株価暴落は“米国の陰謀”だ――。そんな臆測が兜町でまことしやかに流れている。
「大発会(4日)から12日まで6日続落した。中国経済の減速や地政学的リスク、円高など
悪材料がテンコ盛り
とはいえ、新年相場ならではのご祝儀もあるし、本来ならとっくに反発しているはずです。ところが、いまだ底値は見えません。何か不自然な力を感じます」(市場関係者)
12日も日経平均は前日比479円安の1万7218円で引けた。昨年末(終値)からの下げ幅は一時1850円(9.7%)に達している。
株式アナリストの黒岩泰は不気味なことを言う。
「日経平均は、昨年9月下旬につけた直近安値1万6901円を下回ると、次のターゲットは
14年10月の“ハロウィーン緩和”以前の水準だった1万5600円
となります。もしそこまで下がったら、株安に歯止めが利かなくなり、
ズルズルと1万4000円程度まで下がる危険性は
十分にあります。なぜなら、今回の暴落の原因は、昨年12月の米利上げだからです。米国は世界株安を覚悟して、利上げに踏み切った。だとしたら、そう簡単に反発しないでしょう」
米利上げで、世界の投資マネーは新興国から米国に逆流を始めた。資金流出の続く新興国は経済悪化が避けられず、株式市場も冷え込む。株安は先進国市場に波及し、世界同時株安が出現という流れだ。
「中国の元安も、米利上げに由来しています。投資マネーは中国市場から米国へと向かっています。
上海株の暴落も、米利上げによる資金流出が原因のひとつでしょう。
原油安も同じ構図です。原油など商品取引市場に群がっていた巨額マネーが、米国債などの金融商品に大移動を始めた。産油国の事情もあるでしょうが、米利上げは無視できない要因です」(市場関係者)
確かに、米利上げは世界経済を揺さぶっているが、“陰謀”とは大袈裟なような気も……。
「米国は利上げにより、基軸通貨である“ドルの強さ”を印象づけたかったのだと思う」(黒岩泰氏)
国内総生産(GDP)で世界2位にのし上がった中国は、アジア投資インフラ銀行(AIIB)を設立し、ユーラシア大陸における「シルクロード経済圏構想」を打ち出した。国際通貨基金(IMF)は、人民元のSDR構成通貨入りを決め、世界の金融市場は「中国元は基軸通貨を狙っている」と平然とささやくようになっている。
「米国は基軸通貨を中国元に譲るわけにはいきません。だから利上げに踏み切り、元安、中国株安を誘発した。中国の国力が弱体化したと判断した
北朝鮮は水爆実験を強行し、地政学的リスクで日本株は大きく下げた。元凶は、思惑たっぷりだった米利上げでしょう」(証券アナリスト)
通貨の覇権争いが世界同時株安の背景にあるとしたら、株安は当分止まらない。