以前、私が設計にかかわっていた診療所の建物の2階テナントに、別の診療所が入ることが決まり、この部分の内装はテナントに入る先生が、医療専門の設計施工の会社でをすることに決めていました。
工事途中に決まったことでもあり、先生に頼まれたので、テナント部分の設計についても、何度か打合せにも参加しました。
そこで、いちばんびっくりしたのは、基本設計が出来上がる頃、まだ設計が完了しておらず、細かい部分について何も打合せしていないにもかかわらず、工事までの契約をしてしまったのです。私たちには何も言わずに。
契約をしたのですから、当然、工事金額も決まりました。
我々の仕事では、基本設計というのは、概ねの方針を決めるもので、その後の実施設計を行わないと、ちゃんとした見積や工事はできないというのが、当たり前の考え方です。
その後打合せで、先生が、ここの家具は引出しを3段にしたいとか、この照明のスイッチは受付と診察室の両方で入り切り出来るようにしたい。などと言うと、
業者は「分かりました、そのようにしましょう。しかしそれは、見積もりに入っていませんので、追加になります」などと、言ってきたりしました。
そこで、私が、何が見積もりに入っていて、何が入っていないのかを尋ねたところ、業者は契約書の工事内訳書を出してきて、「先生とは、この書類を基に契約をしております」と説明をしてきた。中身をみると、機器の項目等が一応書かれている。たぶん、先生もこの書類の説明は受けたと思うが、一般の人が見てすぐ分かるものでは無いので、そのまま、契約してしまったのだと思います。
この工事内訳書というものは、実施設計図を基に、機器の数や、数量、配管・配線の長さを算出(測って)して、数量と金額を記入するものであり、実施設計図という、ちゃんとした図面が無いと、本来、作成できるものではないのです。
その後も、いろいろ問題が浮上し、そのたびに私が調整に入り、何とか完成をしました。
このような事は、他を知らなければ、おかしいなと思いながらも、しょうがない事として、進んでいくと思います。
もしかすると、おかしいなとさえ、思わないかもしれません。
業者もプロですので、あまりトラブルにならないように、上手く話しをまとめるのは、得意でしょうから。