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ベルトー VS サンマルティーニ(ディスコグラフィー 1)

2017年05月11日 | 今日聴いたCD
(承前)
目立たないが、最近、マルタン・ベルトーのチェロ・ソナタをオリジナル楽譜、ピリオド楽器で録音したCDが充実している。うれしいことである。もっと早く気が付けばよかったのだが、ここ数年、CDプレーヤーを更新するまではCDをほとんど聴かなかったし買わなかったので致し方ない。それにしても、ベルトーの音楽が、当時に近い演奏で鑑賞できるのは素晴らしいことだ。
今回、ベルトーの記事をまとめるのに際し参考に聴いたCDのいくつかをご紹介したい。

特筆すべきは、最も新しいコワンの録音(2013年)である。レッスン名曲(?)ともされる「サンマルティーニのソナタ・ト長調」(第3番)だけでなく、ベルトーの作品1(1748年出版)から主要な作品を集めたアルバムであり、ベルトーの音楽を知るうえで大変貴重だ。1曲だけをとり上げるのではなく、出版譜全体に目を配った取り組みは、商売にはならないだろうが、評価に値する。モファットとは正反対の行き方だ。「発見」から100年余りの間に古い音楽に対するアプローチに大きな変化があった。このような方法は、今後の古い時代のチェロ音楽、バロック音楽の演奏に大きく貢献することだろう。ヨーロッパの図書館にはまだまだ古い楽譜が豊かな鉱脈のように眠っているのではないだろうか。将来、ベルトー周辺の音楽が発掘されて耳にできるのが楽しみである。

コワンの演奏は、華麗な装飾音が付加され、華やかでスタイル感があるものだ。古色蒼然たる音楽ではなく、瑞々しい響きとなって蘇り現代のわれわれに訴えかけてくる。パトロンの館でワインを飲みながら楽しむ雰囲気とともに現代人の心にも寄り添う音楽とも言えるだろうか。これが本来のベルトーだとすれば、レッスンの課題曲としては不適切、かも知れない(笑)。リーフレットの解説も本格的であり、得るところが多い。

Martin Berteau: "Sonatas & airs for violoncello" Christophe Coin, Petr Skalka, Felix Knecht; violoncello, Markus Huuinger; harpsichord. recorded in 2013. Glossa, GCD 922512.




L.ローズのチェロによる「ソナタ・ト長調」他を収めた1953年録音のLP(ML 4984)のCD復刻版。チェロ名曲として採り上げられている。徹頭徹尾サンマルティーニの作品と信じて疑わない演奏(笑)。もちろん、モダン・チェロ、ピアノ伴奏による演奏で、ある意味、伝統的な演奏の代表的なものと言えるであろう。

ベルトーの時代ではなく、この録音当時の時代の音楽性を強く感じる。モファットの「発見」から40年ほど後の演奏ということになる。コワンのアプローチの対極にある「芸術性溢るる」演奏で、レッスン名曲のお手本としてはこちらの方が相応しいかも知れない。いや、皮肉ではなく、ローズの演奏には嫌味やとってつけたようなところはまったくなく、自然で端正に流れている。恐れずに付け足せば、ベルトーの「よさ」は、どんなスタイルで奏されても滲み出るという証明かも知れない。

"Schubert: Sonata in a minor for cello and piano..." Leonald Rose, vc., Leonid Hambro, pf. recorded in 1953. Sony, SMK 89749.



ベルトー VS サンマルティーニ
ベルトー VS サンマルティーニ(続)
ベルトー VS サンマルティーニ(付録)
ベルトー VS サンマルティーニ(ディスコグラフィー1)
ベルトー VS サンマルティーニ(ディスコグラフィー2)
ベルトー VS サンマルティーニ(ディスコグラフィー3)
ベルトー VS サンマルティーニ(ディスコグラフィー4)
ベルトー VS サンマルティーニ(エピローグ)


2 コメント

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不思議な違和感 (isis)
2017-05-13 23:46:52
せろふえさん、こんばんは。

コメント、恐れ入ります。
ベルトー問題(笑)、正直難しかったです。終わってやっと肩の荷が下りた感じです。これで誤訳と誤解がなければいいのですが。。

昔、サンマルティーニのリコーダー・ソナタを吹いたことがありますが、このチェロ・ソナタを弾いたとき、昔の「感じ」がなく、違和感を感じたのがきっかけでした。やはり、カンツォーネとシャンソンくらいの違いがあったというわけです(飛躍し過ぎかも)。

この問題に首を突っ込んだおかげで、練習時間がだいぶ失われました。これから取り返したいです(笑)。
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re:ベルトー (せろふえ)
2017-05-13 08:02:18
isisさま
 一連のサンマルティーニとベルトーの記事、大変勉強になりました。こうやってまとめてもらえると貴重な資料となりますね。
 僕自身は練習したことないですが、そのうち、と思いました。
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