病院設計者のブログ

病院・診療所の新築・建替・リフォームに関する事や、その他色々な事について書いていきます。

耐震診断

2009-06-10 | 病院建築
耐震偽装事件依頼、古い病院や、診療所の先生に、この建物は、構造的には大丈夫ですか。?と聞かれることがある。
その場合は、「建てられたのは、昭和56年より前ですか、それともそれ以降ですか?」と必ず確認する。
なぜかというと、56年より前か後かで、建物の強さは、全く異なるからです。
昭和56年に建築基準法の改正があり、構造の規定が大きく変わったのです。
56年以前の規定では、大規模な地震が起こった場合、建物が倒壊してもおかしくない状態になっているのです。
だからといって、56年以前の建物は全て危険である。というわけではありませんが、阪神淡路大震災の時に、崩壊した建物は、ほとんどが、昭和56年以前の建物だったのです。

我々建築界では、56年以降の建物を新耐震建物と呼び、それ以前の旧耐震建物と区別しているのです。

政府などは、旧耐震で建てられた、公共建物の建物の耐震化を進めています。学校などから始め、公立病院なども、建替えなどを含め、耐震化が進んでいるとおもいます。

しかし、民間の病院などの耐震化は、まだまだ進んでいない状態です。
理由としては、
・耐震診断などの補助金が、少ないもしくは出ない。
・耐震診断をしないと、耐震補強の工事金額が、算出できない。
・お金をかけて、耐震補強をしても、建物が使い易くなるわけでもなく、見栄えが良くなるわけでもない。逆に筋交いなどができて、外観上も悪くなる場合がある。
など、目に見えて良くなる事が少ない。
・現状は問題なく使えている。

などの理由があげられます。

耐震補強には、かなりの工事金額がかかりますので、私も病院から相談されて、
患者さんが入院している施設なのだから、震災の時も倒壊しないように、するべきです。と言うのが理想ですが、
上記のような理由もあり、勧められていないのが、実状です。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

工事内容って

2009-06-09 | 病院建築

以前、私が設計にかかわっていた診療所の建物の2階テナントに、別の診療所が入ることが決まり、この部分の内装はテナントに入る先生が、医療専門の設計施工の会社でをすることに決めていました。
工事途中に決まったことでもあり、先生に頼まれたので、テナント部分の設計についても、何度か打合せにも参加しました。

そこで、いちばんびっくりしたのは、基本設計が出来上がる頃、まだ設計が完了しておらず、細かい部分について何も打合せしていないにもかかわらず、工事までの契約をしてしまったのです。私たちには何も言わずに。
契約をしたのですから、当然、工事金額も決まりました。

我々の仕事では、基本設計というのは、概ねの方針を決めるもので、その後の実施設計を行わないと、ちゃんとした見積や工事はできないというのが、当たり前の考え方です。

その後打合せで、先生が、ここの家具は引出しを3段にしたいとか、この照明のスイッチは受付と診察室の両方で入り切り出来るようにしたい。などと言うと、
業者は「分かりました、そのようにしましょう。しかしそれは、見積もりに入っていませんので、追加になります」などと、言ってきたりしました。

そこで、私が、何が見積もりに入っていて、何が入っていないのかを尋ねたところ、業者は契約書の工事内訳書を出してきて、「先生とは、この書類を基に契約をしております」と説明をしてきた。中身をみると、機器の項目等が一応書かれている。たぶん、先生もこの書類の説明は受けたと思うが、一般の人が見てすぐ分かるものでは無いので、そのまま、契約してしまったのだと思います。

この工事内訳書というものは、実施設計図を基に、機器の数や、数量、配管・配線の長さを算出(測って)して、数量と金額を記入するものであり、実施設計図という、ちゃんとした図面が無いと、本来、作成できるものではないのです。

その後も、いろいろ問題が浮上し、そのたびに私が調整に入り、何とか完成をしました。
このような事は、他を知らなければ、おかしいなと思いながらも、しょうがない事として、進んでいくと思います。
もしかすると、おかしいなとさえ、思わないかもしれません。
業者もプロですので、あまりトラブルにならないように、上手く話しをまとめるのは、得意でしょうから。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

病院・診療所の設計4

2009-06-08 | 病院建築
競争見積


設計を頼む場合、設計だけを頼む場合と、施工まで含む場合とがあります。

ゼネコン・建設会社と住宅メーカーが、設計施工。

設計だけを頼む場合が設計事務所、と前回書きました。

しかし、ここで気をつけなければいけないことがあります。
それは、
会社名は設計事務所と名乗っていても、実は施工まで行う建設会社である場合が多い、ということです。
それは「病院・診療所専門に設計しています」という会社にとても多いのです。(私は医療施設専門ですが、設計専業です)
ネットで、病院 設計で検索してみると、このような設計施工の会社がたくさん出てきます。

ここに頼んだ場合は、工事会社を競争見積で選ぶ事や、工事を第三者の目で見る事は、不可能となります。
設計事務所に頼む大きなメリットのひとつとなる、
競争見積もりをして、工事金額を抑える
ということができなくなりますので、会社の事業内容をしっかり確認することが重要です。

