更年期障害とその他もろもろのストレスがたまりにたまって、心身ともに最悪な状態となったのが、ちょうどコロナ禍の始まりと重なった。
文字通り、ステイホームの日々を約半年続けた。
月単位で仕事を休んだのは、95年にヒマラヤ登山隊に参加したとき以来のことだった。
更年期は、劇的にホルモンバランスが変化するので、自律神経がうまく働かなくなったり、精神にも影響が出たりする。
私の場合、なぜかわからないけれど、極端に人と接するのが怖くなった。
今思うと、あの頃は何か得たいの知れない恐ろしい「もののけ」に憑かれていた···と思うほど、大きな不安にとりつかれていた感じがする。
玄関の外へ一歩出るのさえ怖く、あの頃の自分の恐怖の対象が、はたして、皆と同じく新型のウィルスだったのか否か、今思い起こしてみても、定かでないところがある。
外が怖いぶん、家の中からは不気味なものを徹底的に排除しようと、家じゅうの片付けに没頭した。
文字通り寝食忘れて没頭したので、体重がかなり減った。
あの辛さと引き換えに得た唯一の良いことは、中年肥りを解消できたことだ。
家の片付けがある程度進むにつれ、少しづつ外へ出られるようになった。
まずは、人に会わない時間帯、つまり、夜が明ける前に起き出して、近所の公園を散歩するようになった。
夜眠れなくなって、朝早く目が覚めるようになるのも、エストロゲンの分泌が減るからである。
2月で寒い時期だったけれど、昇ってくる太陽の光が身体にあたると、勇気が少しわいてくる感じがした。
更年期を迎えること事態は自然なことで病気ではないが、症状がつらく、日常生活に支障をきたすようになると、病気の範疇となる。
内科を受診すれば「自律神経失調症」と診断名がつき、精神科へ行って相談すると「適応障害」とか「うつ病」などと言われたりする。
更年期は、閉経の前後5年づつ、計10年間も続く。
この時期は、仕事で中間管理職になって荷が重くなったり、家庭の問題や親の介護等、他のストレス要因が重なりやすい時期でもある。
日本の多くの職場は男性が仕切っているので、更年期症状に悩む女性への理解や認知は、まだまだ乏しいのではないかと思う。
医療者の集団である病院という職場でさえ、そうなのだから···
自律神経の乱れや、ホルモンバランスの崩れが、いかに精神のアンバランスをきたすか、自ら経験するまで、私自身も理解していなかった。
先日テレビで、女性の生理について、男性ももっと理解しようと、ある会社が社内研修会を催した様子をやっていた。
月経期間中の体調の変化を知らない男性は多いのだそうだ。
男性上司に、女性のキモチに添った声かけをする練習をさせたり、長引く会議はナプキンが変えられなくて困るので、トイレ休憩をとるようにしましょうだとか、そんな研修内容が紹介されていた。
21世紀にはいって20年過ぎてもこんな程度なのだと、正直驚いた。
だから、閉経した女性への社会からの心配りなんて、生きているうちには期待できないかもしれないという気がしてきた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます