Stelo☆ panero

変態ですがよろしくお願いします。更新は気分次第、気の向くままに。新題名は、エスペラント語で、星屑という意味だったり。

【風船魔導士 クオラ】 第十八時限目 アルギナ・アルカは薬草です⑥

2016-11-18 12:00:00 | 妄想小説

1)

 アリエルは、後ずさって、どこか、イカレタ感じの顧問の教諭から距離を取ろうとしたが、非情にも壁に阻まれてしまう。


  「 だ、誰かぁ!たすけてぇ!」

 


 アリエルは、ありったけの声で、助けを呼んだ。


  「 ムリ、ムリ。ここは、隠し部屋の更に奥にある地下室よ。誰も助けには…。」


 女教諭は、笑みを見せて、アリエルににじり寄ろうとした。

 そのとき、何やら賑やかな曲が、部屋の中に大音量で響き渡った。


  「 うっ…。うるさあああああいっ!誰よ?騒音鳴らしてるの!」


 音源である廊下の方に、女教諭は振り向いて、持っていたナイフを床に落とした。

 なぜかというと、フリルが多めのへそ出しルックに、同様のミニスカを着たツインテの少女が、ポーズを決めて立っていたからだ。


 「 へっ…?」


 「 まぢかる☆ばるん ぽわりん。参上ぉ!」


 微妙な間が、三人の間に流れた。


2)

 話は、数時間前にさかのぼる。


  「 あのさぁ。タフィ?あたし、このまま助けに行ったら、ヤバクね?」


  「 どうして?良いことするのに?」


  「 アリエルに、正体ばれたくないというか。つかさ、犯人?」


  「 犯人がどうしたのよ?教諭だとでもいいたいの?」


 こくこくとクオラは頷いて、ばれない方法はないかと、タフィに尋ねたのだが、


  「 それなら、変化の風船魔法を使えばいいわよ。緑の風船を使ってね。」


 などと、あっさりと言ってのけた。

 クオラは、言われた通り、ポシェットから緑の風船を取り出して、愛らしい唇を寄せる。



3)

 は、恥ずかしいい~~~~


 クオラは、内心で恥ずかしがりながら、犯人の女性に向かって、拘束の風船魔法を放った。

 バウバウ吠えながら、犯人に向かっていったバルーンアートの風船わんこは、飛びかかった寸前にほどけて、犯人の体を縛り上げて拘束した。


  「 んなっ!ほどけ…、ないっ!」


 じたばたと暴れていた犯人だったが、どうやっても、抜け出せないと分ると大人しくなった。

 その隙に、クオラは、アリエルの元に向かって、手を差し伸べる。


  「 大丈夫?」


  「 あ、ありがとう?」


 クオラの手を握って、腰を浮かせながら、アリエルは戸惑いがちに礼を言った。


  「 逃げましょ?」


 と、クオラが誘うと、こくりと頷いた。

 待ってという声が聞えたが、それをシカトして、手に手をとって、二人の少女は、地下室から抜け出した。電波が届く場所にまで逃げてから、城の詰め所に連絡を入れる。あとは彼らが何とかしてくれるだろう。アリエルを、女子寮まで送り届け、クオラは路地裏で変身を解いた。


【つづく】


 


【風船魔導士 クオラ】 第十七時限目 アルギナ・アルカは薬草です⑤

2016-11-16 12:00:00 | 妄想小説

1)

 クオラは、落ち着くように深呼吸をして、風船魔法で作り出したカラオケマイクに向かった。


    「 聴いてください。【まぢかる☆ばるん ふわりん】OP、今日もふわりん。」 


 今、流行りのアニメ。【まぢかる☆ばるん ふわりん】のOP曲が、風船魔法で出したカラオケから流れ出す。無伴奏では、ジャ○アンよりも音痴なクオラは、ノリノリのイントロの中、熱唱した。すると、静かだったアルギナ・アルカが、コウモリの翼を忙しくはためかせ、曲に合わせて踊りだした。くるくると踊る様は、なんだか可愛らしいアルギナ・アルカだが、攻撃するにしても、焼くにしても、面倒くさいことになる、厄介な薬草なのだ。いくら見た目が、コウモリの翼が生えたダイコンとはいえ、油断は禁物である。曲が終盤に近付くころになると、踊り疲れたのか、ふらふらと安定なく漂いはじめて、ぽてんと床に落ちてしまった。

 

  「 あっ、落ちた。今のうち…。」

 

 クオラは、眠り込んで空から落ちたアルギナ・アルカを、持っていた包丁で輪切りにした。


  「 ふぅぅっ。なんとか、退治できたわね。」


 輪切りにされて息絶えたアルギナ・アルカが、ぽんっと音を立てて、しぼんだ緑とピンクの二つの風船に変化した。


  「 あっ、ラッキ~♪」


 クオラは、風船を拾い集め、ポシェットの中に入れ込むと、アルギナ・アルカが通せんぼをしていた、隠し部屋の更に奥に、廊下があることを発見した。


  「 廊下があるね。」


  「 行ってみましょ?」


 タフィが、奥に向かうよう提案したので、クオラは乗ることにした。


2)

