今日の出来事

一生懸命に毎日を生きる子どもの姿。そして、そんな子ども達に寄り添う、先生たちの思いを綴ります。

主体的であるということ

2025年01月16日 | 今日の出来事
「おかわりしたいひといるー!」
「はーい!」
賑やかな食卓の端から端を飛び交うのは、さっきまでカレーを作っていた子ども達の声。


遡ること1時間半。
エプロンと三角巾を身にまとった幼児クラス総勢24名は、保育室の中心に置かれた食材を見つめていました。
作業手順と注意事項を伝えます。
カレーとサラダとご飯をクラス毎に分担させ、それぞれに最大級の責任を与えました。

年少から年長まで、任せた工程には差があります。
米とぎと炊飯だけの年少組からは「それだけ?」という声も上がりました。
包丁を握らせた年長組の子は、一仕事終えた後に肩を回しながら大きな息を吐いていました。

カレーライスに付け合わせのフレンチサラダ。
主役はカレーで、サラダは脇役?
そもそもご飯は、作るという工程にすら入らないかもしれません。

しかし何かが一つでも欠けたらお昼ご飯は成立しない。
子ども達はそういう意気込みで取り組んでくれました。


そうして出来上がったお昼ご飯。
自分達が携わったご飯を前に、保育室はふわふわとした雰囲気に包まれています。
お当番さんの代わりに並んだ年長組は、浮足立つというよりは、落ち着いている。

責任感と達成感を味わった子どもは、はしゃぐ代わりに胸を張ることがあります。
大きな行事を終えると大きくなったように見えるのは、そういう事かもしれません。

「いただきます!」
いつもより大きな声で互いの苦労を、そして自分を労っていました。

お代わりをよそっていた担任は、その場から離れられないでいます。
椅子から腰を浮かしながら最後のひとくちを運び列に並ぶ子。

「おかわりしたひといるー!」は、楽しい食事を分かち合う喜びから出た一言なのでしょう。

主体的な取り組みというものは、楽しい。
子どもも、そこにいる大人も。
ちょびっとだけ成長します。子どもも、大人も。
そしてどうやら、子ども自身に友達への配慮まで気付かせる効果があるようです。

手を取って、寄り添って

2025年01月08日 | 今日の出来事
今日は幼児クラスが発表会の練習をしました。
発表会は区民センターのホールで開催します。
200人も入る大きな会場です。

保育室とは違うから、大きな声を出さないと遠くまで聞こえません。
歌うことが苦手なその男の子は、次第に心細くなってしまいました。

客席から見ていた私にも、男の子の目が潤んでいるのが分かります。
立ち上がって近づこうとしたその時。

鼻をすする音が聞こえたのでしょうか?
隣にいた女の子が男の子の様子に気付きました。
どうしたの?
だいじょうぶ?
まわりの子は歌っているから聞こえませんが、そう言っているように見えます。

女の子は自分の立ち位置を変えず、男の子の手を取りました。
なにがそうさせたのかは女の子しか知りません。
手をつないだまま、女の子は手を前後に振り始めました。
楽しい合唱の時によく見られるあの所作です。

女の子、もう片方の隣にいる子の手までつないで盛り上げようとしています。
予定されていない動きですが、その周辺だけ楽しい雰囲気が漂っていました。

繊細な心の持ち主は、お友達の心の揺らぎにも敏感で、その対処方法を知っていました。

ゆずレモンが教えてくれたこと

2024年12月15日 | 今日の出来事
昼ごはんを食べて、お昼寝という時間帯。
年長児クラスだけを連れて少し遠い公園に来た時のこと。
ブランコや池周辺の探索をして遊んでいると…

一人の女の子が腹痛を訴えました。
女性の先生に付き添われてトイレに行き、一安心。かと思いきや…

しばらくすると…またお腹が痛いんだって。
「またトイレ行く?」
「ううん、出ない」
冷えたかな…
おなかを押さえてしゃがんでいます。

冷えが原因ならと、自販機で”あった~い”ゆずレモンを買って渡しました。
「どお?」
「うん、気持ちいい…」
「だいじょぶ?」
「だいじょぶ」

この時、他の6人はというと…
「先生、俺これがいい!」
「あたしこれ!」
「先生ずるーい!」

「いやいや、飲むわけじゃないし」
「だってほら、〇〇ちゃん苦しそうじゃん」
言っても、好き勝手に自販機のボタンを押す手が止まりません。
帰り道、女の子の一人が頬を膨らませていました。
「先生ったら、ずるいんだから!もう嫌い!」
その子の様子を見ながら思い出したのは、秋の保護者会。


