Stelo☆ panero

変態ですがよろしくお願いします。更新は気分次第、気の向くままに。新題名は、エスペラント語で、星屑という意味だったり。

【風船魔導士 クオラ】 第十九時限目 アルギナ・アルカは薬草です⑦

2018-12-31 14:45:53 | 妄想小説

1)

 人づてで聞いた伝聞では、薬草部のアリエル騒動から間も無くして、件の犯人は、秘密裏に処刑されたらしい。今は新しい教諭が、彼女の後釜として、薬草部の顧問を務めているし、忙しすぎる教師の勤務体制は見直され、副担任も増えている。だが、アルギナ・アルカ中毒者は、減ってはいない。

    『 嫌な現実から逃げ出したい…とか、何でもいいから、ストレスを解消したいっていう人種は、

     いつの時代も、一定数存在するからね。

      そんな社会システムそのものを改善しない限り、アルギナ・アルカ中毒者は、無くならないよ。』

  というのが、件の犯人の遺言だったという。

 

     「 なんかさ。すっきりしない事件だったよね。」

 

 放課後、人通りが多い舗道を歩きながら、クオラは指に絡めた紐を結わえて浮かんでいる風船のタフィに話しかけた。

 ぱっと見、魔法陣が表面に浮かんだ、ただの大きめな風船だが、その正体は、遥か昔に栄えた古代文明の大魔導師というタフィは、

    「 まぁ、あたしの時代にも、そういう人いたからねぇ。」

 と、仕方ないよとため息交じりに、クオラに答えている。

    「 タフィは、そういうときには、どうしていたの?」

 ふと、気になったクオラは、タフィに尋ねてみると、風船遊びをして、解消していたらしい。

 流石、いつのまにか、風船になっていたタフィ、……………らしいというか、なんというか。

 その後も他愛もない話を、タフィとしながら、クオラは女子寮に帰ったのだった。

 

2)

 まったくもって上手くいかない。

 生物から生じる様々な負の因子を核として、その核が大量の魔素をまとって具現化した存在がモンスターであるという、王立魔学分析院の魔学者アリスティアの負核因子仮説を主張する非生物派と、生物学者ヴェンデが唱える、モンスターとは、魔素が少ない環境が生んだ、大量の魔素の元となる新種の生物であるという生物派の二派閥に、モンスターの発生要因は別れているが、その片方、非生物派を支持する秘密結社【アレスティアの信者(アリスティア・クレデェード)】の枢機卿は、苛立っていた。

 魔法学院の学生くらいの年齢の少女にターゲットを絞って、彼らの学説が正しいことを、立証しようと暗躍しているものの、なぜか、正体不明の邪魔が入り、芳しい成果が得られていないのが、現状だった。

 何か良い手はないか…。

 枢機卿は、次の手を考え始める。

 

【つづく】

 

 

 

 

 


【風船魔導士 クオラ】 第十八時限目 アルギナ・アルカは薬草です⑥

2016-11-18 12:00:00 | 妄想小説

1)

 アリエルは、後ずさって、どこか、イカレタ感じの顧問の教諭から距離を取ろうとしたが、非情にも壁に阻まれてしまう。


  「 だ、誰かぁ!たすけてぇ!」

 


 アリエルは、ありったけの声で、助けを呼んだ。


  「 ムリ、ムリ。ここは、隠し部屋の更に奥にある地下室よ。誰も助けには…。」


 女教諭は、笑みを見せて、アリエルににじり寄ろうとした。

 そのとき、何やら賑やかな曲が、部屋の中に大音量で響き渡った。


  「 うっ…。うるさあああああいっ!誰よ?騒音鳴らしてるの!」


 音源である廊下の方に、女教諭は振り向いて、持っていたナイフを床に落とした。

 なぜかというと、フリルが多めのへそ出しルックに、同様のミニスカを着たツインテの少女が、ポーズを決めて立っていたからだ。


 「 へっ…?」


 「 まぢかる☆ばるん ぽわりん。参上ぉ!」


 微妙な間が、三人の間に流れた。


2)

 話は、数時間前にさかのぼる。


  「 あのさぁ。タフィ?あたし、このまま助けに行ったら、ヤバクね?」


  「 どうして?良いことするのに?」


  「 アリエルに、正体ばれたくないというか。つかさ、犯人?」


  「 犯人がどうしたのよ?教諭だとでもいいたいの?」


 こくこくとクオラは頷いて、ばれない方法はないかと、タフィに尋ねたのだが、


  「 それなら、変化の風船魔法を使えばいいわよ。緑の風船を使ってね。」


 などと、あっさりと言ってのけた。

 クオラは、言われた通り、ポシェットから緑の風船を取り出して、愛らしい唇を寄せる。



3)