 探索の風船魔法は、付属に半透明のマップが、施術者の前に展開される。

 クオラは、そのマップを見ながら、青い光点に向けて、暗がりの廊下を歩いている。


  「 ここ、みたいだけど…。行き止まりじゃない。」


 クオラは、ガーゴイルの像が鎮座する台座しかない場所を見ながら、ため息をついた。


  「 もしかしたら、何らかの仕掛けがあるのかも? 」


  「 えぇぇっ。そんな安直な…。」


 タフィの推理に、クオラは、盛大にバカにしながら、片手を像に預けて、重心をかけた。


  「 きゃぁっ!」


 すると、ぐるりと像が九十度回り、何やら重々しい音を立てて、台座がクオラとは逆方向にスライドをしていくと、床にぽっかりと台座の底よりも、少し狭いくらいの正方形の穴が開いた。

 支えを失ったクオラは、絶叫を残して、暗い穴の中に落ちていく。


  「 うにゃあああああああああっ!」


  「 く、くおらちゃああんっ!」


 どだだだだだだという階段を転がり落ちるような音がして、クオラは地下に落ちていった。


3)

 その部屋では、壁面の蝋燭が、ゆらゆらと揺らめいて、ほのかな灯りを作り出していた。

 アリエルは、気が付いたら、妙に薬草臭い、この部屋に監禁されていた。

 他にも部屋は幾つかあって、正気を失ったような悲鳴が、今日も聞こえてくる。


   「 この薬草の臭いは、どこかで嗅いだような…?」


 アリエルは、記憶を手繰ろうとするが、すぐには、思い出せない。


  「 部室?薬草園?それとも、よく行く近所の森かしら?」


 口に出してみるが、どの場所も違うように思えてならない。

 考えても、詮無きことと思い直して、なぜ、ここに居るのかを思い出してみる。


  「 たしか、部室に変な薬草が置いてて、顧問のせんせ…。」


 そこまで、記憶を手繰ってみて、アリエルは思い出した。


  「 そうだ、ここの臭いは…。」


 アリエルは、殺気を感じて、部屋の入口に視線を移すと、顧問の教諭が佇んでいる。


  「 ラファエロさん、思い出しちゃったみたいね。」


 職員室で語り掛けた口調と同じ口調で、教諭は笑顔を見せた。

 しかし、目は笑っていない。逆に、冷めきっていて、極地の極寒を思わせた。


  「 ひっ…!」


 恐怖に後ずさりをしてアリエルは、教諭から距離を取る。

 なぜなら、彼女の手にはナイフが握られていたからだ。


  「 こ、来ないでっ!」


 更にアリエルは距離を取ろうとするが、背中に障害を感じ、今以上、距離が取れない。

 もう、ダメだっ! アリエルは、大声で助けを呼んだ。


4)

 階段から転げ落ち、全身をしこたま打ち付けて、クオラはよろよろと起きあげると、魔法薬を幾つか取り出して、服用した。クオラの内側から、暖かなオレンジの光が放たれ、ステータスが全回復する。


  「 さすが、薬草部の魔法薬。よく効くわ。」


 魔法薬の効き目に、クオラが気を良くしていると、女の子の悲鳴が廊下に響いた。


  「 この声は、アリエルね。行くよ、タフィ。」


  「 了解。」


 クオラは、タフィを引き連れて、悲鳴が聞こえた方向へ駆けていった。


 【三日後につづく】

  


 


【風船魔導士 クオラ】 第十六時限目 アルギナ・アルカは薬草です④

2016-11-06 12:00:00 | 妄想小説

1)

 あたし、クオラの相棒の巨大風船タフィが、嬉しそうに、宙で揺れながら、かく、のたまった。

 

    「 さぁ、歌って。」

 

 (いや、いきなし、歌ってというのも、かなりの無茶振りかと思うんだけど…。タフィ?)

 

 なんて、内心、冷や汗をかきながら、あたしは、深呼吸をした。

 観客は、蝙蝠の羽が生えた宙に浮く大根【アルギナ・アルカ】だ。

 この薬草だか、モンスターだか分からない、中途半端な存在は、燃やすと麻薬成分の入った煙を出すし、かと言って、攻撃すると、耳を突いても聞こえちゃう、狂い死にする悲鳴を出すしで、結構、厄介なやつらしい。唯一、歌を聞かせると、大人しくなって眠ってしまうそうなので、眠った隙に、胴体を輪切りにすると、討伐完了。という訳で、歌を歌うことになったんだけど…。どうしよう?無伴奏では、あたし、マンドレイク以上に音痴だよ。


   「 クオラちゃん、歌わないの?カラオケいる?」


 期待に満ちた目で、タフィがあたしを覗きこむ。


   「 …………いる。」


 長い沈黙の末に、あたしは、タフィに白旗を揚げた。


   「 おけ、おけ。カラオケの風船魔法あるよん♪」


 そんなのあるんかいっ!


2)

 ぷふぅぅぅ~~~~~っ!