レジメの中に、園長が担当した”こども観”に関する文章がありました。
タイトルは『家庭でのしつけと自分で考える経験』

小学校6年生になっても身の回りのことがろくにできない子がいる。
そんな事例を挙げながら、子どもの自立を促すことのススメをまとめた文書でした。

今回のゆずレモンの件は、怒った子にとっては不公平なのでしょう。
ずるーい!でいい。
しかし、その子の価値観における不公平を解決する方法は、全員に買ってあげることしかありません。
でもそんなことはしない。
言わせておけばいい。

子ども達を見ていると、そういうことに苦心している親御さんが多そうだなと思います。
この絵本を読むまで帰らない!
気が済むまで見ていなければここを動かない!
ママのお迎えはイヤ!
お野菜は嫌いだから食べない!
あぁしたい!こうしたい!……

いろんな気持ちを訴えるのは子どもの自由だし、自立に向けた大切な過程です。
自分で決めた行動を、自分で成し遂げたいというのは、これからの自主性を育むうえで必要です。
そんなことは分かっている。けど…

家庭には家庭のルールや都合があって、それをコントロールするのは親。
子どもの言うことを全て受け入れていたら、家庭がまわりません。
親が決めたルールに従うのは当然。
勿論、親が言うことの全てに合理性があるわけではない。
そういうことがあって然るべきです。
それが親子だし、家庭というものでしょ?

家族の中心は子ども。
のみならず、あらゆることの中心が子どもである家庭が多い気がします。

おさなごは自由闊達に生きる。
小学校に上がっても、自由奔放に振る舞ってしまう。
急にルールや制限が増えて対応しきれない。
だから学校には行きたくない。
そうなって欲しくはありません。

家庭で好き勝手が許されている子は、保育園や学校でも修正ができません。
なかなかそういうことが難しい時代になった。
保護者会でも園長はそう言っていますし、確かにそういう時代です。
子ども達を待っているのは、自らを律せねば生きられない厳しい現実だということです。
壁にぶつかった時に、乗り越えるか?それとも逃げるか?
幼児期の子ども達を見ていると、それができそうな子と難しそうな子が透けて見えてきます。


あぁちなみに。
お腹が痛かった女の子は、園に着くころには元気になりました。

冬日和に昇る声

2024年12月13日 | 今日の出来事
とある師走の昼下がり。
年長クラスと来た公園の滑り台に寝そべる。
息を整えながら、ついでに雲一つない空を見上げています。

「先生みーつけた。何してんの?」
「うん、ダッシュし過ぎてね…」
「じゃ今度は先生がオニね」

残酷な指示を出して子ども達は走り出します。
筋トレやってサンバを踊ってても持久力がダメか…(笑)

ヨチヨチ歩きが、大人と追いかけっこできるまで。
歩きたてと手をつないで、そして月日が経ってもまだ手をつないで歩く。

年越しまでのカウントダウンが始まっています。
卒園までのカウントダウンが、この頃に始まります。

全力後記

2024年10月19日 | 今日の出来事
運動会開催前日の昨日、担任のひとりが言いました。
「明日の持ち物を言うから、しっかり覚えておいてね」
「明日はやる気と元気だけ、しっかり忘れずに持ってきてください」

そうして迎えた本番。
短くか細い手足をいっぱい振って、
それぞれがこの瞬間に出せる全力を披露してくれました。

私達は言います。
慣れない場所だから。
パパやママがいっぱい見てるから。
それでも出せるチカラで十分だから。

しかし、子ども達にそうした同情は不要でした。
今年もやってくれました。

忘れずに持ってきたやる気と元気は、綺麗な花となって咲きました。
それは大人達の注目と称賛を一身に受けました。

来場した全ての方の笑顔は、苦労して準備をした先生達を労ってくれました。
もちろん、江戸城の私達も。


また、笑っていただけるように。
また、感動していただけるように。
また、会場でお会いしましょう。