 は、恥ずかしいい~~~~


 クオラは、内心で恥ずかしがりながら、犯人の女性に向かって、拘束の風船魔法を放った。

 バウバウ吠えながら、犯人に向かっていったバルーンアートの風船わんこは、飛びかかった寸前にほどけて、犯人の体を縛り上げて拘束した。


  「 んなっ!ほどけ…、ないっ!」


 じたばたと暴れていた犯人だったが、どうやっても、抜け出せないと分ると大人しくなった。

 その隙に、クオラは、アリエルの元に向かって、手を差し伸べる。


  「 大丈夫?」


  「 あ、ありがとう?」


 クオラの手を握って、腰を浮かせながら、アリエルは戸惑いがちに礼を言った。


  「 逃げましょ?」


 と、クオラが誘うと、こくりと頷いた。

 待ってという声が聞えたが、それをシカトして、手に手をとって、二人の少女は、地下室から抜け出した。電波が届く場所にまで逃げてから、城の詰め所に連絡を入れる。あとは彼らが何とかしてくれるだろう。アリエルを、女子寮まで送り届け、クオラは路地裏で変身を解いた。


【つづく】


 


【風船魔導士 クオラ】 第十七時限目 アルギナ・アルカは薬草です⑤

2016-11-16 12:00:00 | 妄想小説

1)

 クオラは、落ち着くように深呼吸をして、風船魔法で作り出したカラオケマイクに向かった。


    「 聴いてください。【まぢかる☆ばるん ふわりん】OP、今日もふわりん。」 


 今、流行りのアニメ。【まぢかる☆ばるん ふわりん】のOP曲が、風船魔法で出したカラオケから流れ出す。無伴奏では、ジャ○アンよりも音痴なクオラは、ノリノリのイントロの中、熱唱した。すると、静かだったアルギナ・アルカが、コウモリの翼を忙しくはためかせ、曲に合わせて踊りだした。くるくると踊る様は、なんだか可愛らしいアルギナ・アルカだが、攻撃するにしても、焼くにしても、面倒くさいことになる、厄介な薬草なのだ。いくら見た目が、コウモリの翼が生えたダイコンとはいえ、油断は禁物である。曲が終盤に近付くころになると、踊り疲れたのか、ふらふらと安定なく漂いはじめて、ぽてんと床に落ちてしまった。

 

  「 あっ、落ちた。今のうち…。」

 

 クオラは、眠り込んで空から落ちたアルギナ・アルカを、持っていた包丁で輪切りにした。


  「 ふぅぅっ。なんとか、退治できたわね。」


 輪切りにされて息絶えたアルギナ・アルカが、ぽんっと音を立てて、しぼんだ緑とピンクの二つの風船に変化した。


  「 あっ、ラッキ~♪」


 クオラは、風船を拾い集め、ポシェットの中に入れ込むと、アルギナ・アルカが通せんぼをしていた、隠し部屋の更に奥に、廊下があることを発見した。


  「 廊下があるね。」


  「 行ってみましょ?」


 タフィが、奥に向かうよう提案したので、クオラは乗ることにした。


2)

 探索の風船魔法は、付属に半透明のマップが、施術者の前に展開される。

 クオラは、そのマップを見ながら、青い光点に向けて、暗がりの廊下を歩いている。


  「 ここ、みたいだけど…。行き止まりじゃない。」


 クオラは、ガーゴイルの像が鎮座する台座しかない場所を見ながら、ため息をついた。


  「 もしかしたら、何らかの仕掛けがあるのかも? 」


  「 えぇぇっ。そんな安直な…。」


 タフィの推理に、クオラは、盛大にバカにしながら、片手を像に預けて、重心をかけた。


  「 きゃぁっ!」


 すると、ぐるりと像が九十度回り、何やら重々しい音を立てて、台座がクオラとは逆方向にスライドをしていくと、床にぽっかりと台座の底よりも、少し狭いくらいの正方形の穴が開いた。

 支えを失ったクオラは、絶叫を残して、暗い穴の中に落ちていく。


  「 うにゃあああああああああっ!」


  「 く、くおらちゃああんっ!」


 どだだだだだだという階段を転がり落ちるような音がして、クオラは地下に落ちていった。


3)

 その部屋では、壁面の蝋燭が、ゆらゆらと揺らめいて、ほのかな灯りを作り出していた。

 アリエルは、気が付いたら、妙に薬草臭い、この部屋に監禁されていた。

 他にも部屋は幾つかあって、正気を失ったような悲鳴が、今日も聞こえてくる。


   「 この薬草の臭いは、どこかで嗅いだような…?」


 アリエルは、記憶を手繰ろうとするが、すぐには、思い出せない。


  「 部室?薬草園?それとも、よく行く近所の森かしら?」


 口に出してみるが、どの場所も違うように思えてならない。

 考えても、詮無きことと思い直して、なぜ、ここに居るのかを思い出してみる。


  「 たしか、部室に変な薬草が置いてて、顧問のせんせ…。」


 そこまで、記憶を手繰ってみて、アリエルは思い出した。


  「 そうだ、ここの臭いは…。」


 アリエルは、殺気を感じて、部屋の入口に視線を移すと、顧問の教諭が佇んでいる。


  「 ラファエロさん、思い出しちゃったみたいね。」


 職員室で語り掛けた口調と同じ口調で、教諭は笑顔を見せた。

 しかし、目は笑っていない。逆に、冷めきっていて、極地の極寒を思わせた。


  「 ひっ…!」


 恐怖に後ずさりをしてアリエルは、教諭から距離を取る。

 なぜなら、彼女の手にはナイフが握られていたからだ。


  「 こ、来ないでっ!」


 更にアリエルは距離を取ろうとするが、背中に障害を感じ、今以上、距離が取れない。

 もう、ダメだっ! アリエルは、大声で助けを呼んだ。


4)