同じ設計図では、競争したって、金額はそんなに変わらないのではと、思われる方がいらっしゃると思いますが、実際に本当に変わってくるのです。

一般的な競争見積もりの場合規模にもよりますが、5~6社で行った場合、一番安い会社と一番高い会社の金額の差は、2割位は違ってきます。
1社特命(競争は行わず、1社だけから見積もりをとって、工事を頼む)の場合
は、競争を行った時の一番高い金額より高いか、同じ位ににはなってしまいます。

競争することによって、会社は、ぎりぎりの利益で仕事をとりにくる。
材料の発注方法、工程管理などを工夫し、工事原価を抑えるようにし、他社より少しでも安い金額を出して、仕事を取る。など各社が、努力をすることによって、金額が下がります。

工事金額が2割も違ったら、一番安いところは手抜き工事をするのではないかと、心配されるかもしれません、そこで、設計事務所が工事段階でも、第三者の目でしっかり監理し、材料や形を勝手に変えたり、手抜き工事をしないようにしていくのです。

しかしながら、どんな会社でも参加させて、競争見積をして、金額が安くなればよい、と考えるのは少々問題です。

設計事務所が、現場でしっかり監理する、といっても、毎日、四六時中現場を見ているわけにはいきません。ですので、安いというだけで、工事を頼むことはいけません。

競争見積に参加してもらう会社の施工実績や経営方針、経営内容などの内容をしっかり、確認し、信頼できると、思える会社に参加してもらうようにすることが、大切です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

病院・診療所の設計3

2009-06-07 | 病院建築
病院・診療所の設計を頼むには。

病院と診療所の違いや、規模や構造によって異なってくるので、私が仕事でかかわる事の多い、産婦人科の診療所の場合で考えていきたいと思います。病床がある場合と無い場合で変わりますが、大きく3通りの方法に分かれると思います。

■住宅メーカー
これは木造の診療所の場合に限られると思います。病棟があったり、規模大きかったり、鉄筋コンクリート造等の木造以外の場合はできない。

■ゼネコン・工務店
これは、設計だけでなく、工事まで行う設計施工という形になる。

■設計事務所
これは、純粋に設計・監理のみと業務としているところで、名前は設計事務所だが、施工まで行うところは設計事務所とは言わず、ゼネコン・工務店の部類に入る。

以上3つ方法のメリット・デメリットや違いについて述べていきたいと思います。

□住宅メーカーの場合
これは、無床診療所の木造に限られるでしょう。ベッドがあったり、鉄筋コンクリートの場合は対応できないと思います。
メリット
・設計から施工まで、同じなので、手続き等が簡単。
・設計から施工まで全てにおいて任せるので、なんとなくの安心感がある。
・設計料がかからないので、安く得した気がする。(あくまでも気がする)
・仕様が決まっており、ある程度のことを打合せすれば、後はおまかせで出来上がる。

デメリット
・仕様が決まっているので、希望することや、細かな要求が仕様に外れている場合はできないことがある。
・設計から施工まで全て任せるので、第三者の目が入らない。
・コマーシャル等、広告宣伝費等がかかり、工事金額が高くなる。
・他社の見積比較が出来ないので、工事金額が高くなる。


設計料がかからないと思っている方もいますが、設計を行う限り、設計に関する費用はかかってきます。

□ゼネコン・工務店の場合
メリット
・設計かた施工まで、同じなので、手続きが簡単。
・設計から施工まで全てにおいて任せるので、なんとなくの安心感がある。
・設計料がかからないので、安く得した気がする。(あくまでも気がする)

デメリット
・設計から施工まで全て任せるので、第三者の目が入らない。
・競争見積が出来ないので、工事金額が高くなる。


□設計事務所の場合

メリット
・設計と施工が分かれているので、見積段階、工事段階でのチェックが第三者の目で、しっかり行える。
・設計図を完全に完成させた後、見積もりを行い、同じ設計内容で数社での競争見積りができるので、工事金額が抑えられる。
・じっくりヒアリングをしながら、設計を進められる。
デメリット
・工事金額を抑えるための競争見積もりをする為、少し時間が余分にかかる。
・宣伝や広告がほとんど出ていないので、頼み方が分かりづらい。

住宅メーカーとゼネコン・工務店とが、ほとんど同じ様な内容になっていますが、ゼネコンもメーカーも設計施工というかたちで同じですので、似ています。
次回はこのことについてもう少し詳しく書いていきたいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

病院・診療所の設計2

2009-06-03 | 病院建築
病院や診療所の新築や建替えをしたいと考えた時まずどうするか。

住宅の場合は、住宅関連の雑誌が、たくさん本屋さんにあるので、それを調べてみたり、住宅展示場行ってみたり、ネットで調べたりと、最初は比較的簡単に情報は入る。
また、知合いや親戚で、家を建てたことのある人は、まわりには結構居るので、その人達の話を聞いたりもできる。

しかし、病院・診療所の場合は、本屋で雑誌を調べてみても、参考になるものはあまり無いし、住宅展示場に行ったところでほとんど参考にならない。
ネットで調べる以外は最初のとっかかりとしては無い。
それに、まわりに病院・診療所を建てたことのある人は、住宅ほど多くないので、情報としては少なくなってくる。

次回は病院・診療所の設計を頼む方法を書いていきたいと思います。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする