見出し画像

Retro-gaming and so on

ベストRPGを考えられるプラットフォームは幸せだ

さて、海外でのレトロRPGの評価を二回にわたって書いたわけですけれども。
考えてみると、「ベスト」を考えられるプラットフォームは幸せなんですよ。世の中にはそんなのを考えられないプラットフォームがある。例えばセガSG1000マークIIIとか、ですね。
もうホントこれは言い訳にならない。NECがPCエンジンで、ゲーム機市場に参入したのはセガより遥かに後ですが、PCエンジンはRPGがたくさん揃っています。セガは揃っていない。しかも今プレイする価値があるのか・・・極めてビミョーなゲームが日本国内ではたった3本リリースされてるだけ、です。
メガドラだと本数はちょっと上向きましたが、「ちょっと」なだけです。後発のPCエンジンに比べると、セガのプラットフォームは圧倒的なRPG不足で、往年のゲーマーへのアピール力に欠けていました。セガはこの時期から結構ダメなプラットフォーマーだったんですよ(色々と理由はありますが、そのうちまとめて書くかもしれません。)。
取り敢えず、あまり知られていない、セガ SG1000〜マスターシステム時代のRPG、ベスト3(笑)を紹介しましょうか。順不同です。

まず前提として。
ファミコンでハイドライドスペシャルと題されたゲームが発売されたのが1986年3月28日。もちろんゼルダの伝説よりも後なんですが、パソコンでの大ヒットゲームがファミコンに移植された、と言うのは当時そこそこのニュースであり、別にそれが下地でもなんでもないんですが、いずれにせよ、その二ヶ月後に初代ドラクエがファミコンで発売されます。
初代ドラクエは最初は全然反応無かったんですが、少年ジャンプ上でのキャンペーンの効果もあって売上が伸びていきます。爆発的、って言って良い程です。それを請けてドラクエIIの製作も決定され、Iから1年を待たず、ドラクエIIは1987年1月26日に発売されます。今じゃ考えられない程の高速販売ですね(笑)。しかし、この辺りでRPG人気は確定し、ファミコンを軸としてブームが起きるわけですが・・・・・・。
まぁ、これを横目でセガが眺めていたわけですよね。そして1987年、つまりドラクエIIが発売されたこの年、セガのマークIII向けに何故かセガがRPGをいきなり3本リリースするわけですよ。そんなにセガ社内にマークIII向けのスタッフが揃ってたのか?・・・いや、ここでセガは版権を二本程外部の会社から取ります。つまり、「自社でイチから製作する」のは1本に留めておいて、取り敢えずパソコンでの人気作を手っ取り早く移植して販売しちゃえ、と言う安直な作戦に出るんですね。
と言うわけで、まずは一本目。

1. ブラックオニキス (1987年3月発売)

「国産RPG最初の大ヒット作」ってんで「名前だけ」は有名な本作ですが・・・。例えば2020年現在でもドラクエIはそこそこ遊べるでしょう。だけどブラックオニキスがそうか、と言うとそうでもない。両者とも「RPG初心者に対して難易度調整する」事に腐心していますが、全く方向性が違う。ドラクエの方が恒久性がある「難易度調整」なのです。
まずブラックオニキスはパーティ制なんで、そこだけはドラクエより上に思うかもしれませんが、職業が無いんですよね。もっと言っちゃうと全員戦士で魔法が無い。
そう、魔法がないRPGなんてつまらないんですよ。ドラクエは魔法の面白さを残してパーティ制をやめた。ブラックオニキスってのはその逆やっちゃってんですよね。そうなると、戦士だけの集団戦ってのは果たして今やっても面白いものなのか・・・。
まあ、セガとしては、当時PC上でそこそこ名を上げてるこのゲームだったら・・・と言うカンジで白羽の矢を立てたんでしょうねぇ・・・色々と間違ってますが(苦笑)。
何間違ったって、なんせこの時点でマークIIIを出してたのにも関わらず、もっと前の、SG-1000向けのゲームにしてリリースしちまった事です。従って同時期のゲームに比べると圧倒的にグラフィックがショボいのです。大丈夫か、セガ。

この後にファミコン用にリリースされたスーパー・ブラックオニキスの方が、色々と改良されている(魔法の導入等)んで、多分今でも遊べるゲームです。一方、このセガ版は忘れ去られて当たり前のように作られてるんで、やっぱ忘れ去られる運命だったんでしょうねぇ。





2. 覇邪の封印 (1987年10月発売)