 階段から転げ落ち、全身をしこたま打ち付けて、クオラはよろよろと起きあげると、魔法薬を幾つか取り出して、服用した。クオラの内側から、暖かなオレンジの光が放たれ、ステータスが全回復する。


  「 さすが、薬草部の魔法薬。よく効くわ。」


 魔法薬の効き目に、クオラが気を良くしていると、女の子の悲鳴が廊下に響いた。


  「 この声は、アリエルね。行くよ、タフィ。」


  「 了解。」


 クオラは、タフィを引き連れて、悲鳴が聞こえた方向へ駆けていった。


 【三日後につづく】

  


 


【風船魔導士 クオラ】 第十六時限目 アルギナ・アルカは薬草です④

2016-11-06 12:00:00 | 妄想小説

1)

 あたし、クオラの相棒の巨大風船タフィが、嬉しそうに、宙で揺れながら、かく、のたまった。

 

    「 さぁ、歌って。」

 

 (いや、いきなし、歌ってというのも、かなりの無茶振りかと思うんだけど…。タフィ?)

 

 なんて、内心、冷や汗をかきながら、あたしは、深呼吸をした。

 観客は、蝙蝠の羽が生えた宙に浮く大根【アルギナ・アルカ】だ。

 この薬草だか、モンスターだか分からない、中途半端な存在は、燃やすと麻薬成分の入った煙を出すし、かと言って、攻撃すると、耳を突いても聞こえちゃう、狂い死にする悲鳴を出すしで、結構、厄介なやつらしい。唯一、歌を聞かせると、大人しくなって眠ってしまうそうなので、眠った隙に、胴体を輪切りにすると、討伐完了。という訳で、歌を歌うことになったんだけど…。どうしよう?無伴奏では、あたし、マンドレイク以上に音痴だよ。


   「 クオラちゃん、歌わないの?カラオケいる?」


 期待に満ちた目で、タフィがあたしを覗きこむ。


   「 …………いる。」


 長い沈黙の末に、あたしは、タフィに白旗を揚げた。


   「 おけ、おけ。カラオケの風船魔法あるよん♪」


 そんなのあるんかいっ!


2)

 ぷふぅぅぅ~~~~~っ!

 ぷふぅぅぅぅ~~~~~~っ!

 ぷふぅぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!

 

 と、黄色の魔法の風船に、吐息を吹き込む音が、謎の部屋に響いている。

 【アルギナ・アルカ】は、幸いにも、向こうからは襲ってこないので、安心して風船遊び、もとい、風船魔法を使えるわけだ。今、使おうとしているのは、あることが驚きだが、カラオケの魔法だということだ。


 ぷふぅぅぅ~~~~~っ!

 ぷふぅぅぅぅ~~~~~~っ!

 

 ぷふぅぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!

 

 

 何十回か、吐息を吹き込んでいくと、背丈ほど黄色の魔法の風船は膨らんでいた。

 ちゅっとキスを黄色い膜にすると、魔方陣が浮かび上がり、カラオケ魔法が完成する。

 宙に浮かんだ選曲リストから、曲を選ぶと、手元にマイクが出現し、イントロが流れ出した。

 クオラは、ままよと歌いだした。


【つづく】


 



 

 

 


【風船魔導士 クオラ】 第十五時限目 アルギナ・アルカは薬草です③

2016-11-04 18:30:19 | 妄想小説

 トラップの先には、背中に蝙蝠の羽が生えている大根がいた。

 クオラが、振り向くと、姿見が背後にある。素直に考えると、姿見の中に引き込まれたらしい。どう見ても逃げられないので、前を塞ぐ謎の大根について、タフィに尋ねてみる。


  「 タフィ、あの大根って、何?」


  「 あれは、マンドレイクの品種で、アルギナ・アルカね。

    ああ見えても、薬草…というより、精神に作用する毒草ね。」


 タフィの説明によると、アルギナ・アルカを乾燥させて、タバコのように吸引すると、途轍もない多幸感を得て、痛みも遠のくが、一旦、薬の効果が切れると、ショック死もありうる地獄の痛みが待っている。要は、覚醒剤だった。


  「 倒すには?」


  「 攻撃すると、耳を突いても聞こえちゃう、狂い死にする悲鳴を出すし。」


  「 うん。」


  「 焼くと、毒の煙が広がっちゃうし。」


  「 うん。って、八方塞がりじゃない?」


  「 だから、歌ね。歌を聞かせると、眠っちゃうから、その隙に。」


 タフィの説明で、クオラは歌うことになってしまった。


【二日後につづく】