スロバキア、タトラ山脈の麓より

スロバキア人の夫と2人の娘と私の生活
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幼稚園について思うところ

2016-03-15 | 育児
幼稚園の話題ついでにもうひとつ、最近ネルカの幼稚園生活で私たちが辟易としていることがあります。それは毎朝、毎晩、幼稚園におもちゃを持って行きたいとネルカが懇願することです。週の半分くらいはそのせいで泣きながら登園しています。

自分の幼稚園生活の記憶があまりないのですが、日本の幼稚園ておもちゃはありましたか。こちらの幼稚園はおもちゃが各教室豊富に用意されています。おままごと、キッチンはもちろん、美容室のセット(鏡台、ヘアアイロン、ドライヤー、櫛等々)や人形、ベビーカー、車、ブロック、パズルなんでもあります。日本の幼稚園では絵を描いたり、工作をしたり、歌や楽器の演奏をした記憶はあっても、おもちゃで遊んだ記憶がないので、初めてネルカの幼稚園の教室に入ったとき、まずそのおもちゃの多さに驚きました。

そしてもっと驚いたのが、子どもたちが自分のお気に入りのおもちゃを家から持ってきて教室内まで持ち込んでいることでした。でもネルカが毎朝泣きながら幼稚園のアリ組に通い始めた頃はとても助かりました。お気に入りのぬいぐるみを朝持たせ家を出、着替えやかばんと一緒にロッカーに入れてなんとか教室に送り出したものでした。でもマルツェルも私も幼稚園におもちゃを持って行くことは反対で、教室の中に持って行くことは基本的に禁止、幼稚園生活も3年目になった今では持って行くことも極力禁止することにしています。

禁止する理由はふたつ、
①幼稚園におもちゃがあるのに家から持って行く必要はない。(私)
②貧富の差のある子どもたちが幼稚園で持っているおもちゃを比べて不公平に思うことがないように。(マルツェル)

ネルカが持って行きたい理由は
①同じクラスの他の子どもたちはおもちゃや小物、指輪やネックレス、子供用の口紅(色つきリップクリームのようなもの)を持ってきている。
②チョコレートや飴などのお菓子をこっそりポケットに隠し持っていて、先生の目の届かないところで食べている上、ネルカにもお菓子を持ってきて他の子どもたちにあげるように言われるということ。お菓子を持って行くのが良くないことはわかっているのでせめておもちゃを持って行きたい。
③去年のように仲の良い友達がいなく幼稚園が楽しくないのでおもちゃがあれば楽しくなくても行く。

ネルカが泣きながら登園したある朝、マルツェルは先生に言ったそうです、「幼稚園におもちゃを持って行きたいと言って泣いているのです」と。すると先生は今年度は小さいおもちゃだけは許可し、来年度からは完全に禁止しようと思っていた。と言ったそうです。
そしてその日幼稚園から帰ってきたネルカの話によると、先生がおもちゃを持ってきてはいけないとみんなに話したと。
マルツェルと「ようやく先生も動いてくれた。やっとこれで解決したね。」と話したのも束の間、一週間もしない内にまた子供たちがおもちゃを幼稚園に持ってきています。当然ネルカもまた持って行きたいと泣く。

昨晩もまた夜10時まで号泣するネルカと話し合い、結局私たちが折れて今日はおもちゃを持って登園させました。手の平ほどの小さなクマのぬいぐるみを今日は一日肌身離さず持って過ごしたようです。

スロバキア社会は貧富の差が激しいです。窓の外を見れば毎日、日に何度もロマ人が片方の肩には大きな袋や風呂敷包み、もう片方の手には棒を持ち、ゴミのコンテナを物色しにきます。衣類や子供のおもちゃ、木材、家電、使えそうなものは何でも持って帰ります。マルツェルによると彼らは遠くの村からも歩いてくるのだとか。

極端ですが、彼らの子供たちとそしてネルカ、大統領、市長、医者の子供たちが学校では机を並べて座ります。当然着ているもの、持っているおもちゃを比べます。私とマルツェルはおもちゃを持って行くのを禁止するのは当然のこと(学校で働く義母によると学校にも子供たちはおもちゃを持ってくるのだそう)、学校では制服を採用すべきだと思っています。私としては制服を買うことすら負担な家庭もあるだろうから、たとえばブルーのスカートに白いシャツと色を指定する程度でも良いのではと思いますが。子供たちが貧富の差を感じることなく平等に教育を受けられる(勉強に専念できる)環境を整えてあげることが必要なのではと。マルツェルに「保護者会で言ってみてよ」と言うとそう考えているのは自分くらいで白い目で見られるから嫌だと断られてしまいました。

今日ネルカをダンス教室に連れて行ったあと、ママ友(教師)としばらく立ち話をしました。「ネルカが幼稚園に行きたがらなくてね・・・」とおもちゃを持っていきたいということ、お菓子を持ってきている子供もいること等々一通り話すと、「学校では制服にするべきだって昨日の会議で話したところなのよ」と。彼女はきっぱりと言いました。私立の学校では制服が一般化してきているけれど、公立校は私服。でも本当に制服が必要なのは私立校ではなく公立校だと。私立の子供たちは裕福な家庭が多いのでおしゃれやブランドを競ったって構わない、けれども公立校に通う子供たちは皆が皆裕福な家庭の子供たちではない。そういう子たちのために制服で統一してあげるべきだと。
良かった!制服にするべきだと思っているのは私とマルツェルだけではなかったみたいです。

それでもきっとそう考えるのはほんの一部の保護者たちなのでしょうね。だって大半の親たちは子供におもちゃを持たせ、お菓子を持たせ、学校では携帯電話を持たせ、それを授業のときに回収すると学校が言うと、子供の所有物を取り上げるのは違法だと文句をつけるのだそうですから。

ネルカの幼稚園生活を少しでも楽しく実りあるものにしてあげたいと思う一方、その幼稚園を通して垣間見る学校の姿を思うとなんだか色々考えてしまいます。


もうすぐイースター
義父が庭から猫柳を持ってきてくれました。


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