ブラックオニキスの移植販売から約半年前後。セガはまたもや国産RPGでのヒット作の移植ブツを発売します。それがこれ、覇邪の封印。そう、ほぼ同時期に発売されたファミコン版では色々とイチャモン付けられてたゲームですよね(笑)。この当時はあまりまだ把握されてなかったんですが、メーカーが

「パソコンで大ヒットしたブツがコンシューマ市場で受け入れられるとは限らない」

のを知るのはもうちょっと先になるのです・・・・・・。

そもそも覇邪の封印ってゲームとして難があるんですよ。一番の問題点は「ゲームをやっててもマップがどうなってるのかサッパリ分からない」辺りです。まぁ、当時のコピープロテクションの一種なんですが、マップは布製の付属品が付いてきてて、そっちを見ながらやらんとゲームにならん。しかしそういう風に設計されてるゲームが普遍性があるわけないんで・・・。
しかもパーティを組んでる筈なのに戦闘はタイマン勝負って言うわけの分からなさ。結局戦闘自体はあまりおもしろくないゲームなんですよね。
オリジナルを作った工画堂って会社は、NEC PC-8801/9801だと美麗なグラフィックで有名な会社だったんですが、突き詰めると「グラフィックだけ」の会社なんですよね。作るゲームはそこそこPC上では売れて、名前も知られた会社なんですが、正直、ゲーム屋としては三流もいいトコだったと思います。
そんなトコの版権を嬉々としてとったセガ(笑)。その辺の「嗅覚」も・・・まぁ、ダメだったんでしょうねぇ。
いずれにせよ、これも、今やってみるにはあまり価値がないゲームなんじゃないですかねぇ。






3. ファンタシースター(1987年12月発売)

そして覇邪の封印の二ヶ月後、満を期してセガの完全自社開発のRPGが発売されます。その特徴は

・テキストは全部カタカナ
・街の人たちは全部突っ立ったままで彫像状態
・敵は複数出てきても全部同一種

と言うとんでもない仕様です。「えええ?」とか思うでしょ?しかも開発者の述懐見ると、「RPGと言うモノがどんなものか良く知らずに作った」とか言ってて。おいおいおい、何故に他社製品を研究せんのか。
要するにね、上に上げたブラックオニキスや覇邪の封印を何故あのようなカタチで移植/販売したのか。それも全てこれに由来しています。「RPGと言うモノがどんなものか良く知らない」から。プロなのに素人みてぇな事言ってんじゃねーよ(笑)。
これがセガ、なんですよね。だからこの会社には期待出来ない。アーケード屋としてはいざ知らず、コンシューマ向けのゲームメーカーとして考えると、本質的にはサイテーな方に分類されます。ビクター、とかバックインビデオとか(笑)、ファミコン/スーファミで底辺這いずってたメーカーにどっちかっつーと近いんですよ。
いや、人によっては「ファンタジーじゃなくってSFを選んだのは凄い、さすがセガだ」とか言いますが。ぶっちゃけ、ファンタジーかSFかってぇのはどうでも良くって。まずゲームシステムの基本をしっかりせぇよ、と。そこが良く出来てからこそのシナリオのオリジナリティなんであって、こういうRPGとしての基礎押さえてないのにオリジナリティ、なんつーのはむしろダメゲームの見本なんですよね。背伸びすんな、ってなる。
まぁ、当時のセガユーザーだと「これしかマトモに遊べるRPGがなかった」ってぇんで評価を高くせざるを得ないんでしょうが・・・いや、やっぱダメゲーはダメゲーであって、ファンタシースターってゲームこそが「何故にセガはダメなのか」を端的に語っているゲームだと思うのです。






番外編: ウルティマ IV 聖者への道(1990年)

海外合わせてもRPGは全くない、って言って良い程のセガの8bitコンソールなんですが。意外や意外、ファミコンでの大傑作RPGと言って良いUltima IVが海外では移植されています。しかも原作出版社のオリジンシステムズ自らの手によって、です。
どうやら、MSX版を基にしてるっぽいんですが、いずれにせよ、コンシューマ用としてはパソコン版に極めて近い精度で移植されてるのが、このマスターシステム版ウルティマIV 聖者への道、です。
ぶっちゃけ、ここまで見てきた4作品で、一番マトモなRPGがこれ、なんじゃないですか?しかもそれなのに、日本語ローカライズ版を売るように仕事しなかったセガって・・・てのがやっぱこの会社の限界なのです。




  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「SG-1000」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事