1)
アリエルは、後ずさって、どこか、イカレタ感じの顧問の教諭から距離を取ろうとしたが、非情にも壁に阻まれてしまう。
「 だ、誰かぁ!たすけてぇ!」
アリエルは、ありったけの声で、助けを呼んだ。
「 ムリ、ムリ。ここは、隠し部屋の更に奥にある地下室よ。誰も助けには…。」
女教諭は、笑みを見せて、アリエルににじり寄ろうとした。
そのとき、何やら賑やかな曲が、部屋の中に大音量で響き渡った。
「 うっ…。うるさあああああいっ!誰よ?騒音鳴らしてるの!」
音源である廊下の方に、女教諭は振り向いて、持っていたナイフを床に落とした。
なぜかというと、フリルが多めのへそ出しルックに、同様のミニスカを着たツインテの少女が、ポーズを決めて立っていたからだ。
「 へっ…?」
「 まぢかる☆ばるん ぽわりん。参上ぉ!」
微妙な間が、三人の間に流れた。
2)
話は、数時間前にさかのぼる。
「 あのさぁ。タフィ?あたし、このまま助けに行ったら、ヤバクね?」
「 どうして?良いことするのに?」
「 アリエルに、正体ばれたくないというか。つかさ、犯人?」
「 犯人がどうしたのよ?教諭だとでもいいたいの?」
こくこくとクオラは頷いて、ばれない方法はないかと、タフィに尋ねたのだが、
「 それなら、変化の風船魔法を使えばいいわよ。緑の風船を使ってね。」
などと、あっさりと言ってのけた。
クオラは、言われた通り、ポシェットから緑の風船を取り出して、愛らしい唇を寄せる。
3)
は、恥ずかしいい~~~~
クオラは、内心で恥ずかしがりながら、犯人の女性に向かって、拘束の風船魔法を放った。
バウバウ吠えながら、犯人に向かっていったバルーンアートの風船わんこは、飛びかかった寸前にほどけて、犯人の体を縛り上げて拘束した。
「 んなっ!ほどけ…、ないっ!」
じたばたと暴れていた犯人だったが、どうやっても、抜け出せないと分ると大人しくなった。
その隙に、クオラは、アリエルの元に向かって、手を差し伸べる。
「 大丈夫?」
「 あ、ありがとう?」
クオラの手を握って、腰を浮かせながら、アリエルは戸惑いがちに礼を言った。
「 逃げましょ?」
と、クオラが誘うと、こくりと頷いた。
待ってという声が聞えたが、それをシカトして、手に手をとって、二人の少女は、地下室から抜け出した。電波が届く場所にまで逃げてから、城の詰め所に連絡を入れる。あとは彼らが何とかしてくれるだろう。アリエルを、女子寮まで送り届け、クオラは路地裏で変身を解いた。
【つづく】
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