1)
アネモネ魔法学院には、薬草部という、魔法薬を調合することが趣味な生徒たちの部活がある。
自作の、体力回復ポーションを作ったり、かと思えば、生命力回復ポーションを作ったり、はたまた、魔力回復ポーションを作ったり…。気が付いたら、ポーションばかり作っているので、通称、ポーション部という、実名よりも長い呼び名がついてしまったことは、まぁ、置いておくとして、そのポーション部、もとい、薬草部の部室に、クオラはお邪魔していた。
「 ねぇ?この銀色の液体が入った魔法薬は?」
クオラが、珍しい色合いの魔法薬を手に、近くにいた部員、アリエル・ラファエロに尋ねた。
「 スミスノンね。別名、鍛冶イラズ。無機物の修復ができる魔法薬よ。
ハガネ草とリハブ草からできるわ。」
「 じゃあ、この黄色いのは?」
次に、黄色い液体が入ったビンを、アリエルに見せた。
「 デュナミス・リカバー。体力回復剤ね。リハブ草を、十日乾燥させて作るの。」
ついで、青い液体の【マギリカバー】は、魔力回復薬で、赤い液体が、【リブリターナー】という生命力回復薬だそうだ。使う草もそれぞれ教えてもらったが、そのどれもにリバブ草が使われていた。
「 いろいろ、あるのねぇ。」
クオラは、ふと、忘れ去られた様に置いてある紫の薬草に、視線が移った。
「 ねぇ?これは?」
アリエルは、不思議そうな顔で、分からないと答える。
「 おかしいわね?こんな薬草、置いていたかしら?
後で、顧問の先生に尋ねてみるわね。」
そういって、済まなそうな表情を、アリエルは見せた。
それが、アリエルを見た最後のときだった。
2)
翌日のこと、「 ポーション部のアリエルが、行方不明になったらしい。」との報が、学園を駆け巡った。この時点では、暇な学生のいい暇つぶしとして、ではあるが。
「 昨日は、元気だったのに。どこに?」
途方に暮れて、寮に戻ると、生きた風船のタフィがふわふわと近づいてきた。
「 元気ないわねぇ?具合でも?それとも…。」
クオラは、ふぅっとため息をつくと、今日あったことをタフィに語った。
タフィは、一通りクオラの話を聞くと、納得が行ったように体を揺らした。
「 わかったわ。失せ物探しの風船魔法を教えるから。」
「 たふぃ、ありがとう。」
クオラは、タフィにお礼をいうと、さっそく教えてもらうことにした。
【つづく】
「 」