛けられたおっさんだったのだ。


同じ時に、あるレーンが調子が悪い、と修理してる二人が、ボーリング場に侵入してきたアメーバの餌食となる。


そしてとうとうボーリング場にアメーバが侵入してきた。そこにいた人々はパニックになる。





3人共何故か上の階に逃げ込もうとする。


おっさんはスケートリンクを屋内に設置する計画があったようで、そこに設置された放送席に3人は命からがら逃げ込む。



そこからは逃げ惑う人たちを喰っていくアメーバの姿が良く見えたのである。



通報により、やっと件のシェリフ率いる警察隊が登場し、銃を携帯しながらボーリング場に入るがサッパリ役に立たない(そもそも低予算映画なので突入する警官の数が少ない・笑)。



部下の一人が喰われた為、怯えまくるカッコつけのシェリフ。

一方、放送席にもアメーバが侵入してきたが、偶然、そこにあった冷凍庫から氷がひっくり返り、アメーバに降り注いだらアメーバは退散していった。


アメーバは冷たさに弱かったのである。
おっさんの言葉によると、最新式のスケートリンク用装置があり、それなら瞬間的にアメーバを冷却する事が可能だ、との事。
ただし、起動スイッチは放送席の対面にある、との事。
ボビーは張られたロープを伝って対岸へと渡る事にする。




無事、アメーバは「瞬間冷却」された(※2)。

外で建物ごと燃やそうとしてたアホなシェリフのトコへ駆けつけるボビー。

「終わったんだ。解決した。」

と伝える。


ボーリング場の中にマスコミを引き連れて入るシェリフ。
そこで(何もしてないのに・笑)事件解決の功労者としてインタビューを受ける事となったのだ。


しかし、撮影用のライトの熱で溶け始める氷層。


そしてそれはシェリフの足元へと食らいつく。



このTHE END? ってのは マックイーンの絶対の危機と全く同じオチ、である(苦笑)。

観た感想は・・・うん、ただ、ああそう、こういう映画だったんだ、としか言いようがない(笑)。
水野晴郎が好きだったのか、あるいは予算とか適当な映画がない時、「穴埋め」するには適当な権利料だったのか(笑)。
あ〜、うん、観てみたい人は観てみればいいんじゃない?って程度。
どの道、マジメな映画ではない。それだけは間違いないのである。

・・・・・・結局、スライム/アメーバブームってなんだったんでしょう?

※1: 何故か「人喰いアメーバの恐怖」と言う邦題ではない(苦笑)。

※2: 当然「瞬間冷却」になるスケートリンクなんざ現実にあるわけなく、そんなモンが登場するだけ、この映画はやっぱおバカ映画なのである。
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