 ぷふぅぅぅぅ~~~~~~っ!

 ぷふぅぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!

 

 と、黄色の魔法の風船に、吐息を吹き込む音が、謎の部屋に響いている。

 【アルギナ・アルカ】は、幸いにも、向こうからは襲ってこないので、安心して風船遊び、もとい、風船魔法を使えるわけだ。今、使おうとしているのは、あることが驚きだが、カラオケの魔法だということだ。


 ぷふぅぅぅ~~~~~っ!

 ぷふぅぅぅぅ~~~~~~っ!

 

 ぷふぅぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!

 

 

 何十回か、吐息を吹き込んでいくと、背丈ほど黄色の魔法の風船は膨らんでいた。

 ちゅっとキスを黄色い膜にすると、魔方陣が浮かび上がり、カラオケ魔法が完成する。

 宙に浮かんだ選曲リストから、曲を選ぶと、手元にマイクが出現し、イントロが流れ出した。

 クオラは、ままよと歌いだした。


【つづく】


 



 

 

 


【風船魔導士 クオラ】 第十五時限目 アルギナ・アルカは薬草です③

2016-11-04 18:30:19 | 妄想小説

 トラップの先には、背中に蝙蝠の羽が生えている大根がいた。

 クオラが、振り向くと、姿見が背後にある。素直に考えると、姿見の中に引き込まれたらしい。どう見ても逃げられないので、前を塞ぐ謎の大根について、タフィに尋ねてみる。


  「 タフィ、あの大根って、何?」


  「 あれは、マンドレイクの品種で、アルギナ・アルカね。

    ああ見えても、薬草…というより、精神に作用する毒草ね。」


 タフィの説明によると、アルギナ・アルカを乾燥させて、タバコのように吸引すると、途轍もない多幸感を得て、痛みも遠のくが、一旦、薬の効果が切れると、ショック死もありうる地獄の痛みが待っている。要は、覚醒剤だった。


  「 倒すには?」


  「 攻撃すると、耳を突いても聞こえちゃう、狂い死にする悲鳴を出すし。」


  「 うん。」


  「 焼くと、毒の煙が広がっちゃうし。」


  「 うん。って、八方塞がりじゃない?」


  「 だから、歌ね。歌を聞かせると、眠っちゃうから、その隙に。」


 タフィの説明で、クオラは歌うことになってしまった。


【二日後につづく】

 

  







  

 


【風船魔導士 クオラ】 第十四時限目 アルギナ・アルカは薬草です②

2016-11-02 12:00:00 | 妄想小説

1)

 ぷふぅぅぅ~~~~~っ!

 ぷふぅぅぅぅ~~~~~~っ!

 ぷふぅぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!

 

 と、吐息を吹き込む音が、クオラの部屋に響いている。

 クオラは、タフィが、探索の風船魔法を伝授したので、試験がてら使用してみることにしたのだ。いつ破裂するか、どきどきしながら、めいっぱい、かつ、慎重に、クオラは、息を吹き込む。 そうして、手のひらに乗せるほどだった風船は、クオラの身体を隠すほどにまでに、いつしか、ふくらんでいた。もういいよという、タフィの声を合図に、クオラは、風船の吹き口から、唇を放した。つぅっと、唾液が橋をかけて、クオラの形の良い唇は、風船から離れる。


 「 ぷはぁっ!」

 

 「 クオラ、魔法の紐で結ぶのを忘れないでね。」

 

 「 おけ、おけって。うわっ!でっか。」

 

 ふくらましている最中には気づかなかったが、8フィートは膨らんでいるのじゃなかろうか?

 人差し指から発する光の紐で、風船の口をしばりながら、クオラは、そう思った。

 

 「 じゃあ、いつものように、キスを風船にしてね。探したい人の顔を、思い浮かべながら。」

 

 「 はぁい。」

 

 タフィに言われた通り、アリエルの顔を思い描きながら、巨大な風船にキスをすると、ふわりと重力に反して浮き上がっていく。風船が浮き上がるのにつられて、クオラの身体も宙に持っていかれそうになる。

 

 「 ひゃっ!」

 

 驚いて、持っていた紐を放すと、部屋の天井を風船はすり抜け、宙へと舞っていく。

 すると、不思議なことに、クオラの目の前に半透明のマップが表示された。

 

  「 マップが出て来たでしょ?白い光点が風船、青が目的地。赤が障害物、もしくは、敵。」

 

  「 黄色は?」

 

  「 一般人ね。無視していいわ。」

 

 わかったといって、クオラは、マップに集中した。


  「 いたっ!でも、これって。」


 クオラが、見つめているマップには、確かに、青いマーカーが点灯していた。

 ただし、部屋の外、壁の中に…。


2)

 アリエルがいると思われる場所に着くと、そこは、壁に埋め込まれた姿見があった。

 一見、ただの鏡に見えるそれは、タフィの見立てに寄ると、個人認証型の転移魔法らしい。


    「 誰が、これを?」


   不審に思って調べようと、姿見に触れようとしたときだった。

   不可視のトラップが作動した。


【つづきは、二日後】